バブル期もそろそろ終わりかけた1991年。トヨタがすごいセダンを出した。その名はアリスト。色っぽくてチョー速い、これぞ時代が求めた乗り物だった!
文/ベストカー編集部、写真/トヨタ
■止まっているのに走り出しそうなスピード感
まだまだセダンに力があった1980年代。トヨタはレクサスへの展開をにらんでラグジュアリーサルーンの多角化を考え、クラウンマジェスタのコンポーネントを使った派生モデルを企画した。
クラウンとはまったく異なる個性がほしい。そう考えたトヨタは、そのボディデザインをジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインへ依頼する。
イタルデザインはジャガー向けのデザインコンセプトだった「ケンジントン」をベースにフォルムを再構築し、個性的なスポーツサルーンを作った。これこそが1991年10月に登場した初代トヨタ アリスト(海外名レクサスGS)だ。
筆者(ツノダ)はデビュー当時のことを覚えているが、トヨタから受け取った広報カットを見た瞬間、雷に打たれたような衝撃を受けた。
ボンネット・キャビン・トランクという3ボックス構造はとりつつも、鼻先からテールまでが一筆で描いたような連続感にあふれ、止まっているのに走り出しそうな、肉食獣のようなスピード感が表現されていた。
トヨタはこの前年に初代エスティマを発表していたのだが、個人的にはそれを超える革新だと感じたほどだ。
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■GT-Rに挑むための2JZ-GTEを搭載
アリストは車内に乗り込んでもすごかった。もともとがクラウンマジェスタだから豪華さは文句ないのだが、レザーの洪水のような車内はそれ以上に色気があり、乗る人をクラクラさせる魔力に満ちていた。
それだけであればアリストはステキなおじさまの足だったわけだが、そうはならない。アリストはドライブしても楽しい、あきれた動力性能を持っていたからだ。
アリストのトップグレード「3.0V」が搭載したエンジンは、2年後にデビューする80スープラが搭載することになる3L直6ツインターボの2JZ-GTE。もともとこのエンジンは、R32型GT-RのRB26DETTに挑むためにトヨタが開発したもの。遅いワケがないのだ。
当然、こんなクルマをクルマ好きが放っておくわけがない。アリストは走り好きのセダンオーナーから絶大な支持を受け、ひっぱりだことなった。
当時の高速道路では、追い越し車線をカッ飛んでいくアリストの姿がしょっちゅう目撃された。矢田部で行われたチューニングカーの最高速チャレンジでも、セダン部門はアリストで挑むことが常識だったのだ。
結局、初代アリストは1997年まで生産が続けられ、2代目へとバトンを引き継いだ。その後アリストはレクサスGSに統合されてしまうが、筆者にとってはトヨタのバッジを付けていたアリストこそが愛おしい。こんなクルマに、また出会いたいものだ。
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