モータースポーツでの輝かしい活躍もあって、世界中に熱狂的なファンを持つメーカー、アルファロメオ。そのアルファが手掛けた初のBEVは、ファンのお眼鏡にかなうものなのか、それとも……?

※本稿は2024年7月のものです
文:嶋田智之/写真:ベストカー編集部、アルファロメオ ほか
初出:『ベストカー』2024年8月26日号

■アルファ初のピュアEVにアルファ“らしさ”はあるのか

そこにアルファらしさはあるのかい? 軽く身構えながらの試乗だったが、著者の嶋田氏の想像を超えた、見事にアルファロメオなクルマだった

 アルファロメオ初のピュアEV、ジュニアにアルファ“らしさ”はあるのか。傾向として内燃エンジン至上主義な人が多いアルファファンを納得させられるものを持っているのか。

 ちょっとした懸念を抱きながらイタリア本国バロッコのテストコースで走らせたジュニアは、僕の、そしておそらくあなたの想像を遙かに超えた、見事にアルファロメオなクルマだった。

 ジュニアはマイルドハイブリッドと100%モーター駆動の2本立て。試乗車はモーター駆動の最強モデル、エレットリカ280ヴェローチェだった。最新のM4+モーターと54kWhの高エネルギー密度バッテリーの組み合わせで、280psのパワーと35.2kgmのトルク、WLTPサイクル334kmの航続距離を実現している。

 走ったのは荒れた路面やワインディングロード込みの一般道を模した20kmのコースと、5.9秒の0-100km/h加速も200km/hの最高速度も、その気になれば試せる高速サーキット。あらゆる路面と走らせ方で、ジュニアを試すことができたわけだ。

カバーの下に280ps/35.2kgmのモーターが収まる。モーター出力=156ps/26.5kgm版も用意される

 走りはじめて感銘を受けたのが各部の滑らかさ。BEVは総じて加速が滑らかだが、ジュニアのその感覚はクラスで最も上質といえる気持ちよさ。

 ステアリングのフィールも同じく、切り込んでいく時の感触がとても心地よい。乗り心地もピッチングやロールが適度に抑えられて、快適といえる部類だ。

 サスペンションはやや硬めだが、それを受けとめる車体がかなり強固だから、脚がよく動いて余分な動きをしない。クラスを超えた上質な乗り味といえる。

 そして、ハンドリングだ。姉にあたるステルヴィオやトナーレは、ここがとてもドラマチック。アルファ最大のこだわりどころだ。末妹のジュニアはどうかといえば、それがまったく負けてなかったのだ。

 ステアリングを切り込むと間髪入れずに前輪と後輪が同調するように旋回を開始し、狙ったラインをピタリとなぞっていく。基本、オーバーステアもなければアンダーステアもない。しかもその動きは手に取るように伝わってくる。だから楽しい。だから気持ちいい。

 車重がライバルたちより200kgほど軽いこともあり、発進加速や立ち上がり加速も爽快だ。走りに不満など微塵も感じられない。

 たしかにエンジンの音はない。でも、これは紛れもなくアルファだな、と思わされた。

●アルファロメオ ジュニア 主要諸元
・グレード:ELETTRICA 280
・全長:4173mm
・全幅:1781mm
・全高:1505mm
・ホイールベース:2562mm
・車両重量:1590kg
・モーター出力:280ps/35.2kgm
・バッテリー容量:54kWh
・一充電航続距離:334km
・駆動方式:FF

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