2024年4月、3代目レクサスGXの姉妹車であるランドクルーザー250が発売された。「多くの人々の生活と実用を支えるクルマ」という理念のもと作られたクルマであるが、実際は性能はどうなのか。この記事では特に街乗りでの利便性に着目して、ランドクルーザー250の魅力に迫っていく。

文:渡辺敏史/写真:森山良雄

■豊富なタイヤの選択肢に文句なしの内装!! 完璧すぎるぜ

期待通りの積載性にプラスして、インテリアが充実した設計

 この4月、名門の名に恥じない強力な悪路走破性をオフロードコースで確認したランクル250。但し、多くのユーザーにとって気になるのは、日常の生活で使ってみてどうなのかというところだと思う。ようやく巡ってきた公道試乗の機会、その辺りをじっくり確認してみた。

 試乗車のグレードは最上位のZX。2.8L 4気筒ディーゼルに8速ATの組み合わせとなる。タイヤは標準設定が20インチのオールテレインだが、オプションで中間グレードのVXが履く18インチに径を落とすことも可能だ(その場合、13万7500円安くなる)。

 オフロード用を含めたタイヤの選択肢は18インチの方が豊富ゆえ、この辺りはランクルらしい気の利いた設定といえるだろう。

 250の3サイズは4925×1980×1935mm。黄金比のホイールベース2850mmも含めて、実質的には兄貴分の300系と等しいくらいの車格だ。狭い駐車場の枠に収めるのはさすがにスイスイとはいかないし、車線に留めるのもちょっと気遣うところはある。

 それを補えるのはボンネットやウエストラインの形状からくる物理的な見切りの良さだが、ファミリーカー的な使い方を想定するなら、奥さんにはサイズの合意を得た方がいいだろう。

 これだけ大きければ…というわけで、キャビンスペースは余裕綽々。250はベースグレードのGXを除くと3列シート・7人乗りとなるが、その3列目に180cm超えのオッさんたちが腰掛けてみても、頭周りは苦も無く収まるほどだ。

 足回りは床板の高さの関係で体育座り状態になってしまうものの、2列目との席間には余裕もあった。そもそも長居するような場所ではないとはいえ、USB-C端子も用意されるなど、小柄なパッセンジャーにとっては望外に座れる場所になっている。

■悪路はもちろん渋滞もお任せあれ!! 

渋滞が苦にならないのは、運転者からして大きなメリットになると言えよう

 1GD-FTV型ディーゼルユニットは先代にあたる150系プラドから継承しており、アウトプットは204ps/500Nmと同じ。最大トルクの発生回転域も1600rpmからと変わりはない。但し、250はタービンを小径化、インペラ形状の最適化などで過給応答性を高めているという。

 車外ではディーゼルらしいガラガラ音を響かせるため、早朝の外出などは気遣うところもあるかもしれないが、車内は至って静かで、そのエンジン音は加速時にちょっと気になるかという程度だ。もっとも、300系に搭載されるV6ディーゼルのF33A-FTV型と比べれば、音や回転フィール的にザラ味が多いのは仕方がない。

 走り始めるとタウンスピードでも気づくのは、8速化によってワイドレシオ化したミッションのマネジメントが、意外と高い回転域でギアを繋いでいく躾けだということだ。具体的には1500rpm付近がそのポイントとなっており、それ以下の回転域に落ちるようなシフトアップは控えられているように窺える。

 燃費を狙うならなるべく上のギアを使いたいと思う反面、加速やエンジンブレーキの応答性というドライバビリティの面ではこちらの方が都合がよかったりもする。ちなみにこのギア比の関係で100km/h巡航時は8速には入らず7速で約1800rpmとなる。

 8速の本格的な出番は法定速度120km/hのゾーンとなるが、この域では空気抵抗や走行抵抗も大きくなるため、恐らく経済的な巡航速度は100km/h前後までということになるだろう。と、今回試すことのできた100km/h界隈までの話にはなるが、オンロードでのドライブフィールは至ってクリーンなものだった。

 轍や目地段差、路肩段差に橋脚ジョイントやマンホールや…と、日常出くわすあらかたの入力を積極的に踏んでいったが、リアリジットサスの癖による横揺すりは時折りちょろりと顔を出す程度で、モノコック系SUVとの乗り心地の差異は限りなく小さい。それでいてボディ・オン・フレームならではのがっちりとした頼り甲斐は充分に伝わってくる。

 骨格的にも共通項の多い300系との最大の違いはコーナリングの応答性に感じられた。絶対的なマスの違いもあれど、250は首都高や高速道路ででくわす中高速域のコーナーでは、操舵と旋回の体感的ズレは明らかに300系よりも小さい。

 骨格そのものというよりも、車重の軽さに加えてマウント系のチューニングも奏功しているのだろう、そういうフィーリングだ。ここはさすがにモノコック系SUV同然とはいわないが、限りなくそれらと近いフィーリングでドライブすることが出来る。

 また、ADASの追従性という点においてもこれ以上は自分で当て舵しないとかえって怖いというほど曲率のきつい首都高のコーナーでさえ、ぐいぐいとLKAを効かせて曲がっていってくれた。

 ACCについてもZXに関しては全車速追従に加えて渋滞時支援が充実したアドバンストドライブが標準装備となるため、行き帰りが憂鬱な週末のドライブでも心強いお供となる。

 電動パワステの恩恵あらかたとしいう感もあるが、実際、取材時もお盆直前の酷い渋滞に遭遇しながら、その楽ちんぶりにいい意味で嘆息したほどだ。ここは300系もそう遠くない年次改良で同等以上の更新があると思うが、装備的には250の現状もまったく不満のないレベルに達してはいる。

■懸念点はサイズだが…それ以外はグッド!! 

きっとこのサイズが必要になってくることもあるだろう。そう考えるとあまりデメリットではないのかもしれない

 オフロード試乗の経験も含めて鳥瞰的にみると、250の印象は「300いらず」ということになるのかもしれない。フラッグシップとしての絶対領域はオフロードでの乗り心地や走破性においてもしっかり感じられるが、オンロードを含めた日常性を加味し始めると、その差はぎゅっと縮むことになる。

 想定されるあらゆる状況を清々しいまでにカバーしてくれる最高の道具。サイズを除けば250はそんな存在だと思う。3列シートや快適装備の必要がない個人的には、いよいよベースモデルのGXがマイカー的な候補として考えられる存在になってきた。

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