2023年5月26日、3代目となる新型レクサスISが日本で正式発表された。ターンパイクを占有してのプロトタイプ試乗の様子をプレイバック! その魅力&真価を徹底解剖!!!(本稿は「ベストカー」2013年6月26日号に掲載した記事の再録版となります)

文:松田秀士、編集部/撮影:平野 学

■ボディサイズ

ISは白、シルバー、ブルー、レッド系などとともに黒のボディカラーが設定されているが、担当はこの黒が一番精悍でカッコよく見えた!

 新型ISは全長4665×全幅1810×全高1430mmで、これは旧型に比べて全長で80mm、全幅で15mm大型化されているが、充分許容の範囲。

 ホイールベースは70mm伸ばされて、ほとんどが室内スペースの拡張に充てられている。

■グレード

 旧型から踏襲するIS250/350に加えて、2.5L、直4+モーターのハイブリッド、IS300hを新設定。

 そして3タイプのモデルに対して、標準、バージョンL、Fスポーツの3グレードが設定されるので9タイプ、さらにIS250にのみAWDが設定されるので合計12タイプを設定。ユーザーのチョイスの幅が広がっているのは○。

 装備を抑えて買い得感を演出する標準、ラグジュアリー性を重視したバージョンL、文字どおりスポーツできるFスポーツと明確にキャラ分けされている。

※カッコ内は4WDでそのほかはFR

■エンジン

IS300hはGSに搭載している3.5L、V6+モーターではなく、クラウンに搭載されてデビューした2.5L、直4+モーターでシステム最高出力は220ps

 2.5L、V6(215ps/26.5kgm)、3.5L、V6(318ps/38.7kgm)、2.5L、直4(178ps/22.5kgm)+モーター(143ps/30.6kgm)の3種類をラインアップ。

 圧巻はハイブリッドで、JC08モード燃費は23.2km/Lとクラスで圧倒的な低燃費を誇り、CO2排出量は100g/kmを達成するなど◎。

 しかし、いくらハイブリッドを用意しているといってもV6搭載モデルにはアイドリングストップすら装着されず、エコカー減税の蚊帳の外というのは心情的に×。

※カッコ内は4WD

■トランスミッション

 3種類のエンジンに別々のトランスミッションが組み合わされる。IS250には6速AT、IS300hには電気式無段変速機で、IS350は完全ロックアップのIS Fで定評のある8速SPDSを採用。

■デザイン

 フロントマスクは標準、バージョンLは横桟グリルを採用するが、Fスポーツは差別化するためにメッシュタイプのグリルが装着される。ノーズと一体化した3次曲面の造形は見事(←でもブツけると高そう……)。

上のメッシュグリルがFスポーツに対し、標準、バージョンLは横桟グリルとなる。これでも充分にスポーティ!

■インテリア

 前述のとおり、ホイールベースの延長により室内、特にリアシートの居住性がアップ(旧型比で後席膝前空間は85mm拡大)。スポーツシックなデザインのインテリアは視覚的に適度なタイト感があり、スポーツムードを高めている。ホールド性に優れたシートも◎。

 FスポーツのメーターはLFA譲りの可動式メーター(左右に動く!)を採用し、300hの場合、スポーツモードに切り替えるとタコメーターが出現するなど凝っている。

レクサスのインテリアは上質だと定評があるが、新型ISはスポーティさもアピール

■価格

 価格は最も安いIS250の標準が420万円、トップモデルのIS350Fスポーツで595万円、新設定のIS300hは480万~538万円の設定。旧型が398万~538万円という価格設定だったことを考えると、装備の充実ぶりを差し引いても若干の値上げ。

■販売動向

 ベストカーの独自調査で新型ISはゴールデンウィーク明けの段階で事前予約が殺到していて、特にハイブリッドの300hの人気は凄まじく、「すでに半年近い納車待ち」という状態になっているもよう。作ってもブツが追いつかず納期が大幅に遅れたクラウンハイブリッドと同じ状況になる可能性は大きい。事前の受注の70%をハイブリッドが占めているという情報もある。

 いまだにハイブリッドの注目度の高さに驚かされるが、当面はハイブリッド比率がかなり高いまま推移すると予想できる。だからすぐに乗りたいなら早めに手を打つ必要あり! 

■新型ISの進化のポイント

・ハイブリッドの設定……旧型ISにはハイブリッドが設定されていなかったためシリーズ初。クラウンでデビューした2.5L+モーターのTHSIIによりクラストップの23.2km/L(JC08モード)。

・走りの官能性の追求……スポット溶接増しによるボディ剛性アップ、IS350には8速SPDSを採用、Fスポーツには専用チューニングサスの採用、IS350Fスポーツにはレクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム(LDh)を採用などなど。

・先進安全技術を駆使……詳細は後述。

・洗練されたデザイン……軽快かつダイナミックなフォルムを実現。

■新型ISの走りを検証

IS300hのFスポーツはバランスよし!

 箱根ターンバイクを占有してのプロトタイプ試乗。

 この日、ターンパイクはニュルブルクリンクのオールドコースと化していたね。大きな声では言えませんがボクも新型SIを試乗して限界まで攻めました。

 まず質感。もうこれは月とスッポンぐらい上質になった。なんといっても新型GSやクラウンとの共有化による恩恵は大きい。ロードノイズや乗り心地の進化、現行モデルは特に高速域ではオーディオのボリュームを2倍以上にしなくてはならなかったけれども、新型は4気筒モデルのBMW3シリーズより静かになった? という感じ。

 ただし、ハンドリングは操舵初期にノーズがスッキリと曲がる方向に動く感じがまだBMWなどの欧州勢のレベルではない。

 どこかにステアリングやサスペンションの渋さが残っている。

IS350FスポーツのLDH装着車の走りはすばらしい仕上げだが、楽しさではBMWか

 ハイブリッドのIS300hが受注の大多数を占めているというが、これを喜んでいるとISはどんどんつまらないモデルになっていく。ライバルのBMWアクティブハイブリッド3はISとは比べモノにならないくらいにホットなモデルに仕上がっているんだ。しかも超高い! でもね、夢があるんです。IS300hにあるのはガソリン代と減税の夢?

 レクサスはそういうユーザーをメインターゲットにしていてはいけない。そういうユーザーはクラウンに任せればいいんだ。

 夢はお金で買える。それがプレミアムブランドの定義ではないか。まぁそんなことはさておいてIS300hのFスポーツのハンドリングのバランスは悪くない。クラウンHVに比べてブレーキのタッチが進化していて箱根ターンパイクのスポーツ走行でもコントロールしやすい。燃費系HVモデルをスポーティに走らせるとこのブレーキタッチにいつも不満を持つものだがコイツは及第点以上だった。

 さて、V6モデルのIS250とIS350。エンジン音もスポーティでレスポンスもいい。BMWのようにターボエンジンがあってもいい。それはIS350のFスポーツに装備されるLDH。GSと同じくコイツのコーナリング性能には舌を巻く。よくここまで煮詰めたものだと感心する。

 ただ、あまりにバランスがリア寄りになってしまいアジリティがスポイルされていることも事実だ。このバランスならエンジンをもっとハイパワーにしてもよく、だからターボと考えてしまう。

 新型ISはリアセクションをGSから、フロントセクションをクラウンからというように共用しているのだが、LDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)装備のFスポーツに関してはフロントが負けているように感じる。

 その点バージョンLのしなやかな身のこなしにボクは座布団を3枚!

 サスベンションの動きがスムーズでハンドリングに肩の力が抜けていくのを感じた。この心が叫ぶ気持ちよさがFスポーツにも欲しい。肩肘張って汗するスポーツはIS Fであって、Fスポーツには“楽しい”、“嬉しい”がもっと盛り込まれてもいいと思うのだ。少なくともバージョンLにはしいがたくさん詰まっていた。

 高いコーナリング性能、質感の向上。ISは大きく進化。それだけに、欧州モデルを蹴散らすような野望を持ってほしい。

(TEXT/松田秀士)

■新型ISの安全装備を検証

 レクサスが新型ISの進化のポイントとしてアピールしている安全装備とは?

●衝突被害軽滅ブレーキ

プリクラッシュセーフティシステム(ミリ波レーダー方式)。衝突の可能性があるとクルマが検知した時、ドライバーがブレーキを踏んだ場合は最大約60km/h、ドライバーがブレーキを踏まなかった場合は最大約30km/h自動減速

 続々と商品化され、ユーザーからの注目度も激高の自動ブレーキで、現在はゼロ停止するものが主流になっているなか、ISの全モデルにオプション設定されるのは、ミリ波レーダー式のプリクラッシュセーフティシステムである一定の条件下でゼ口停止する可能性がある。

 しかし、先行車や障害物をミリ波レーダーで検出して、衝突の可能性が高いと判断した場合、警報やブレーキ制御により衝突回避を支援。

 警報後にドライバーがブレーキを踏んだ場合は、プリクラッシュブレーキアシストが強力に作動して減速(最大約60km/h)。先行車が20km/h、自車が80km/hの場合なら60km/h程度減速するわけだ。

 それに対しドライバーがブレーキを踏まなかった場合でもプリクラッシュブレーキが作動(最大30km/h程度減速)するので、衝突回避したり、衝突した場合でも被害を軽減。

 これにブレーキ制御付きのレーダークルーズコントロールがセットで6万3000円で全モデルにオプション設定される。

●ブラインドスポットモニター(BSM)

ブラインドスポットモニター(BSM)

 ドアミラーでは確認しにくい後側方の死角に存在する車両を検知してドアミラーのインジケーターが点灯、点滅してドライバーに注意を促す装備。バージョンLは5万2500円、Fスポーツは本革シートとセットで32万5000円。

●そのほか

 白線、横線をカメラで認識し、方向指示器を出していない状態の場合、ブザーとディスプレーでドライバーに警告するレーンディパーチャーアラート(LDA)とロー/ハイビームを自動で切り替えて前方視界を常に最適に確保できるオートマチックハイビーム(AHB)は、バージョンL、Fスポーツとも5万2500円。

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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