のちにWRCで三冠を達成する伝説のシリーズ、インプレッサWRX タイプRA STiバージョン(GC8型)。数々の伝説を残してきたこのクルマだが、新車販売当時の評価はどうだったのか。新車販売当時の記事をリバイバルし、過去を振り返っていく。

※この記事はベストカー1995年1月10日号(著者は根本純氏)を転載し、再編集したものです

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■ステージを選ばない”強い”走り…!! 

ベストカー1995年1月10日号、インプレッサWRX タイプRA STiバージョン 試乗記事より

 WRCではトヨタと、そして全日本ラリー選手権では三菱と激しいチャンピオン争いを展開しているスバル・インプレッサだが、日本のラリーではサスペンションの一部の手を入れることが認められている以外、公道を走る関係でほとんど改造できない。

 つまり、ベースとなるクルマにどこまでコンペティションできる要素を詰め込むかが重要となる。275psのSTiバージョンは日本で勝つための仕様といえ、ラリーだけでなく、ダートラ、さらにジムカーナまでのポテンシャルアップが図られている。

 競技に勝つためのクルマ、つまり本物志向の最先端なだけに、ストリート派にもたまらない魅力を持っている。中でもライバルにない最新のスーパーウェポンがドライバーズ・コントロール・センターデフだ。

 このシステム、まずセンターデフによる基本トルク配分が35、後65に設定されている。センターデフをフリーにしておくとこの配分になり、センターコンソール左のバリアブルのロータースイッチによって手動で50対50までロック率を自由設定できるのだ。

 これによってワインディングロードなど、回頭性を高めたいときはフリーに近づけてFR寄りの配分とし、下りやダートなどではロックして荷重配分や路面のミューに対し、最大のトラクションを発揮させられる。

 ダートの全開走行ではセンターデフをロックした方がドリフトコントロールが一定で、4WDレイアウトではこのほうがトラクション的にもベストなのだ。 

 このセンターデフ、内臓クラッチの作動を電磁コイルで行っている。ロック率はメーター内のATインジケーターの窓を利用して段階表示されるが、電気コントロールのメリットとして、サイドブレーキに連動して瞬時にデフをフリーにできる。

 つまりデフロックでの走行時にも、自在にサイドブレーキによるスピンターンが可能なのだ。

 実際に走らせてみる。定常円旋回でスイッチを動かすと、ロック率が高まるほどにタイトターンブレーキング現象が発生。タイヤに負担がかかって旋回しにくくなるが、サイドを軽く引き、作動のランプが点灯すると同時にスムーズな旋回に戻り、デフがフリーになったことがわかる。

 戻せば元のセット率に復帰するすごいシステムだ。その後の走行でも、つい今までの「どうせ効かないだろう」というイメージでサイドを引いたら、見事にスピンしてしまった。これならジムカーナでも大きな武器となる。

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■本気で”勝ち”にこだわった作りこみ

リアには2ウェイ4ピニオンの機械式LSDを装備している

 乗り味はハードだ。軽量化のため防音材も簡略化されている分騒音や振動では快適度が下がる。ただし、カチッとした一体感のあるボディ剛性は洗練度を増している。

 エンジンは中速トルクがアップされ、2000回転から実用でき、クロスミッションは日常なら1、3、5速でシフト可能なほど。もちろんワインディングでは強烈な4000回転からのフルブーストゾーンの引き出しに効果を発揮する。

 剛性感の高いブレーキングからクイックなステアリングを操作して一連のハンドリングはオンザレールのシャープこの上ないもの。それはフルパワーの加速とともに乗り手を選ぶものともいえる。STiは真に勝ちを狙うスーパー4WDなのだ。

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■アルバイトスタッフより

 いつもベストカーWebをご愛読いただきありがとうございます。アルバイトスタッフのOです。今回はスバル インプレッサWRX タイプRA STiバージョン(GC8型)の試乗記事を取り上げました。スバル インプレッサ WRXを語るうえで欠かせないGC8型。

 この頃ライバルであったエボIIIやR32にも共通して言えることですが、まず見た目からもう速そう…。当時としては最新のDCCD搭載車に加え、心臓であるEJ20から生まれるパワーはとても魅力的です。

 言わば街乗りガン無視の生粋のスポーツセダン。自分としてはここに引き込まれますね。快適さなんて二の次で、とにかく早さを求めた究極形態。これが約273万からマイナーチェンジ後も280万ほどで買えたんですから、当時のクルマ好きは震え上がったんだろうなぁっと思います。

 そんなGC8型も今回紹介したタイプRA STiバージョンに絞ると、そもそもの生産台数が少ないこともありますが、中古車市場に出ている個体がほとんどありません。愛され続けて今もなお大事に乗られているのか、はたまた、捨てられてしまっているのか…個人的には前者だと思いますが…(笑)

 一度は乗ってみたい、そんな風に思わせてくれるクルマですね。

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