VWが誇るプレミアムコンパクト、7代目ゴルフ。そのスポーツモデルである「GTI」試乗の様子をプレイバック。日本に導入が予定されている状況での本国・ドイツでの先行試乗。その手応えやいかに!?(本稿は「ベストカー」2013年6月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:編集部
■日本導入予定の新型ゴルフGTIに先行試乗!
1976年にデビューしてから過去6代、約37年にわたる歴史のなかで約190万台が販売されてきたゴルフGTI。身近なエントリースポーツカーの代名詞、「ホットハッチ」はこのゴルフから生まれたものだ。
思えば、現在40代になる担当も10代の頃、ゴルフIIのフロントグリルに入った赤いラインと燦然と輝くGTIバッジに憧れたものだ。
「当時は高くてとても買えなかった」と、そんな思いを抱きながらミュンヘン空港に降り立ち、ゴルフVII GTIの国際試乗会の会場に向かうと、ひと目でわかる強烈なオーラを放つゴルフVII GTIが10台ほど並べられていた。
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■エクステリア
ゴルフVI GTIでは黒いハニカムグリルの上下に1本の赤いラインが入っていたが、ゴルフVII GTIはハニカムグリルの下に赤いラインが入り、それが左右のバイキセノンヘッドライトの下のハウジングまで延長されているほか、ヘッドライト下の左右バンパーに黒い3本のスプリッターが入り、アグレッシブさが一段と増している。
さらにフロントフェンダーに取り付けられたGTIロゴ入りプレート、新デザインのアルミホイールと、ゴルフVIからの変化は大きなものだ。
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■インテリア
伝統のタータンチェックもリデザインされ、ゴルフVI GTIで「ジャッキー」と呼ばれていたシート生地は「クラーク」に変更され、オプションでサイドおよびヘッドレストにアルカンターラ、サイドパネルに本革が選べるようになった。
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■メカニズムのハイライト
エンジンは旧型と同様のEA888型と呼ばれる1L直噴ターボだが、直噴とマルチポイント噴射によるデュアルインジェクションシステムや、新設計のシリンダーヘッドと一体化された排気ガスの冷却方式、エンジン内部の摩擦低減などにより、最高出力が10ps、最大トルクが7.1kgm向上した110ps/35.7kgmとなった。
パワー&トルクをアップしながらも欧州複合燃費は6速DSG仕様でゴルフVIよりも14%燃費が向上し15.6km/Lとなり、GTIとして初めてユーロ6をクリアしている点はさすがだ。
ベースのノーマルゴルフが新世代の横置き用モジュラープラットフォームMQBを採用したことにより、ゴルフVII GTIもゴルフVI GTIに比べ車重は1ドア比で41kg軽量化され、ゴルフVIに用意されていたコーナリング内側の内輪にブレーキをかけて空転を抑え、アンダーステアを抑えるLSD、XDSもXDS+に進化。
さらにステアリングの舵角の大きさによってギアレシオが変わるプログレッシブステアリングを標準装備。
またオプションで選べる可変ダンパーのDCC(アダプティブシャシーコントロール)に加えてエンジン、トランスミッション、パワーステアリングなど統合制御する、ドライビングプロファイル機能が用意され、DCC付きは、ノーマル、スポーツ、エコ、そして、インディビジュアルモード(エンジン、シフト、ステアリングなど各部の制御を好みに応じて設定できる)に加えて、コンフォートモードも選択できる。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアが4リンクと形式こそゴルフVI GTIを踏襲しているが、大幅な改良が加えられており、専用チューニングされたスポーツサスペンションにより、車高は15mm低くなっている。
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■実際走ってみてどうか?
試乗コースはドイツ ミュンヘンからGTIイベント(次号で紹介)の会場であるオーストリア ベルターゼーまで片道約400kmの道程。アウトバーンがほとんどだが途中、ワインディングコースを含む市街地でも試乗チェックした。
試乗車は110psのDCCおよびドライビングプロファイリング機能付きの6速MTと6速DSG。1台ともにオプションの115/40R18のBSポテンザS001が装着されていた。
6速DSG仕様で、はやる気持ちを抑えながらアウトバーンに入る。走行車線に入りアクセルをベタ踏みし、加速していく時にまず感じるのはボディの軽さだった。
6000~8000rpmまでの回転域が赤く塗られているのだが、タッチ画面でDCCモードをスポーツモードにすると、6800rpmという高回転域でシフトアップ。その瞬間「バフォ」という音圧の低いエキゾーストノートが響いてくる。これぞGTIだ!
しかし普通にアクセルを踏んでいるぶんには予想外に室内は静か。ゴルフVIIとなり、大幅にNVH性能が高められているからだろう。
乗り心地については適度に固いノーマルモードからコンフォートモードに変えてみると明らかに乗り心地がソフトになり、その差を感じるが、意外だったのはスポーツモード。
ジキルとハイドのように劇的に変わると想像していたのだがあくまでも快適性優先といった印象。しかし、レーンチェンジでの挙動の変化では、ビシッとボディに追従するスタビリティの高さが確認できた。
アウトバーンを降り、電子制御式ディファレンシャルロックXDS+を試そうと中速コーナーに進入してみる。プログレッシブステアリングのおかげで従来に比べ、進入時に楽にステアリング操作が行なえるばかりか、XDS+により、アンダーステアにならず、コーナーをぐいぐい切り込んでいけるのだった。
これは明らかにゴルフVIよりコーナリングスピードが上がっていると断言できる。しかも身のこなしは安定かつ俊敏だから、腕にあまり自信がないドライバーでもゴルフVII GTIに乗ると、うまくなったと錯覚してしまうかもしれない。
ただしこれはDCCありの場合。なしならどうか?
基本的にゴルフVII GTIの開発にあたってはDCCなしで、限界域までテストし、俊敏性や安定性など満足のいく結果が得られたというからDCCなしでも不安に駆られることはないだろう。
6速MT仕様は6速DSGほどの感動はなかった。というのもオルガン式から吊り下げ式に変更されたためか、アクセルペダルとブレーキペダルの間が広く、高さも違うためヒールアンドトゥがやりにくいのだ。
試乗車はほかに10psアップしたフロントディファレンシャルロック付きのパフォーマンスパックも用意されていた。標準車に比べ0→100km/hは0.1秒速い6.4秒、最高速度は4km/h速い150km/h。
GTIに試乗した後、もっとパワーがほしい、もっと劇的に足回りが固くならないのかと技術者に訴えていたのだが、GTIパフォーマンスパックを運転した途端、その思いは吹き飛んだ。こうした声に応えるためにパフォーマンスパックを設定したことがよくわかったからだ。
パフォーマンスパックに用意されるフロントディファレンシャルロックの出来を試せるほどのコーナーを攻めることはできなかったが、アウトバーンでのレーンチェンジではリバウンドが少なく、路面のざらつきを感じるほど明らかにハードな足回りだった。
冷静になって考えると、このパフォーマンスパッケージは限界性能を求めるワインディングやサーキットユース向けといっていい。
ゴルフGTIの日本導入時期は今年中に予定されている。導入グレードの詳細は決まっていないが、おそらく110psの6速DSG仕様になるだろう。
なんといっても家族からも不満の出ない走りの上質感と乗り心地のよさ。そしてピリリと刺激がほしい時に熱くなれるスポーツ性。それがゴルフVII GTIの最大の魅力だ。
刺激を忘れた大人にぜひ乗ってほしい1台だ。
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■搭載されるエンジンは1Lターボ!
●GTI(標準仕様)
・1L直4ターボ/6速DSG
・最高出力=110ps/4500~6100rpm
・最大トルク=35.7kgm/1500~4400rpm
・0→100km/h=6.5秒
・最高速度=146km/h
●GTI(パフォーマンスパック)
・1L直4ターボ/6速SG
・最高出力=130ps/4700~6100rpm
・最大トルク=35.7kgm/1500~4600rpm
・0→100km/h=6.4秒
・最高速度=150km/h
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■2014年に日本に導入予定のゴルフディーゼルにも試乗!
フォルクスワーゲンジャパンは2014年末までに日本市場にディーゼル車を投入することを明らかにした。そこで今回、ゴルフのディーゼルモデル、「1.0TDIハイライン」にも試乗してみた。
搭載されるエンジンは1Lターボディーゼルで最高出力は150ps、最大トルクは31.6kgmでトランスミッションは6速DSGが組み合わせられる。欧州複合モード燃費は4.4L/100km(11.7km/L)。
エンジンをかけるとアイドリング状態のガラガラ音は室内にいるとディーゼルだとすぐにわかる騒がしさだ。
3L並みの31.6kgmのトルクが1750rpmという低い回転数から発生するので、トルク感たっぷりの力強い加速感だ。
100km/h巡行でもわずか1800rpm。ただノーズが重く、軽快感やガソリン仕様に感じられた上質さは薄まっているように思う。それだけガソリン仕様のよさがきわだっているということだ。
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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