1984年。この年は後に長きに渡って語り継がれるであろう名車たちが多く登場した年でもある。今回はそんな中で、現在あまり注目を受けていないと思われる車(筆者独自の印象)、スバルのレオーネについて、フルモデルチェンジ後のモデルの発売当時の評価を振り返ってみた。
この記事はベストカー1984年9月号(著者は徳大寺有恒氏)を転載し、再編集したものです。
■遂に出たぞ! 4ドアセダンタイプ!
8年ぶりにレオーネがフルモデルチェンジされた。新しいレオーネはとりあえず4ドアサルーンボディのみ。他のボディバリエーションは追って発表されよう。
ボディサイズは全長で100mm、ワイズで50mm、ホイールベースで30mm大きくなった。エンジンはシリンダーヘッドが大改造され、OHCレイアウトとなった(1800ccのみ)。
もちろん、そのバリエーションの中には4WDが加えられていることはいうまでもない。サスペンションも一新され、1800の上級シリーズにはエアスプリングが用いられている。
型式は前マクファーソンストラット、後セミトレーリングアームである。ニューレオーネ4WD、4ドアセダンのスタイルは6ライト4ドアで、旧レオーネより少し角張った印象である。
旧型より、そのスタイルコンセプトは明快だが、といってとりわけ美しいとか、魅力的であるとは思えない。もっとも、この種の4ドアセダンは嫌味がなければよしとすべきだから、これでいいかもしれない。
ただ、レオーネのように長い問売るクルマは、もう少々スタイルの流れを先取りしたほうがいいと思う。新鮮味があまり感じられないのは少しばかり残念。
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■より魅力的になった1.8Lフラット4!!
とりあえずということで私がテストに借り出したクルマは、シリーズ最高の4WDGTターボ、3速ロックアップ付きオートマチックである。今回、特筆すべきはターボにもマニュアルボックスが加えられたことである。
スポーツ派には大朗報といえよう。真紅に下3分の1がシルバーというイタリアンスタイルのGTターボは、旧型に比べ背が高く見える。これはとてもよいことで、事実、旧モデルに比ベ1425mmと高くなっている。
だから室内の広さは想像以上である。外観はコンパクト、室内は広い、これは小型車のボディ設計の理想である。リアシートは高く、そのためレッグルームは充分で、その上ヘッドルームは悠々としている。
この点、大いに気に入った。セミバケットタイプのシートは上下調節もついている。最近の傾向ではやや細めのグリップのスティアリングホイールを握りスタートした。
このクルマの最大のウィークポイントはオートマチックのレスポンスがよくないことで、しかも2速はセカンドロックアップだから、使いづらいことはなはだしい。このスタートの緩慢なオートマチックの早急な改善を望みたい。
この4WDGTターボは新しいOHCエンジン、エアスプリングサスペンション、そして、あるケースになると自動的に4WDになるなどのいろいろなしかけがついている。
その1は、新しいOHCヘッドを持つエンジンについて。ボア×ストローク92×67mmという超オーバースクウェアエンジンで、フラット4だから左右2本のカムシャフトは2本のコッグドベルトにより駆動される。
ターボコンバインの場合、圧縮比7.7、135馬力/5600回転、20.0kgm/2800回転を発する。なお、ノーマルアスピレーション版は、圧縮比9.0でキャブレター仕様、100馬力、15.0kgmである。
OHC化の最大のメリットはうんと静かに、かつスムーズになったことで、スバルのフラット4は再び同級他車のエンジンより魅力的になった。
ターボエンジンは充分にトルクフルで、ターボが働けば相当な加速を示すが、惜しいかな、前述のオートマチックのレスポンスがよくないので少し動力性能をスポイルしている。
これは想像だが、4WDという加速に有利なメカニズムを持つこのレオーネ4WDは、マニュアルなら(RXターボ)0~400m16秒前半ぐらいいくのではなかろうか。
とにかく、ニューOHCエンジンはとても良かった。読みにくいお祭りのようなデジタルディスプレイのレブカウンターは、再三6400まで示していた。
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■本当に必要か!? 4WD切り替えシステム!!
次なるメカニズムは、オートマチック4WDシステムである。これは4WDのオートマチックトランスミッション車すべてに装備されるものである。
すなわち、雨が降る(ワイパースウィッチと連動)、ブレーキ(ストップラングスウィッチと連動)、加速時(キックダウンスウィッチオン)の3つの場合、レオーネ4WDATは2WDを選んで走っていても自動的に切り替わるのである。
一見、これは便利に見えるが、実はあまり実用的でないと思う。オートマチックの場合、センターディフのないパートタイム4WDでも、小コーナーでリアタイヤを引きずることは少ない。
事実、この日私は何度も4WDのままフルロックで回転したが、ほとんど気になるほどの引きずりは感じなかった。つまり、このレオーネ4WDATはいつも4WDで走っても滅多に不便は感じないハズなのである。
にもかかわらずこの種の仕掛けを考えるのはなぜだろう。耐久力か何かに問題があるのかとかえってあらぬ疑いを抱く。
事実2WDで箱根をコーナリングしていると、コーナーの性格によりスロットルの踏み加減で2WDと4WDを往復することがある。これは困る。
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■これまでにはなかった、エアサスペンション!
3つめの新しいエンジニアリングは、エレクトロ・ニューマチックサスペンションというシステムだ。
前後輪とも空気バネを用い、通常のレベルでは減衰力を弱め、ソフトに設定し、ロールやブレーキ時のノーズダイブ、発進時のスクウォート、凸凹をハイスピードで乗り越える時などは、瞬時にハードになるというシステムだ。
私はこのサスペンションこそニューレオーネの技術的ハイライトだと思う。そして、このサスペンションはオートレベリングシステムを有し、車高も任意に30~35mm高くすることができるのである。
これは4WDにとってとても重要なメカニズムである。多くのエアサスペンションより、レオーネのそれはリファインされている。ノーマルでは極めてソフトで少々不安になるぐらい柔らかい。
しかしハイスピードで突起を超えるときは充分にダンピングが効き、ピッチングは続かない。少なくとも乗り心地に関してはとても良いと思った。
しかし、一つだけ不自然なのはコーナリング時に少し道が荒れていると、フロントサスペンションはギクギクし、スティアリングに強いキックバックがある。その時リアに少なからず不自然なショックを感じる。
この種の新しいメカニズムを持つニューカーは時として個体差があるものだから、この件に関しては断定はしないでおこう。もう一度、来月号でより長距離を乗ってその結果を報告したい。
このことに気をとられ、コーナリングアビリティもハッキリとしたことが言えなくて申し訳ない。ただ、4WDと2WDでは安定感が違うことは明らかであった。
また、タイヤはBSのSF237スチールラジアルで、サイズは185/70HR13であった。この辺はスバルは良心的で大変よろしい。妙にワイドタイヤを履きたがるアウディより賛成できる。
ニューレオーネ4WDGTターボは、シリーズ最上級ゆえに少々装飾過多なのはこまりものだが(もう少々簡素なこのシリーズがあっていい)全般的によくできている。
コンパクトなボディ、広い室内、そして4WDの安全なドライブフィール。新しいエアサスペンションの柔らかい乗り心地と、それを助ける出来の良いスチールラジアルタイヤなど、全体的にバランスの取れた高級ファミリーサルーンである。
このクルマは一日のテストでなく、もっとゆっくりと乗り込んでみたい気にさせられる。
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