現在のネオクラシックカーブームで人気急上昇中のスバル・アルシオーネ。奇抜なデザインが特徴的なクルマだが、新車当時の評価はどうであったのか、昔の試乗記事をリバイバルし、懐かしい過去を振り返っていく。

この記事はベストカー1985年07月26日号(著者は徳大寺有恒氏)を転載し、再編集したものです

■スーパーウェッジカーの印象…

ベストカー1985年07月26日号、スバル・アルシオーネ試乗記事より

 約二か月前、私はこのアルシオーネのアメリカバージョンをテストしにLAXへ行った。

 そのアメリカ人好みの、アメリカ市場向けの2プラス2クーペが日本でも発売されることになった。そして、日本での名前はアルシオーネ(スバルの六連星の中で最も明るく輝く左から2番目の星がアルシオーネだ)である。

 日本で売られるアルシオーネはすべてターボバージョンで基本3車種。すなわち、FFのターボのマニュアルボックス(FF・VSターボ)、4WDマニュアルボックス(4WD・VRターボ)、そして4WDのオートマチック(4WD・VRターボ)である。むろんボディは一種。

 アメリカ市場がメインであり、国内の販売予定は500台と少数であるので基本的にはアメリカ仕様に準じており、私としてはあのカリフォルニアからネヴァダの広すぎる風景。デスヴァレーの地球離れした風景の中のアルシオーネと日本の風景でみる同車がいかなる変化をみせるか、いや私が変化を感じるかに興味があった。

 全長4450mm、全幅1690mm、ホイールベース2465mm、全高1335mm(FFは1295mmと一段と低い)という相当な大ぶりなボディはもう写真やTVコマーシャルでおなじみのものだと思うけど相当なスーパーウェッジ。

 Cd:0.29(FF車)、CLf:0.10、CLr:0という空力係数を持つ超空力ボディである。

 まるで宇宙映画に出てくるようと表現したらいいのだろうか。その意図はとても純粋で素晴らしいものであったに違いないが、いろいろな条件を加えていくうちにアンバランスを露呈したのであろう。こういうボディは線一本、一面の小さな変化でガラッと変わってしまう。

 このアルシオーネはおそらく 他のクルマに影響を与えることは少なかろうが、それだけに個性的であるには違いなかろう。インテリアもすごい。しかし、このインテリアはドライバーの手足のアクセスの研究が不足しているのが残念だ。

 しかし、メーカーのいうほど”質”は感じないけど楽しいアイデアはあると認めよう。

 ただ、残念なのは、このぐらいやるなら、もっとシートを低くして、いわゆるスポーツカースタイルを強調してほしかった。それをやるにはエンジンフードの上端をもっと低くする必要があるワケで、これが大いに大変なのだが…。

 スティアリングホイールのテレスコープ、それにメーターナセルごと上下するチルトシステムなど面白い仕掛けがあるのだが…。リアシートは実用上プラス2の域を出ていない。

 でもこれはいいと思う。レオーネファミリーとして4ドアセダンを持ち、さらにツーリングワゴンを持っている以上、このアルシオーネが2プラス2であってもおかしくない。こういうクルマはスタイルを買うクルマなのだから…。

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■135馬力でなんと196km/h

谷田部での走行結果の詳細。

 アルシオーネのパワーユニットはフラット4、OHC、ボア×ストローク92×67mmというオーバースクエアエンジンで、総排気量は1781cc。これにターボを与えている。圧縮比は7.7と低い。

 パワーアウトプットは135馬力/5600回転、20.0kgm/2800回転である。トルクの大きいところはやはりターボならではだ

 今回のフルテストではFFのエンジンの方が好調だったらしく、加速、最高速度ともにFFの方が大幅に上だった。

 すなわち4WD5速マニュアルのほうは0~400m17秒43、0~1000mm32秒93、最高速度186.2km/hであるのに対し、FFの方は0~400m17秒35、0~1000mm32秒38、最高速度196.6km/hであった。

 最高速度の差はCdの差(FFが0.29、4WDが0.32に近い。4WDの方がボディ下面の整流ができないのである)が少し効いたといえるが、それでも10km/h差は少し大きすぎる。

 ことによると4WDの方が機械ロスが大きいからかとも考えられるが、少なくとも0~400mぐらいまでは4WDのトラクシ ョンでの優勢が現われよう。このFFと4WDの大きな差はエンジンにもあっただろうが、実力についても軽んじられない。

 ストレートの安定性は4WDの方が理論的にはいいハズなのであるが、ここでもFFの方はけっして悪くなかった。この分野でもCLf:0.10、CLr(前のリフティング係数と後のリフティング係数)0というFFの実力が効いているのであろう。

  特に160km/h級のスピー ドで急なレーンチェンジをやってみると4WDの方が意外に収まりがよくない。スティアリングを直進に戻した時にリアサスペンションがしっかりしていなくて、グラリとひと揺れある。

 FFの方はむしろこれが少ない。私の想像ではFFの後輪のリフトは0で、この数字を信じればリフトしないのだからリアサスペンションがしっかりしている。そして、直進性の安定というものにリアサスペンションの役目はきわめて重要なのである。

 それにしても、FFの196 ・6km/hという最高速度は立派なものだと思う。135馬力という低馬力(最高速度には馬力がものをいうところだ)でありながら200km/hのあと一歩という数字なのだ。私は正直いってどうも好きになれないボディスタイルだが、この点はすごいと素直に認めたい。

 このほかアルシオーネで認めたいのは一本ワイパーの払拭面積の広さ。雨の日の視界はよく、これはメルツェデス124につぐアイディアだ。

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■Cdでアウディを超えた富士重工

Cd値0.29の割にはペキペキとしたシルエット。デザイン的にはレオーネと一脈通じたものを感じるが、全く関係ないそうだ

 アルシオーネは遊びグルマである。だから、このクルマには実用性はあまりない。室内も狭いしトランクルームも決して広くない。でも、それはそれでいいのだ。むしろ、このクルマが富士重工にもたらした効果の大きさを考えると、自動車メーカーというものはいつか、どこかでハイスピードカーを作った方がいいと思わざるを得ない。

 今やこのメーカーは4WDとエアロダイナミックスで、やり方はかなり違うけども、アウディっぽくなったのである。ただ、もし、これがスポーツだとすると、少なからずボディのムダが多く、またサスペンションの熟成もいまひとつ不足していることを指摘しておかなくてはならない。

 国内にあってはいかなるユーザーがこのアルシオーネのどこに惹かれるのかは私にはよくわからない。ただ、このところ少しおさまりつつCd戦争にこのクルマは高い目標となったことだけは確かなようだ。

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■アルバイトスタッフより

 こんにちは。いつもベストカーwebをご愛読いただきありがとうございます。ベストカーでアルバイトスタッフとして働いている者です。

 アルシオーネ、なんといっても最初に目を引くのは奇抜なデザインですね。走る三角定規なんて揶揄されることもあるぐらいなので、ハッキリ好みが分かれそうな車体ですが、自分は結構好きです。

 当時の試乗記事を読んでみるとあまり評価が高くないですね。改善の余地があるクルマだったようです。それにしても”国内にあってはいかなるユーザーがこのアルシオーネのどこに惹かれるのかは私にはよくわからない。”この部分は核心をついていますが、なかなかに辛辣だなと感じました(笑)

 ただ、もともと海外向けで開発していたクルマであり、特にアメリカでは大規模な宣伝の効果もあり販売当時は売れ行き好調だったようです。しかし、アメリカ市場でも様々なことが重なり結局売り上げ不調で終わってしまうという…不運のネオクラカーですね。

 そんなアルシオーネですが、昨今のネオクラシックカーブームの影響で、人気が上昇しつつありますね。ただ、国内の個体数が極めて少ないため、なかなか中古車市場に出ていない印象を受けます。

 好きだけども乗れない(アルシオーネの場合販売台数が少ないというのもありますが)、ネオクラカーもこの領域に差し掛かっていると思うと、今のうち乗れるだけ乗っておくしかないなと改めて気づかされますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

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