近年、各自動車メーカーから登場しているバッテリーのみで駆動する電動車BEV。そのBEVのエクステリアデザインの特徴的ポイントというのが、グリルレスであることだ。意匠としてのグリルはあったりするが、実際にバンパーに「穴」が開けられていないことがほとんど。それはいったいなぜなのだろうか。その理由を紹介していこう。
文:西川 昇吾/写真:ベストカーWeb編集部
■というか、どうしてBEVにグリルがないの?
BEVに穴が開けられていない理由、それはエンジンを冷やす冷却水が無いからという単純な理由だ。
現代のエンジン車はほとんど水冷で、冷却水を使ってエンジンを冷やすが、その冷却水を冷やすラジエーターに風を当てて冷やすために、多くのクルマには穴があけられているのだ。
現代のクルマの多くがフロントにラジエーターを装備しているため、フロント部分に穴があけられることとなる。
だがBEVならばエンジンが無いため、基本的にラジエーターを搭載する必要がない。つまり、車両の前方から外気を取り込む必要がないのだ。だからBEVでは穴が開いていないグリルレスなデザインが多いと思っている人も多いだろう。
しかし、BEVでもバッテリーやモーターの冷却は必要とされているし、冷却回路が用意されている場合も多く、冷却水が用いられている(エンジン車用のクーラントとは異なるが)もある。
だがグリルレスデザインが多いのは、ラジエーターを使用するエンジン車とは冷却方法が異なるからという部分が大きい。温度管理により緻密さが求められるといった部分も大きいだろう。
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■実は、空気抵抗も大きなポイント
またBEVにグリルレスデザインが多い理由としては、空気抵抗を減らしたいためもある。マーケティング戦略的な部分もあるが、BEVが登場した時にアピールされるポイントとして、空気抵抗の低減がある。
これは航続距離を長くするため、よりエネルギーを効率的に使うためという側面が大きい。
何となく、角ばったクルマは空気抵抗が大きくて、丸っこいクルマは空気抵抗が小さいといったイメージがあるかもしれないが、風洞実験が進んでいる今は、クルマの形だけでなく、クルマに開けられた様々な穴もより適した形にしようと開発が煮詰められているのだ。
エンジン車の場合、冷却風を取り入れる空気抵抗は車体全体で発生する空気抵抗の約10%を占めているため、今や無視できない存在なのだ。
そんな無視できない存在ならばグリルレスデザインにして、空気抵抗を減らすというのがBEVに多く用いられている考え方だ。
しかし、グリルというのはクルマの顔であり、デザインイメージを大きく変化させるものだ。そのため、最近はグリルのデザインはされていても穴は実際に開いていなかったり、グリルの輪郭だけデザインされているものもある。近年のBEVデザインのトレンドと言えるだろう。
パワーユニットの変化はクルマのデザインにも大きな変化を生む。今後電動車時代のクルマのデザインがどう変わっていくかも注目したいポイントだ。
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