冷凍車の東プレと「曲がる太陽電池」のPXPのコラボによる「低温物流GX技術」が神奈川県の研究開発プロジェクトに採択された。
代替えサイクルが短く、事業者が燃費改善のメリットを享受できるトラック・冷凍車の屋根は、住宅の屋根以上にソーラーパネルの設置に適した場所となるかもしれない。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
図/東プレ株式会社
東プレとPXPがコラボした「冷凍車+曲がる太陽電池」
低温物流・空調・電子機器の東プレと、軽くて曲がる割れないソーラーパネルを開発している次世代太陽電池のスタートアップ企業・PXPとのコラボによる「低温物流GX技術」が神奈川県の令和6年度事業「2050年脱炭素社会の実現」に資する研究開発プロジェクトに採択された。
プロジェクトでは、超軽量・薄型・高耐久でどこにでも貼り付け可能な次世代の「曲がる太陽電池システム」をPXPが開発し、断熱性能の高い省エネ型低温物流システムの開発・実証実験を東プレが担う。
低温・定温物流のニーズが高まるいっぽうで、脱炭素化が急務となっている物流業界では、幅広い貨物車に簡単に搭載できる次世代型の低温物流のGX技術(GX=グリーントランスフォーメーション)が求められている。
小型の可搬式低温物流システムや、据え付け型の一般的な低温物流システムへの適用が可能なこの技術は、国内の5%程度に適用されただけでも、数十メガワット(MW)を超える太陽電池の導入となり、年間数万トン以上の温室効果ガス削減が見込まれる。
また、非低温の物流においても燃費改善効果が期待できるため、冷凍車以外のトラックを含め広く物流業界全体に波及する可能性を秘めている。
トラック・冷凍車の「屋根」は太陽電池のフロンティア?
PXPの試算によると、日本の小型低温物流車(いわゆる「冷凍車」)の5%に「低温物流GX技術」を導入し、3平方メートルの太陽電池パネルを搭載した場合、全国で2MW分の太陽電池の導入となり、CO2排出量を年間3000トン削減可能だという。
太陽電池を12平方メートル搭載可能な(大型の)冷凍車に導入した場合、それぞれ30MW・2万5000トンだ。さらに、冷凍車ほど電力を必要としないものの、非低温の物流用トラックは台数が多く、その5%に3平方メートルの太陽電池を搭載すれば420MW・38万トンに達する。
仮に日本だけでなく世界の冷凍車・トラックの5%に導入された場合、ガソリン・軽油の削減によるCO2削減量は、それぞれ年間で6.6万トン、68万トン、2200万トンに及ぶそうだ。
最近、新築住宅の屋根にソーラーパネルの設置を義務付ける条例などが広がっているが、トラックの「屋根」はほとんど手付かずの領域となっている。商用車は住宅よりはるかに短いサイクルで「代替え」を行なうため、電動化等のタイミングと合えば、急速にGX技術の普及が進むかもしれない。
もちろん、燃費改善などを通じて事業者に利益をもたらす技術であることも重要だ。
PXPの最高技術責任者・杉本広紀氏によると、軽油やガソリンを燃やして車載の発電機により電力を得るという、低温物流の「エネルギー効率の悪い部分」を直接クリーンエネルギーに置き換えるため、「社会実装された場合のインパクトは非常に大きい」という。
また、低温物流以外でも燃料削減効果が大きく、導入コストを早期に回収できることから、環境性と経済性を両立可能な技術になると期待しているそうだ。
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