ヒット車にはもちろん「売れているだけの理由」があるはず。当企画では、ヒットを飛ばしているモデルをとりあげ、そのクルマの魅力の部分も含め、なぜ売れているのかを検証していくバイヤーズガイド! そのクルマの“魅力のツボ”がわかってくる!(本稿は「ベストカー」2013年7月10日号に掲載した記事の再録版となります)

文:渡辺陽一郎、斉藤 聡、国沢光宏

■プリウスをはじめ注目の新型クラウンが好調! 2013年セダン概況

 セダンの売れゆきは伸び悩み、今や販売ランキングの上位に入るのはプリウス(正確には5ドアハッチバックだが)、クラウン、カローラアクシオ程度。このうち、プリウスは一時的にαの比率が増えたが、今はセダンが約58%と挽回傾向。

 2位は8000台前後のクラウン。フロントマスクとの相性からロイヤルよりもアスリートが少し多く、ハイブリッドが圧倒的。2.5L、V6と比べて装備差を補正した実質価格差は約50万円だが、減税額の違いで負担額の違いは28万円に減る。4万km弱で差額が埋まり、ハイブリッドが人気を集めた。

 この2車は代替え需要が多く、プリウスはトヨタ全店の4900店舗が扱う。売れゆきが伸びるのも納得だが、堅実に頑張るのがアテンザ。新車効果も薄れてセダンだけなら1000台程度だが、クリーンディーゼルはクルマ好きに人気を得た。

 クラウンを含め、今はセダンも走る楽しさや質感だけでは売れない。高効率なメカニズムが重要で、欧州のセダンに入り込む余地を与えてしまった。(TEXT/渡辺陽一郎)

■マツダ 3代目アテンザ(250万~340万円)

マツダ 3代目アテンザ……全長4860×全幅1840×全高1450(mm)/エンジン:2.2L 直4ディーゼルターボ(188ps/42.8kgm)/JC08モード燃費:20.0km/L(XD)

 まずは、やはりディーゼルエンジン、SKYACTIV Dの存在を抜きには語れないだろう。

 ディーゼルエンジンを低圧縮化することで、すばらしく滑らかで軽い吹け上がりのディーゼルエンジンが完成。ターボとの組み合わせで42.8kgmの最大トルクをわずか2000回転で発揮。力強く速いエンジンに仕上がっている。しかも燃費はJC08モードで20.0km/L、MTなら22.4km/L。

 そしてクルマの出来がまたすばらしくいい。ボディがカッチリしていて、操縦性がいい。走らせていて気持ちいい。しかもスタイル抜群。(TEXT/斉藤 聡)

●オーナーズVoice(広島・Tさん)
・ハイブリッド車と戦えるほどの低燃費
・エンジンは静かで、かつハイパワー

●人気グレード
・1位…XD(35.5%)
・2位…XD L パッケージ(33.21%)
・3位…20S(16.6%)

●人気オプション
・1位…ディスチャージ・パッケージ(7万3500円)
・2位…225/45R19 92Wタイヤ&19×7 1/2インチアルミホイール(5万2500円)
・3位…セーフティ・パッケージ(7万3500円)

●販売台数(2013年1~4月)…4477台

■トヨタ 14代目クラウンロイヤル(353万~536万円)

トヨタ 14代目クラウンロイヤル……全長×全幅×全高:4895×1800×1460mm/エンジン:2.5L直4+モーター(システム出力220ps)/JC08モード燃費:23.2km/L(HVロイヤルサルーン)

 クラウンシリーズの保守本流はクラウンロイヤルにある。堂堂としたたたずまいと上質な乗り心地を備えた日本の高級車。

 単純にそれが現行型の形に現われユーザーに受け入れられたというのが売れている大きな理由ではないかと思うのだが、それとともに実際の乗り味もすばらしく洗練された。

 ゼロクラウンから3代同じプラットフォームを使っているが、それが熟成を生み、応答遅れがなくハンドル操作に素直についてくる操縦感覚とフラットで滑らかな乗り心地を実現している。その乗り味はちょっとびっくりするくらいいい。(TEXT/斉藤 聡)

●オーナーズVoice(神奈川・Tさん)
・後席は広く快適で乗り心地がいい
・輸入車と比べても高いインテリアの質感

●人気グレード
・1位…HVロイヤルサルーン(35%)
・2位…2.5ロイヤルサルーン(30%)
・3位…HVロイヤルサルーンG(15%)

●人気オプション
・1位…アドバンスドパッケージ(10万500円)※
・2位…ドライバーサポートパッケージ4万2000円)※
・3位…レザーシートパッケージ(23万1000円)※
※は設定グレードにより価格が違う

●販売台数(2013年1~4月)…1万3000台

■トヨタ 14代目クラウンアスリート(357万~543万円)

トヨタ 14代目クラウンアスリート……全長×全幅×全高:4895×1800×1450(mm)/エンジン:2.5L直4+モーター(システム出力220ps)/JC08モード燃費:23.2km/L(HVアスリートS)

 走りのいいクラウンとして生まれたアスリートは、今やクラウンシリーズのなかの看板モデルにまで成長した。

 新型アスリートの魅力は、体育会系スポーツセダンからハイパフォーマンスプレミアムセダンへと変わり洗練さを身に付けたことだろう。

「いなし」を取り入れたサスペンションアーム類の採用で、ただ硬く突っ張っていた足回りにしなやかな動きが現われた。ハンドルを切りだしてからサスペンションが動きクルマが曲がりだすまでの一連の挙動が、より正確で滑らかになった。

 バリエーションの広さも人気のひとつだが、本質の進化が最大の魅力。(TEXT/斉藤 聡)

●オーナーズVoice(静岡・Tさん)
・初めて乗った革シートの質感に感激
・パドルシフトの操作感も楽しい

●人気グレード
・1位…HVアスリートS(30%)
・2位…HVアスリートG(15%)
・3位…3.5アスリートG(10%)

●人気オプション
・1位…アドバンスドパッケージ(10万500円)※
・2位…ドライバーサポートパッケージ(4万2000円)※
・3位…レザーシートパッケージ(23万1000円)※
※は設定グレードにより価格が違う

●販売台数(2013年1~4月)…1万7000台

■トヨタ 3代目プリウス(217万~334万円)

トヨタ 3代目プリウス……全長×全幅×全高:4480×1745×1490mm/エンジン:1.8L直4+モーター(システム出力136ps)/JC08モード燃費:30.4km/L(S)

 改めて分析するまでもなく、車両価格+燃料コストの合計が圧倒的にリーズナブルである。

 なんせ普通に走って20km/Lを下回らない。1万kmごとのガソリン代は普通のクルマの半分といったイメージ。10万kmくらい走れば70万円くらい浮いてしまう。

 つまり70万円安い普通のガソリン車を買うならプリウスのほうが生涯コストで安くなるワケ。ということを皆さん認識するようになったため、決して安くないプリウスながら猛烈に売れているのだった。

 ただモデル末期を迎え、手強いライバルも増えている。ここから粘れるかどうか。(TEXT/国沢光宏)

●オーナーズVoice(山梨・Fさん)
・燃費のよさ。通勤で使っても平均20km/Lをマークするほど
・HV特有の加速感

●人気グレード
・1位…S(55%)
・2位…G(10%)
・3位…Sツーリング(10%)

●人気オプション
・1位…HDDナビ(4万8300円)※
・2位…フロントフォグランプ(3万3600円)※
・3位…寒冷地仕様(3万3600円)※
※は設定グレードにより価格が違う

●販売台数(2013年1~4月)…5万2000台

(内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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