現行モデルが登場したのは2010年8月のこと。すでに14年近くが経過し、販売台数も年間で2000台ほどに。一時期はモデル廃止もウワサされていたが、2023年のジャパンモビリティショーでは、コンセプトカー「ハイパーツアラー」が出展されるなど、どうやら次期型のプロジェクトは進んでいるようす。では次期型エルグランドはどのようなモデルになるのか!?? また、次期型エルグランドが王者アルファード/ヴェルファイアに立ち向かうために必要なこととは!??

文:吉川賢一
写真:NISSAN、エムスリープロダクション

■アルファードの100分の4しか売れていないエルグランド

 2010年に登場した現行エルグランド。幾度かのマイナーチェンジで刷新されてきてはいるが、ベースは13年以上も前のモデル。つい先日にも(2024年3月)にも一部改良版が行われ、アラウンドビューモニターなどのアイテムが標準装備になるなどでお買い得にはなっているが、目新しさはなく商品力は下がる一方。

 冒頭でも触れたように販売台数は見るも無残な状況で、アルファード/ヴェルファイアの2023年の販売台数が53,086台/13,218台であるのに対し、エルグランドはわずか2,255台と、アルファードの100分の4、ひと月分の半分しか売れていない。

 ここ数年の国内日産は、2022年に出したノート/ノートオーラ、セレナの販売が好調で、軽BEVのサクラも人気車となった。GT-RやフェアレディZといった花形車種の動きは目立つが、そうしたモデルは、話題にはなっても、販売台数への貢献度は小さい。

 ノートやセレナなどの人気車もいつまでも人気車でいられる保証はなく、次世代の「しっかりと稼げるモデル」が早急に必要であり、エルグランドの次期型は大いに期待したいモデルのひとつだ。

2024年03月28日に一部仕様変更となったエルグランド。インテリジェントアラウンドビューモニター(移動物検知機能付)と、ディスプレイ付自動防眩式ルームミラーを全車標準装備した
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■e-POWERターボに加えて、エコノミーなガソリンユニットも必須!!

 現行エルグランドのパワーユニットは、2.5Lの直4エンジンと、3.5LのV6エンジンの2種類。ダウンサイジングターボでもなくマイルドハイブリッドでもない、時代遅れのパワーユニットだ。

 そんなエルグランドの次期型のパワーユニットとして、真っ先に思い浮かぶのが、T33エクストレイルに搭載しているe-POWERターボ(VC TURBO)だ。

 1.5Lのガソリンエンジン発電+モーター駆動で、2WD車はフロントに最高出力150kW(204PS)最大トルク330Nmのハイパワーモーターを、e-4ORCE(4WD)車ではさらに、リヤに最高出力100kW(136PS)最大トルク195Nmのモーターを搭載する。

 その走りは爽快そのもので、燃費もすこぶるよく、WLTCモード燃費で19.7km/L(e-4ORCEは18.4km/L)に達する。自動車税もわずかに安くなる(3.0L超~3.5L以下の57,000円から1.0L超~1.5L以下の34,500円)。3.5L V6の置き換えユニットとしては十分な性能だろう。

 だが、これだけではアルファード/ヴェルファイアに立ち向かうことはできない。e-POWERターボに加えて、台数を売るためのエコノミータイプのパワートレインも必須だ。

 既存の2.5Lのガソリンエンジンをモディファイするか、パワーや燃費が足らなければ、北米アルティマ用の2.0L VCターボを利用するという手もある。新型アルファードも2.5L直4ガソリンエンジン車は残しており、価格も税込540万円からとリーズナブルで、その廉価モデルを中心に売れている。

 ノートやエクストレイル、キックスのように、e-POWER一本になんてせず、ラージミニバンを求める顧客の声を聴いて、廉価なユニットも用意してほしいと思う。

2023年10月~11月に登場したコンセプトカーのハイパーツアラー。超大型のミニバンのスタイルは、まさにキングオブミニバンといえる迫力があった
2024年3月25日に日産が発表した経営計画「The Arc」において登場した、25車種のシルエット映像。新型エルグランドらしきシルエットは、ハイパーツアラーに似ているようにもみえる

■アルファードの全長×全幅×全高をコピーし、デザイン力で勝負する

 デザインに関しては「エルグランド=スポーツミニバン」という考えを日産自身が見直すことが先決で、まずは現行エルグランドの背低スタイル(全高1815mm)をバッサリと諦めてほしい。全高はアルファード以上、車内からの視界が高い「ミニバン」として生まれ変わることが、次期型エルグランドが成功するための絶対条件だ。

 開発する側としては、ライバル(アルファード/ヴェルファイア)と差別化するため、「走りのミニバンで一番になる!!」と考えたくなるところではあるが、残念ながらその方向性には需要がないことは、現行エルグランドの販売台数が示している。

 売れるクルマをつくるには、自分たちがつくりたいクルマではなく、顧客が求めるクルマをつくる必要がある。アルファードという最高の見本があるのだから、全長×全幅×全高はそのままコピーし、細かなデザインで勝負してほしいと思う。

 ハイパーツアラーのアルファード並みの背高ぶりや、余計なキャラクターラインをなくして面を強調したボディサイド、従来よりもウインドウラインを高めた「アルファードスタイル」は、まさにミニバンユーザーが求めるエクステリアデザインだと思う。ぜひともこれを次期型エルグランドで実現させてほしいと思う。

東京モビリティショー2023にて登場したハイパーツアラー。ボディサイドのウインドウラインが、これまでよりも高い位置にきている
The Arcの発表会で登場した、新型エルグランドらしきミニバンのシルエット。一文字タイプのリアテールランプがあることがわかる
ハイパーツアラーのインテリア。運転席側から助手席側まで回り込んだ、大型の液晶ディスプレイがカッコいい!!

■ラグジュアリーミニバン市場は今後も高い需要が見込める

 アルファードやヴェルファイアの販売動向や、海外への輸出事情をみていても、ラグジュアリーミニバン市場は今後も高い需要が見込める。

 日産としても、アルファードやヴェルファイアの後塵を拝しているエルグランドの現状をなんとか打破し、再びエルグランドをカテゴリの王者に仕立て上げたい、という思いは強いことだろう。アルファードが新型となることで100万円以上も高額化したとしても、売れ行きは絶好調のままであることを考えると、次期型エルグランドにも勝機はあるはず。期待して待ちたい!!

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