車両盗難事件が後を絶たない今、盗難機の世界で最新最恐のツールと言われているのがGAME BOY。前回の記事でその詳細をお伝えしたが、今回はGAME BOYの防犯対策についてレポートしよう。
文/加藤久美子、写真/加藤久美子、AdobeStock(トビラ写真:cherryandbees@AdobeStock)
■史上最恐のGAME BOYとは?
2024年4月12日にベストカーWebで公開したGAME BOYは史上最恐といわれる自動車窃盗ツールである。記事公開以降、4月16日にはフジテレビ『イット』『めざまし8』で、同18日にはTBS『ひるおび』、同21日には同局『サンデージャポン』などで紹介され、筆者も各々解説やコメントをした。警視庁もGAME BOYについての情報収集を始めているようだ。
※前回の記事はこちら
なぜGAME BOYが最恐といわれるのか? それはリレーアタックやCANインベーダーと違って、「その場」でスペアキーが作れてしまうからだ。車種にもよるが、スペアキー作製までの時間は数分~45分。1台のGAME BOYで20台分のカギ情報がメモリできる。
また、カギ(スマートキー)から出る電波を増幅させてドアを開けたり、エンジンをかけたりする「リレーアタック」ではカギから発する信号を使うが、GAME BOYはドアハンドルなどの「クルマ側」から発する信号を使うところも大きな違いだ。つまり、電波を遮断する金属のケースにカギを保管するなどの対策も無意味となる。
GAME BOYにかかってしまえば、ランクル300に採用されている純正の指紋認証などもまったく意味をなさない。トヨタ純正の「トヨタセキュリティ」をはじめCANインベーダー対策の防盗用品も無意味だ。
ではどうすればいいのか? 結論から言うと、「ゴルゴ」「パンテーラ」「クリフォード」「オーサーアラーム」などの社外カーセキュリティで守るほか、今のところ対策はないといえる。
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■そもそもGAME BOYはどんなシステムなのか?
改めてGAME BOYによる窃盗の仕組みを以下でおさらいしておこう。
1.GAME BOYをドアハンドルに近づける。ドアハンドルをガチャガチャ引きながら、そこから発生するドア解錠の信号をGAME BOYでキャッチする
2.キャッチした信号を解析してカギの情報をGAME BOYにメモリする(=スペアキーができる)
3.解析までの時間は車種によって異なるが、数分~40分前後で完了。なお、解析はクルマから50m前後離れた場所でも可能。
4.解析が終了しカギ情報をメモリしたGAME BOYでドアを開けてエンジンをかける
5.クルマに傷をつけることもなく、そのまま走り去る…
このような手順でいとも簡単にクルマを盗み去ってしまうのだが、しっかりとしたカーセキュリティをメーカー認定店など信頼できる専門店で施工し、使い方の説明をしっかり受けて実行していればGAME BOYによる窃盗も阻止できる。
具体的にどんな方法があるのか? パンテーラやゴルゴなどを扱うカーセキュリティショップ『PRO-TECTA』(プロテクタ)専務の上條洋氏に聞いてみた。
■オーナーだけの操作でセキュリティを解除できる方法が最強
「GAME BOYは最新の40アルファードやランドクルーザー300もスマートキーなしで盗める超危険な手口です。盗難車が爆発的に増える気がしますが、セキュリティの取り付け方法によって防ぐことは可能です。その一例が弊社の独自開発である『キーレスファントム』で、こちらはパンテーラ、ゴルゴのオプションとしてセットします」
「一般的にキーフリーでアンロック(ドア解錠)すると、その時点でメーカー純正アラームは解除されますが、キーレスファントムをセットしたパンテーラ、ゴルゴは警戒が続きます。それを解除してエンジン始動するにはアンロック後に車内に入ってからオーナー専用操作で解除します。たとえGAME BOYで車内に入れても、犯人はその操作方法がわからないため、セキュリティの解除はできず、やがて警報が鳴り始めて犯人は諦めて立ち去ります」
「『キーレスファントム』はGAME BOYに代表されるキーエミュレータはもちろん、リレーアタックやCANインベーダーなどにも対応します。また、バイパーやクリフォードも純正キーフリーに完全連動(アンロックでセキュリティ解除)にならないように取り付けてあれば同様に防ぐことができます」
■独自の防犯システムもあり!
また、ゴルゴをベースに独自システムでGAMEBOYによるアタックから守れるシステムを構築し、施工する「AS-DESIGN」(エーエスデザイン本社:大阪府藤井寺市)の方法も要注目だ。
AS-DESIGN代表の前田隆秀氏は次のように語る。
「純正のキーレスシステムと連動させない『セパレート方式』と呼ばれる方法でゴルゴを取り付けます。CANインベーダー、リレーアタックいずれの手口でも対応可能で駐車環境によって任意にセキュリティのオン、オフが可能であり、ディーラーや修理で車輌を預ける際にも容易に行える便利なシステムです」
「独自の二重ロック構造で組み上げ、さらに不審者を警戒するセンサー類をオリジナルのフルオプションでセットし、覗き込む姿までも録画する専用ドラレコを連動録画できるように組み込みます」
「不審な動きをエリアセンサーや温度センサーが反応して威嚇させ、未然に犯行を防ぐことも大事です。万が一、各ドアやボンネット、リアゲートを開けられて侵入されるとサイレンが発報し、プッシュスタートボタンを完全スルー化します。この状態では何をやってもエンジンの始動はできません」
最恐盗難ツールといわれるGAME BOYでカギ情報を複製されたとしても、対策を万全にしていれば車内に入られてもエンジンがかかることはない。
多くのカーセキュリティが「キーレス連動でドア解錠とともにセキュリティOFFでエンジン始動可能」となり、GAME BOYでのドア解錠も同じ状態となるが、キーレス連動させずにセキュリティ専用のリモコンを用いてオーナーの操作で初めてセキュリティを解除(=エンジン始動可能)できることがポイントである。
■費用は確かに高額になってしまうのだが……
気になる価格だが、両社ともGAME BOY対策を完璧に行うためのフルオプションをつけるとゴルゴで30万~40万円とやや高額となるが、確実に愛車を守るにはこの方法が現在のところは最善策となりそう。
盗難に備えて車両保険を付保する人も多いだろうが、満額出るとはかぎらないし、場合によっては盗難の事実を保険会社が認めず、まったく保険金が支払われないケースもある。実際、2023年はアルファードが700台、ランクルが643台(警察庁調査)盗まれているが、車両保険が支払われたのは364台と383台。
この数字には車両保険を付けてないクルマも含まれるが車両保険も万能ではないことがわかるだろう。とにかく盗まれないように対策を施すことが最重要である。
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