夏場に多いのがタイヤバーストです。
バーストはパンクと違い、大音量とともに一気に内圧が抜けるため、凄まじい風圧を発生します。
そんな恐ろしいタイヤのバーストのメカニズムと前兆の察知の仕方を、ベテランのタイヤサービスヤマン・ハマダユキオさんに聞きました。
文/ハマダユキオ、写真/ハマダユキオ・トラックマガジン「フルロード」編集部
夏にタイヤのバーストが多い理由は?
暑いです。子供の頃はあまり気にしなかった暑さ。
加齢に伴う体力、耐性の低下なのかと思えば実際の平均気温は約40年前の7月で見ると約23℃、そして去年の7月は約5℃高い約28℃。
確かに上がっています。疲れは歳のせいばかりではなさそうですよね。(笑)
クルマの性能が進化すると同時にタイヤも性能は進化し続けています。そんなタイヤもバーストはします。
各メーカーさんは研究を重ね各部材を開発。トライ・アンド・エラーを繰り返し現在の強靭なタイヤがクルマを支えております。
そんな強靭なタイヤもこの暑さの下では、一年を通して最もこの時期にバーストが多発しております。
ではなぜ夏に多いのか?
バーストは夏だけ起こるものではございません。冬でも起こります。
夏に多いっていうのはやはり『熱』が影響しているようですね。2021年のJAFの乗用車のデータですが、統計をみてみましてもタイヤに関する出動の比率は8月、21.4%、12月は16.5%でこの8月は12月に比べ多いですよね。
バーストに至る事象はさまざまですが、このことから暑い時期に多いというのは熱の影響が大きいと考えます。
バーストとパンクの違い
バーストはパンクとは違います。
パンクは充填されているエアが徐々に抜けるイメージで、ハンドリングの違和感が出たりタイヤのたわみ、車高が左右で違う等、少しずつ症状が出てくるため、ある程度エアが入っていれば、安全な場所でのスペア交換やロードサービスでの修理、交換。あるいは近くにタイヤ屋があればそこでの応急処置や交換が可能です。
ところがバーストは一気に大音量とともに内圧が抜けるため強烈な風圧も加わります。
ただ前兆、予兆が無いワケではありません。あることはあるのですが「あ、おかしいな」と気づくのはむずかしい場合が多く、急に破裂したという印象が強いかもしれません。
それではその予兆を含めてバーストの原因となりうる事象を紹介いたしましょう。
バーストの原因
ゴムは熱に弱いのですが、夏の真昼の路面温度は60℃くらいになることもあります。
路面からの熱、加えてタイヤの屈曲運動による発熱で更にタイヤ温度は高くなり、ゴムへのダメージは強くなります。合成ゴムの分子は熱により運動が活発化し、 やがて分子全体が振動するようになります。
この状態に酸素が加わると、さらに動きが激しくなって分子の繋がりが断裂し、硬化劣化へ と進行するんですね。
硬化したゴムは、弾性を失うことでクラック (き裂)などが発生しやすくなります。き裂が細かく浅い場合はさほど問題はないのですが、このき裂が深くなるとタイヤの内部にあるスチールワイヤーに空気や水が触れるようになります。
スチール製のワイヤーは錆びていき、本来の強度より低下するのですね。通常なら問題のないテンションでも、弱ったスチールワイヤーは「老化」していますので破断しやすくなります。
バランスよくワイヤーが内圧や荷重を担っていましたが、人手不足の現場の如く負担はその周りのワイヤーへと掛かります。そこからは連鎖的に個々のワイヤーの負担が増え、ついにはプレッシャーに負け、破綻してしまいます。バーストですね。
充填空気圧とバーストの関係
充填空気圧がほぼゼロならバーストはしません。規定内圧でのバーストはもちろんですが、何らかの事象で内圧が下がった状態でもバーストはします。威力が違うだけです。
内圧が低いバーストはそんなに威力ないんじゃ? って思いますよね? トンデモナイ。
我々タイヤ屋の現場でも年に何回かはバーストまたはバースト未遂の事態に遭遇します。
ダメージ少なめ判断でパンク修理したらセーフティケージの中でエア充填中にバーストしたとか、現場に新人が入るとバーストするようなタイヤや廃タイヤに細工をしてバースト体験してもらいますが、ほとんど規定圧に達する前に大音量と凄まじい風圧でバーストします。
バーストした時の内圧表示は大抵300〜600キロパスカル(規定圧850〜950キロパスカル)。300キロパスカルでもまともに人間が喰らえば大怪我で済めば運が良い方だと思います。
バーストの前兆を察知するには?
ワイヤーが弱る事象として摩耗過多もあげられます。トレッドゴムが完全に摩滅、ベースゴムもすり減ったタイヤはワイヤーが露出します。
当然露出した部分は路面との接触で損傷していますから内圧を抑えることができなくなり、破滅へと向かいます。
そこでバーストの前兆は察知できないのか? ということですが、これは運行前点検を含めタイヤをよく観察するのが一番だと考えます。
タイヤのサイド部分で一部分が膨らんでいるはもちろんですが、トレッドパターンが歪んで見える等はタイヤの変形が考えられるので、遅かれ早かれバーストは必至です。
また、長年使用してなかったスペアを使用した場合や少し古めのタイヤはひび割れが発生している可能性が高く、酷いモノはひび割れた間から内部のワイヤーが見える場合があります。
目視点検やひび割れている部分がめくれるくらいの傷がある場合は使用を控えた方がよろしいかと思います。疑問に思ったらタイヤ屋に見てもらいましょう。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。