世界的に停滞状態にあるといわれているBEVの販売。自動車大国アメリカの新興EVメーカーでは経営破綻する会社もあるいっぽうで、ポストテスラと目される米リヴィアン社が、VWとの提携を発表した!?こうした動きが起こったからには、北米のEV市場の動向が気になってくる。さぁ、北米のEV市場はどう動く!?

※本稿は2024年7月のものです
文:角田伸幸/写真:VW、リヴィアン ほか
初出:『ベストカー』2024年8月26日号

■北米EVメーカーの新興企業に強い味方が

VWのオリバー・ブルーメCEO(左)とリヴィアン創業者でありCEOのRJスカリンジ氏

 世界各地でBEVの「足踏み」が鮮明となっているが、これが北米の新興企業に思わぬ代謝を起こした。

 一時は日産からの支援が噂されたフィスカーが破綻するいっぽう、ポストテスラと目されていたリヴィアンが、VWとの提携を発表したのだ。VWの支援は、最大で50億ドル(約8000億円)にのぼるという。

 日本ではほぼ無名の企業だが、リヴィアンは2024年1月~3月のアメリカのEV販売台数でテスラ、フォードに次ぐ第3位。

 とはいえその台数はわずか1万3500台余りと寂しく、経営的には長年赤字が続いてきた。ちなみに同社のイリノイ工場は、我らが三菱自動車から譲り受けたものだ。

 EV新興が厳しいのは、アメリカの法律にも原因がある。同国のインフレ抑制法はEVの補助金支給にあたり、バッテリー生産や車体組み立てなどがアメリカで行われることを求めており、これがEVのコスト上昇を招いた。

 ところが新興勢は量産などによってこのコストを吸収しづらく、経営悪化を招いたのだ。いっぽうのVWだが、リヴィアンとともにソフトウェア開発企業を設立するという。

 実はリヴィアンは、自動運転やエネルギーマネジメントの領域でも優れた技術を持っているため、VWは近年注目されているSDV(ソフトウェア定義型車両)の開発で、リヴィアンと協力するのだろう。

 さらにリヴィアンは、VWと仲がいいフォードとも提携関係にあったため、VWとしてはバックアップしやすいと判断したかもしれない。

 リヴィアンは現在、R1T/R1Sという大型モデルを販売しているが、すでにR2、R3という小型モデルを発表済み。VWの支援によってこれらの生産が勢いづくことを期待しよう。

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