2024年1~6月の新車販売台数では、ヴェゼル、ヤリスクロス、カローラクロスというコンパクトSUVに次いで4位にランクインしたトヨタハリアー。価格は312万8000~514万8000円という高額にもかかわらず相変わらずの人気ぶりである。なぜ登場から4年経っても人気が持続しているのか?
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカーWeb編集部、トヨタ
■ミドルクラスのSUVではNO.1
今はSUVの人気が高く、新車として売られる小型/普通乗用車の30%以上を占める。2024年上半期(1~6月)に国内で最も多く販売されたSUVは、ホンダヴェゼルで1か月平均が約7360台であった。2位はトヨタヤリスクロスで約7270台、3位はトヨタカローラクロスで約6670台、そして4位がトヨタハリアーで約5880台だった。
SUV国内販売ランキングの1~3位は、コンパクトサイズのSUVで、売れ筋価格帯も230万~330万円だ。しかしハリアーは、売れ筋価格帯が350~500万円の上級SUVになる。これがZR-VやエクストレイルなどのミドルサイズSUVよりも多く売れている。
ハリアーの売れ行きをほかのカテゴリーと比べると、売れ筋価格帯が300万~400万円のプリウスやノアと同等だ。また500万円レベルの高価格車でハリアー以上に多く売られる車種は、2024年上半期に1か月平均で約6230台を登録したアルファードに限られる。
しかも現行ハリアーの発売は2020年6月だから4年以上も経つモデルである。発売後の1か月平均登録台数を振り返ると、2021年は約6220台、2022年は納期遅延もあって約2850台に下がり、2023年には再び約6270台に戻った。そして2024年上半期は前述の約5880台だから、発売から時間を経過しても売れ行きが下がらず、ほぼ一貫して好調を保っている。
一般的なクルマの販売推移は、注目を集める発売直後が最も多く、次第に下がっていく。ハリアーがそうならずに好調を保つ理由は、目新しさで購入するユーザーだけでなく、堅実な乗り替え需要に支えられているからだ。
従来型ハリアーのユーザーが、車検期間の満了に合わせて必ず乗り替えるから、発売から時間を経過しても売れ行きが大きく下がらない。
そしてハリアーのクルマ造りが乗り替え需要を意識していることも、好調が維持されている大切な理由だ。もともとハリアーの初代と2代目は、レクサスRXの日本仕様だった。その後、2005年に日本でもレクサスが開業して、RXの取り扱いを開始した。
そうなるとハリアーを廃止する方法もあったが、既にトヨペット店の基幹車種になっていたから、ハリアーをRXとは別の車種として存続させることになった。
それが2013年に発売された3代目の先代ハリアーだ。緻密にデザインされたフロントマスクやインパネなど、RXの日本版だった時代のハリアー以上に質感を高めた。
RXとは違って日本向けだから、国内のユーザーから一層の共感を得られ、売れ行きも堅調だった。2014年には1か月平均で約5410台が登録され、その後も4000台前後を保っていた。
4代目の現行型は、先代型の路線を踏襲しながら、ハリアーの特徴とされる上質感を一層強めた。内装には合成皮革を多く使うが、本革並みの仕上がりだ。
そのために先代型のユーザーが確実に乗り替えて、SUVの高人気を受けて新たなユーザーも獲得している。そのために先に述べた通り、2021年と2023年には1か月平均登録台数が6000台を上まわり、2024年上半期も約5880台で推移している。
■ハリアーの人気の秘密は?
ハリアーの一番の魅力は内外装の上質感だが、幅広いグレード構成も人気の秘訣だ。パワーユニットは、直列4気筒2Lノーマルガソリンエンジン、2.5Lハイブリッド、2.5Lプラグインハイブリッドを用意する。最も販売比率が高いのはハイブリッドだが、ノーマルガソリンエンジンもハリアー全体の35%前後を占める。
ノーマルガソリンエンジンであれば、価格が求めやすく、中級グレードのG・2WDが352万9000円だ。ハイブリッドG・2WDの411万9000円に比べて59万円安い。そしてコンパクトSUVのカローラクロスハイブリッドZ・2WDの325万円にも近い設定となる。
つまり「カローラクロスの最上級ハイブリッドか、ハリアーの中級に位置するノーマルガソリンエンジンか」という選択が成り立つ。ハリアーは上質なSUVで、従来型のアルファードやクラウンからの乗り替えがある一方、予算にシビアなカローラクロスのユーザーも購入の候補に含めている。
そしてハリアーの人気を高める上では、2020年に実施されたトヨタディーラーの全店/全車販売体制への移行も大切な役割を果たした。それまでのハリアーは、トヨペット店の専売車種だったが、現行ハリアーの発売とほぼ同時に全店が全車を扱うようになり、ハリアーもすべての店舗で購入可能になった。
その結果、トヨタ店では、クラウンからハリアーへの乗り替えが発生した。カローラ店やネッツ店では、RAV4のユーザーがハリアーを購入するパターンも生じている。さらに先に述べた「カローラクロスのハイブリッドか、それともハリアーのノーマルガソリンエンジンか」という選択も可能になった。
全店が全車を扱う販売体制に移行すると、ハリアーのような人気車はすべての店舗で売れ行きを増やし、そうでない車種はユーザーを奪われる。同一メーカーにおいて、車種間の競争と販売格差が拡大するのだ。
日産、ホンダ、マツダなども以前は系列を設けていたが、それを撤廃して全店が全車を扱う体制に移った結果、販売格差が広がって車種の数を減らしている。この車種のリストラは、全店が全車を扱う目的にも含まれている。
■販売店ではどう分析している?
ハリアーはなぜ息の長い人気を得ているのかを販売店にも聞いてみた。
「ハリアーは先代型も含めてリセールバリューが高い。高値で下取りできるため、お客様に新型への乗り替えを提案しやすい。またハリアーは内外装の質感が高いだけでなく、実用性も優れている。後席と荷室が広く、4名で乗車してゴルフバッグも積みやすい。そのために子育てを終えて、ヴォクシーやアルファードなどのミニバンから、ハリアーに乗り替えるお客様も多い」。
ハリアーのリセールバリューの高さは、残価設定ローンの残価率(新車価格に占める残価の割合)からも分かる。一般的な残価率は3年後で45%、5年後は25%前後だが、ハリアーは3年後なら59%で、5年後でも43%だ。中古車として高値で売却できるから、残価率も高い。
そして残価設定ローンでは、残価を除いた金額を分割返済するから、残価率の高いハリアーでは月々の返済額を抑えられる。今はローンを利用するユーザーの大半が残価設定型を選ぶため、残価率の高さもハリアーの販売を促進させている。
このようにハリアーは、様々な理由に基づいて販売されている。特に価格の求めやすいノーマルガソリンエンジンの設定、2~3か月に収まる現実的な納期などは、同じトヨタのランドクルーザーシリーズやクラウンクロスオーバー&スポーツでは得られない購入のしやすさに繋がっている。
さて、現在の納期はどうなのだろうか? 2020年6月に発売され、早くも納期はハイブリッドモデルが半年~1年以上で、2022年10月の一部改良モデルの発売時点では、上級グレードのZ、Zレザーパッケージの受注停止状態が続いていたが、2023年6月24日からこのZ、Zレザーパッケージの受注が再開するなど、混乱していたことも記憶に新しい。
でも現在は、2024年8月中旬時点で注文すると、納期は全グレード、2024年11月中旬~下旬となっている。生産体制も整い、それほど待たされていない状況なので、狙い目といえるのではないだろうか。
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