トヨタのパフォーマンスブランド「GR」のエントリーモデルとして人気の「GRスポーツ」。ヤリスクロスやアクアがおなじみだが、実は欧州仕様に限り、ヤリスにも存在する。しかもこのヤリスGRスポーツ、3ナンバーボディでハイブリッドも第5世代というスペシャル仕様。これ、日本じゃ買えないのー?

文:山本シンヤ/写真:Toyota Europe

■海外でしか手に入らない「GRスポーツ」が存在する 

トヨタ ヤリスGRスポーツ(欧州仕様)

 豊田章男氏が語る「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を率先して行なう部隊が「GR」である。その起源は2010年の東京オートサロンで発表された「Gスポーツ(G’s)」だが、2017年にGRカンパニーが発足して以降は、GRスープラ/GRカローラ/GRヤリス/GR86などの「専用モデル」が主となっている。 

 ただ、トヨタの量産モデルをベースにGRのエッセンスを注入した入門モデル「GRスポーツ」も用意されている。

 GR発足当初はコンパクトからセダン、ミニバンまで豊富なラインアップを誇っていたが、ベース車の世代交代などでラインアップが減少。現在はコペン、アクア、ヤリスクロス、ハイラックス、そしてランクル300などが販売中だ。 

 その一方で、海外ではそれ以外のモデルにもGRスポーツをラインアップ。中には「日本仕様には設定がないが海外仕様には設定される」モデルも存在する。その1台が今回紹介する「ヤリスGRスポーツ」だ。

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■ボディは3ナンバーサイズ、ハイブリッドは第5世代

1745mmの全幅が踏ん張り感を強調する

 ちなみに“日本”のヤリスと“欧州”のヤリス、実は同じモデルではない。簡単に説明すると、全幅が異なる(1695→1745mm)、サスペンション周り(ハブ穴4→5などGA-Cの部品を水平展開)、上位グレードに高出力HEVパワートレインの採用など、日本仕様よりも上級仕立てとなっているのだ。 

 そんな欧州ヤリスがベースのヤリスGRスーツは何が違うのか? エクステリアはフロントに「Gモチーフ」と呼ばれるメッシュが施された専用グリル、サイドはレッドアクセントがプラスされた専用アルミホイール(18インチ)、リアは「Tシェイプ」の専用ディフューザーの採用とノーマルからの変更点は少なめだが、ワイドボディも相まって精悍でスポーティなスタイル。

 インテリアは専用のステアリングやシフトノブ、レザー×ウルトラスエードのスポーツシートなどが採用される。ブラック×レッドステッチ×ガンメタリック加飾によるコーディネイトは、スポーティだけど子供っぽくない絶妙な塩梅だ。 

 フットワークはさらなる走りのレベルアップのために各部に手が入る。ブレースなどの追加で体幹を鍛えた車体に専用セットアップのサスペンション(ZF製ダンパー)と215/40R18タイヤをプラス、EPSも専用制御に変更される。さらに空力性能向上(ドラック低減)のために、フロント/リアタイヤのハウジングにライナーの追加も行なわれる。 

 パワートレインはGRスポーツ専用ではないものの、欧州向けのみに設定される高出力HEVは第5世代のシステム(モーターを含めたトランスアクスルはノア/ヴォクシーで開発したモノを水平展開)で、システム出力は従来システム対して約12%アップの130HPを発揮する。

 恐らくLBXとほぼ同じシステム構成だと予想しているが、そうであればLBXより軽量ボディとの組み合わせで、動力性能もかなり期待できそうだ。 

■いいクルマだからこそ日本導入を切望!

左ハンドルのインテリア

 実は筆者、ヤリスGRスポーツに試乗した事がある(2023年に改良される前のモデル)。その印象は、ノーマルのヤリスに対してダイレクト感と俊敏な応答性、さらには無駄な姿勢変化を抑えた直感ハンドリングにビックリ。

 これはGRヤリスの1.5L+CVT仕様のFFモデル「RS」とよく似ているが、より軽快なクルマの動き、フリクションの少ない足さばきの良さ、アクセルで姿勢がコントロールできる自在性(もちろんスタビリティはシッカリ確保)など、FFスポーツハッチの旨味である“ワクワク”と最新モデルらしい“安心”をバランスよく両立した絶妙なセットである。 

 それだけでなく、滑らかな操舵フィールから繋がるコーナリングの一連の様から感じられる動的質感の高さ、路面の入力をまるく収める快適性の高さも備えられおり、まさに「スポーツプレミアム」と呼びたくなる走りに仕上がっているのだ。 

 ただ、残念ながらヤリスGRスポーツは現時点では日本導入計画はない。トヨタとしては「日本市場にはアクアGRスポーツがある」と言う判断、さらに生産が日本ではない(フランス工場)と言った理由があるが、ヤリスGRスポーツのご先祖のヴィッツG’s、GR/GRスポーツの保有台数は現在も多く、彼らは直系の後継モデルを待っているのも事実である。

 トヨタは「お客様(=ユーザー)に寄り添う」が身上だが、それはGRも変わらないと思う。いいクルマだからこそ、日本のユーザーにも味わってほしいと願っている。 

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