クルマに付けられたあだ名やニックネームは、今でこそ、R35GT-Rの「ゴジラ」が有名だが、それ以外はほとんど見かけない。そこで、50代以上のおじさんが記憶に残る、クルマのあだ名、ニックネームを紹介していこう。

文:ベストカーWeb編集部/ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部、トヨタ、日産、ホンダ、いすゞ

■柿の種(初代日産ブルーバードP310型:1959年8月~1961年8月)

初代ブルーバードの初期型はその形状から柿の種と名付けられた

 車名のブルーバードは、当時日産自動車社長だった川又克二が命名したもので、メーテルリンクの童話「青い鳥」にちなんだもの。当初はスノーバードだったが変更し、ブルーバードの商標も東京の自転車屋が登録していたが譲り受けたという逸話もある。

 小型で縦長のテールランプの形状が「柿の種」を思わせるものだったことに由来したものだが、1959年8月から1961年8月まで生産された初期生産モデルがそれにあたる。それ以降のモデルは312型となり、1962年9月のマイナーチェンジでもフロントグリルやテールランプの意匠も変更されている。

 現在、中古車市場には2台ほど在庫しており(奇跡的!)、150万~180万円。

初期型P310型ブルーバード

■水中眼鏡(ホンダZ:1970年10月~1974年6月)

リアウインドウの黒い樹脂製の枠が水中眼鏡に似ている

 N360をベースにした2ドアクーペのスペシャリティカーとして 1970年10月に登場。水中眼鏡とは、リアウインドウ周りに付けられた黒くて太い樹脂製の枠が、水中眼鏡(ゴーグル)のようにも見えるデザインであることに由来している。

 1972年1月にはテールゲートが黒枠のダイナミックシリーズに対し、枠がボディ同色となるゴールデンシリーズが登場。cこちらは水中眼鏡とは呼ばれなかった。

 余談だが現行のアルトのリアスタイルがホンダZのデザインをモチーフにした説、G・ジウジアーロがデザインしたVWゴルフIという説があるが、後者が正解のようである。

 水中眼鏡のホンダZは、現在中古車市場には2台流通しており、価格はいずれも約90万円だった。

NIII360ベースの2ドアスペシャリティカーとして登場

■だるま(トヨタセリカ:1970年12月~1977年7月)

だるまセリカと呼ばれた初代セリカ

 初代セリカは、1970年12月に登場。フォードマスタングなどの影響を受けた日本車としては初のスペシャルティカーで、エンジン、トランスミッション、インテリアなどを自由に選べるフルチョイスシステムの導入もマスタングにならっていた。

 このセリカを正面から見たスタイルが、当時のクルマとしては「だるま」のように丸くふくよかなルックスであることが由来。またフロントバンパーがダルマの髭に見えるらしい。なお、初代コロナも丸みを帯びたエクステリアからダルマコロナと呼ばれていた。

 発売当時からだるまと呼ばれていたわけではなく、1973年4月に追加されたセリカリフトバック(LB)と区別するためにこう呼ばれた。だるまは、3ドアハッチバックのリフトバックとは異なり、トランク付きの2ドアクーペなのだ。

 現在、中古車市場に流通しているのは250万~500万円でだるま、リフトバック合わせて10台ほどだ。

1973年4月に登場したセリカLB(リフトバック)

■ブタケツ、棺桶、ガメラ(日産ローレルC130系1972年4月~1977年1月)

ブタケツローレルは大人気で今や1000万円オーバー

 ローレルはこの2代目モデルからスカイラインの兄弟車(2代目ローレルの時は4代目スカイライン)となった。どの部分が豚のお尻、ブタケツかというと2ドアハードトップのリア周りのエクステリアデザイン。

 この時代はクライスラーやダッジ、キャデラックなどのアメ車のデザインから影響を受けていたが、筆者は今見てもブタケツには見えないのだが……。ちなみにセダンはグリルの模様から、怪獣「ガメラ」からとって「ガメラローレル」と言われた。

ケツといえば、クジラクラウンのケツとリアクオーターもブタケツに遜色ないと思うのだが……

 「棺桶」は2ドアハードトップのリアシートに座った際の強い閉所感に由来したニックネーム。ローレルはこれ以外にもいろんなあだ名をつけられている。5代目ローレルは仏壇と呼ばれた。

 信じられないことだが、現在、2ドアハードトップのSGLは1000万円オーバーで販売されている。凄い時代になったもんだ。

ちなみにセダンは、特徴的なフロントマスクから「ガメラ」とも呼ばれた

■ブタ目(トヨタコロナマークII:1976年12月~1980年6月)

ジャガーXJを彷彿とさせる優雅なフォルムだが「ブタ目」とは……

 ジャガーXJを彷彿とさせる英国車風デザインの3代目コロナマークII。トヨタオート店では兄弟車、チェイサーが販売された。「堅気になろう三代目」という開発コンセプトは意味がわからない……。

 3代目コロナマークIIの単眼丸形2灯ヘッドライトのシンプルなフロントマスクから「ブタ目」の愛称で呼ばれた。

 現在、信じられないことだが、中古車市場でグランデが200万円で販売されている。

インテリアも欧州車風の粋なデザイン

■サメブル(ブルーバードU 2000GTシリーズ:1973年8月~1976年2月)

2分割グリルや四角い枠のなかに丸い4灯ヘッドライトなど、1970年のポンテアックGTOに似たフロントマスクが特徴

 大ヒットした510ブルーバードの後継車となる4代目ブルーバードU。6気筒エンジン搭載車のフロント周りのデザインが「サメ」を思い出させるところがあったことに由来する。CMキャッチコピーは「愛されていますか。奥さん。充実した家族のブルーバードU」というもので、時代に合わせて車格の大型化、上級志向となった。

 発売当初はソツのないデザインだったが1973年8月のマイナーチェンジで、Ⅼ20型2L、直6エンジンを搭載するため、ホイールベースを150mm延長し、フロントオーバーハングを55mm延長したロングノーズ仕様の2000GTシリーズ(GT、GT-E、GT-X、GT-XE)を発売。

 当時のポンティアックGTO(1970年式)にも似た四角の枠に丸い4灯のヘッドライトと2分割グリルのフロントマスクやエラのように見えるフェンダーのデザインが鮫を思わせることから「鮫ブル」と呼ばれた。また縦グリルとまたフロントノーズを延長したことがスカGに似ていることから「ブルG」とも言われた。

 このほか余談だが、尻下がりで販売不振に陥り、マイナーチェンジで修正するという前代未聞の2代目410型ブルーバードは、アニメ「ルパン三世」の映画「カリオストロの城」で、映画『カリオストロの白』で銭形警部が2代目ブルーバードのパトカーに乗っていたことに由来し、「銭ブル」とも言われた。

 現在、鮫ブルは中古車市場にほぼ出回っておらず、1台のみで1150万円。当時、不人気で生産台数も少なったことから今では逆に高値につながったということか……。

ローレル2000GT-Xのリアデザイン

■ハマグリ(2代目日産シルビア:1975年10月~1979年3月)

2代目シルビアのリアスタイル。ハマグリに見えますか?

 1975年10月に登場した2代目シルビア(S10型)の正式名称は「ニューシルビア」。エクステリアのロゴもNEW Silvia」。ハマグリという名はリアクオーターパネルの形状から付けられた。ハマグリを後ろから見ると、確かに見えないこともないが……。

北米受けを狙った丸目2灯式のヘッドランプや太いリアクォーターピラーにファストバックのスタイリングは日本国内では受け入れられず不人気だった。

 現在、2代目シルビアは残念ながら中古車市場には流通していない。

ボディサイドのえぐられ具合は今見ても凄い

■マヨネーズ(いすゞピアッツァ:1981年6月~1991年8月)

テールランプやガーニッシュなどリア回りのデザインも高い評価を受けたが「マヨネーズ」の容器に見えますか?

 ピアッツァは 117クーペの後継として1981年6月に登場。デザインを担当したのは、117クーペと同じくジョルジェット・ジウジアーロ。言わずと知れた工業デザイン界の巨匠である。

 いすゞからの依頼を受けたジウジアーロは1979年のジュネーブショーに「アッソ・デ・フィオーリ(Asso di fiori=イタリア語でクラブのエース)」と名付けたコンセプトカーを出展。

 そのアッソ・デ・フィオーリの斬新なフォルムおよびディテールを「ほぼそのまま」とも言える形で量産車化したのが、1981年6月登場の初代ピアッツァだった。

 1985年11月には、ドイツのチューナーであるイルムシャーに足回りのチューニングを依頼した、イルムシャーが登場。イルムシャーが手かげた、しなやかな足回りに加え、MOMO製ステアリングとレカロ製シート、専用デザインのフルホイールカバーなどが特徴だった。

ピアッツァイルムシャー

 1987年8月には一部改良でテールランプやアルミホイール、コンソールおよびステアリングのデザイン変更などを行なった。1988年6月にはXEハンドリング・バイ・ロータス(handling by LOTUS)を追加。

 こちらはMOMO製ステアリングと英国のロータスがチューンしたサスペンションとBBS製2ピースアルミホイール、7項目調節機構付きのバケットシートなどを装備した。1989年12月には最後のモデルとして、XEリミテッド・ハンドリング・バイ・ロータスを追加し、1991年8月に初代ピアッツァは販売を終了。

 なお通常モデルのほかに、GM車の日本輸入元だったヤナセで販売された「ピアッツァ・ネロ(Piazza Nero)」も存在する。ピアッツァ・ネロは内外装色にブラックも用意され、ピアッツァの特徴である異型2灯ヘッドライトは輸出仕様の4灯タイプになるなどの差別化が行われていた。

 現在、ピアッツァの中古車流通台数は10台あまりで、価格帯は200万~280万円。数年前に比べると、倍以上に値が上がっている。

1981年6月にデビューしたピアッツァ。ちなみにピアッツァの意味はイタリア語で広場(正確には都市のなかにある広場)

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 いかがだったでしょうか? もちろんクルマのあだ名、ニックネームにはほかにもたくさんありました。しかし、なんで最新のクルマにあだ名はあまり付けられないのでしょうか? 最近ではウイングロード「うなぎ犬」、R35GT-Rの「ゴジラ」、デリカD:5の顔「電気シェーバー」といったところでしょうか? 

 デザインが画一的でヘッドライトも異型ヘッドライトやコの字型で、超が付く個性的なデザインが少なくなったからではないでしょうか。みなさんはどう思いますか?

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