昨年の10月末、耳を疑うような話が舞い込んできた。それはドゥカティが超ハイスペックな単気筒エンジンを開発し、市販車に投入するという話だ。スーパークアドロモノと名付けられたそのエンジンは、EICMA2023の直前となる11月初旬にハイパーモタード698モノに搭載されて発表された。そんな世界中から注目を集めた1台が、いよいよ日本でもお披露目。車両だけでなく、全バラになったエンジンと共に、メディアにその全貌が公開された。

  文/小川勤 Webikeプラス  

ドゥカティにしかできない、夢のようなシングルエンジンが登場!

 SDGSやサスティナブルが叫ばれ、多くのバイクメーカーは新しいハイスペックエンジンの開発を諦める中、ドゥカティがやってくれた。MotoGP、WSBKなど世界のレースシーンを席巻する彼ららしく、市販最強の単気筒エンジンであるスーパークアドロモノを生み出したのである。

 スーパークアドロモノの排気量は659ccで、77.7psを9750rpmで発揮。レブリミットは1万250rpmに設定されている。ボア×ストロークは116×62.4mmで、ボア×ストローク比は1.86対1の超ショートストローク。スーパークアドロとはオーバースクエア、超ショートストロークの意味だ。

 φ116mmの超大径ピストンが1万250rpm(1速のみ1万rpm)まで回る。その事実は少しエンジンに詳しい方にとっては驚愕でしかないだろう。このハイスペックの鍵を握っているのは、ドゥカティが様々な市販車やMotoGPマシンに採用するデスモドローミックというバルブ開閉機構。

 デスモドローミックは通常のバルブスプリングと違い、バルブの開閉を正確に追従でき、さらにフリクションの少なさやカムシャフトのプロファイルを低回転から高回転まで自由度高く設計できる美点を持つ。スーパークアドロモノはドゥカティにしか達成できない究極の単気筒エンジンなのである。

 ドゥカティはこのスーパークアドロモノをまずはハイパーモタードに搭載。当然、これからこのエンジンを使った様々なモデル展開が行われるはずで、そこには大きな期待しかない。

ducatimota_do698ogawasan28

 

ducatimota_do698ogawasan27

 

ducatimota_do698ogawasan04 ducatimota_do698ogawasan03      

とことんレーシーなスペックだが、扱いやすさも考慮

 1970年代までは単気筒バイクを市販化していたドゥカティだが、その後はLツインエンジンにシフトし、近年はV4エンジンも手掛けている。そんなドゥカティの新しいエンジンラインナップに2024年からシングルエンジンが加わるのである。

 僕は、こんなエンジンの登場を長年待ち侘びていたドゥカティファンの1人。そしてスーパークアドロモノは、ドゥカティの伝説のレーサーであるスーパーモノを彷彿させる。スーパーモノは1992年のケルンショーで発表され、1993年から限られたレーシングショップに供給されたドゥカティの市販レーサー。エンジンは、当時のスーパーバイクである851系エンジンの後ろシリンダーを廃した独特の設計で、シングルレースで速さを発揮。何度も市販化が期待されたが、一般のライダーの手に渡ることはなかった幻のマシンである。

 スーパークアドロモノもLツインエンジンをベースとする発想はスーパーモノと似ていて、ベースは1199や1299パニガーレのLツイン。そのエンジン形状から前バンクを廃し、後ろバンクを使っているのがわかる。クランクケースが大きく見えるのは大きなバランサーが2本入っているからで、そのバランサーを介してオイルポンプやウォーターポンプを駆動。その思想はどこまでも合理的だ。

 ハイスペックだが、一般のライダーや一般道での扱いやすさも考慮。中身はとてもレーシーだが、バルブクリアランスの点検は3万km毎と長い。ドゥカティファミリーへのエントリーモデルとの発表もあり、ハイスペックに目が行くがかなり守備範囲の広いエンジンなのだろう。

ducatimota_do698ogawasan12 ducatimota_do698ogawasan11 ducatimota_do698ogawasan14 ducatimota_do698ogawasan15

スーパークアドロモノを最初に搭載したハイパーモタード698モノ

 ハイパーモタード698モノのプロモーションビデオは、まるでバイクでダンスをしているような感じだった。ウィリー、スライド、肘擦り……もちろんプロライダーによる曲芸でもあるが、その動きはとても軽く、自由だ。

 スーパークアドロモノは楕円パイプのトレリスフレームに搭載。エンジンを車体の剛体と考えるドゥカティらしい思想で、設計はとてもシンプルで合理的。燃料を除いた重量は151kgと軽量で、電子制御も充実している。

 ハイパーモタード698モノは、698モノRVEと698モノの2バリエーションが用意され、RVEは派手なグラフィックとアップ&ダウン対応のクイックシフトを標準装備する。

 日本では5月末に試乗会が開催される予定。φ116mmの超大径ピストンが、デスモドローミックによって1万250rpmまで回る世界を想像するだけでワクワクする。

ducatimota_do698ogawasan06 ducatimota_do698ogawasan07

 

ducatimota_do698ogawasan22

 

ducatimota_do698ogawasan19 ducatimota_do698ogawasan20

 

ducatimota_do698ogawasan29

 

ドゥカティ ハイパーモタード698モノRVE&ハイパーモタード698モノ [2024]主要諸元

・ホイールベース:1443mm
・車重(燃料含まず):151kg
・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒659cc
・最高出力:77.5PS/9750rpm
・最大トルク:6.4kgf・m/8000rpm
・燃料タンク容量:12L
・変速機:6速リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-17、R=160/60-17
・価格:182万円(170万円)
()内はハイパーモタード698モノ

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/367297/

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。