2024年7月18日、FCEV(燃料電池車)になって国内復活をはたしたホンダの「CR-V」。国内の自動車メーカー車としては初めてのプラグイン機能をもつFCEVとあって話題性は抜群で、今後が期待されるモデルではあるのだが、「ふつうのガソリンターボやe:HEVが欲しかった」という人もいるはず。日本へ導入される6代目CR-Vには、e:FCEV以外の選択肢は今後も用意されないのだろうか!??
文:吉川賢一/写真:HONDA
「チョイノリは電力、長距離時は水素発電」はひとつの理想形
冒頭でも触れたように、日本の自動車メーカーが発売するモデルとしては初となる外部充電が可能なプラグイン機能を持った燃料電池車である、ホンダ「CR-V e:FCEV」。一充填走行距離は600km以上、バッテリーEV走行可能距離も60km以上が確保されている。同じく燃料電池車であるクラウンセダンFCEVは、高圧水素タンクを3本搭載し、一充填あたりの走行距離は約820km(トヨタ参考値)と、航続距離はクラウンセダンFCEVのほうが有利であるものの、バッテリーの電力で60kmは走ることが可能なCR-V e:FCEV のほうが安心感は高いかもしれない。
チャージに時間のかかるバッテリーEVとは違い、水素の充填時間はわずか2~3分とガソリン車と変わらず、CR-V e:FCEVであればさらに、チョイノリ程度ならEV走行で十分に賄うことができる。自宅充電ができれば、充電待ちのストレスを感じることもなく、このかたちは、今後のクルマのパワートレインにおけるひとつの理想形といえる。ただそれでもやはり、水素ステーションの数は気になるところ。
水素ステーションは現在(2024年7月)、全国で150箇所ほどが運用となっているが、あくまで4大都市圏が中心。3万箇所弱あるガソリンスタンドや、2万箇所を超えたEV充電スタンドと比べると、まだまだ希少だ。
CR-Vの中古車をもっと見る ≫1年ほど遅れてガソリン車とハイブリッド車も国内市場に導入されるのでは??
価格もネックだ。CR-V e:FCEVは税込809万円。「クラリティFUEL CELL」は税込783万円であったので、それよりも高価となる。この新型CR-Vは、米国工場で製造し日本へ送る輸入車であり、国内市場でつくっていればもう少し安くなっただろうが、800万円超はなかなかの高額車。R6年度CEV補助金が、FCEVの場合は上限255万円あるので、実質554万円程度にはなり、外部充電可能なプラグイン機能を有した最新鋭のSUVと考えればリーズナブルなのかもしれないが、決して安くはなく、この値段を出すなら、他のSUVのほうがいい、と考える人は少なくないと思う。
新型CR-Vは、北米仕向けや中国仕向け、タイ仕向けには、2.0L直4直噴ガソリンエンジン+2モーターのハイブリッド車や、1.5L 直4直噴ガソリンVTECターボがある。参考価格だが、北米では、ガソリンターボ車は30,100ドル(≒486万円)、ハイブリッド車は34,350ドル(≒538万円)だ。タイ生産車両であれば、右ハンドルとなる(スポーツ仕様の「RS」グレードまである)ので、これを日本に輸入するというのは、それほど難しくないことだと思われる。
おそらくだが、e:FCEVの販売を推し進めたあと、1年ほど遅れてガソリン車とハイブリッド車も国内市場に導入されるのではないだろうか。CR-Vはアメリカ市場では一番売れしているホンダ車であり、その魅力に惹かれている日本人も多いはず。ホンダは、こうした顧客からの需要にはきちんと応えるはずだ。
せめてe:HEVはあってもよいのでは
新型CR-Vは、ほかのミドルクラスのクロスオーバーSUVと比べると、ガソリン車やハイブリッド車であっても安いとはいえず、むしろ割高ではあるが、そのぶん、内装のクオリティや先進安全装備などは、最新鋭のものが備わっており、価格なりの上級車には間違いない。
国内では、300~400万円程で購入できるヴェゼルやWR-V、ZR-Vといった小型~ミドルサイズのSUVのほうが断然売れているのだが、こうした車も売りながら、よりラグジュアリーで大きなホンダSUVに乗りたい客層へ向けて、せめてe:HEVはあってもよいと思う。新型CR-Vをe:FCEV一本で勝負するのは非常にもったいない。
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