先日陸運局へ足を運んだところ、2024年10月から車検に新たにOBD検査が追加されるという情報をキャッチした。既に試験的に検査を実施している陸運局もあるそうなので、その内容をご紹介しよう。

文/デグナー12(Team G)、写真/デグナー12(Team G)、写真AC

■OBDを車体に接続し車両トラブルを探し出す

OBD端子は運転席の足元に設置されている場合が多い

 2024年10月から追加されるOBD検査とは、On Board Diagnostics(車載式故障診断装置)をクルマに接続し、タブレット端末などでトラブルの有無を確認するというもの。既にカーディーラーや自動車整備工場でこのシステムを導入し、トラブルや原因特定に利用しているところは多く、それを車検時にも実施するという。

 OBD検査導入の背景は、自動ブレーキやレーンキープアシストなどの運転支援装置を搭載したクルマの増加に伴い、これらの制御システムの不具合を確認する必要が生じたため。タイヤやブレーキの摩耗と違って外観で不具合を発見することが難しい装置だけに、正常に作動しているか検査を行うのは当然の流れといえる。

 ただし、OBD車検は2021年以降に販売された新型車(輸入車は2022年以降)が対象となる。OBDの機能はそれ以前の年式のクルマにもついており、10月までのプレテスト期間は対象外のクルマも検査することがあるとのことだが、その結果によって車検不適合となることはないそう。

 OBD検査の対象内容は、排出ガス防止装置、運転支援技術、自動運転技術の3つ。運転支援技術の具体的なものにはABS、横滑り防止装置、自動ブレーキ、ブレーキアシストシステム、車両接近通報装置(ソナー)が含まれる。

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■OBD検査のメリットはトラブルの早期発見

メーターパネルに位置する警告灯。警告灯が点灯しないトラブルも発見できるのがOBDのメリット

 通常、クルマに異常がある場合、警告灯がつくが、それだけでは原因の特定は難しく、知識や経験が必要。OBD検査を行うことで、こういったトラブルの発生個所や原因を早期に特定できるようになっており、これが最大のメリットと言える。

 また、過去の故障内容も記録されるため、整備工場へクルマを持ち込んだ際にトラブル症状が消えても、履歴から原因の特定が可能。再現性の低いトラブルや警告灯がつかないようなトラブルの原因も発見できるのがOBDの魅力といえる。

 OBD検査が車検項目に追加されるとなれば、車検前整備で必ず診断することになる。一般ユーザーにとってもメリットのある追加だろう。

 実際、筆者がお世話になっている整備工場では早くからOBDツールを導入しており、従来は経験が必要だったトラブルシューティングも短時間でトラブル要因を特定できるようになったという。原因が特定できない場合は必要以上に部品交換や修理を行うことも過去にはあったそう。修理費用を抑えられる点も一般ユーザーにとってはありがたい。

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■OBD検査のデメリットは車検費用の値上げ?

電子制御システムはブレーキなどのように摩耗する部品ではないが、外観で異常を判断することが難しい

 我々一般ユーザーにとって直接的なデメリットは車検費用の値上がり。とはいえ、その値上げ幅は400円で、既にプレテスト期間も含めて2021年10月から値上がりしている。理由は車の電子制御を行なうECU情報や、保安基準を満たさないエラー情報など、OBD車検に必要なデータを管理するためらしい。

 しかし、前述のようにOBD車検の対象は、2021年以降のクルマであるにもかかわらず、それ以前のクルマも一律で値上げ料金を払うことになっている。理由は先進安全装置による事故の減少が期待され、OBD検査対象外のクルマもその恩恵を受けると考えられているからだそう。車検費用全体からするとわずかな値上げなので知らなかった人も多いのでは。

 また、飛び石によるフロントガラスの交換や、バンパーの脱着、バッテリー電圧が低下しているクルマはエラーが検出されることが多い。そのため、特にトラブルが出ていなくてもエラー検出によって車検が不合格になり、落ちる可能性がある。特にユーザー車検を受ける人は事前に設備をもった整備工場などで異常がないか確認しておいた方がいいだろう。

 いずれにしても新たな車検項目が追加されるからといって身構える必要はなく、より安全安心にクルマに乗るための措置と考え、ポジティブに捉えてよいだろう。プレテスト期間中はエラーが検出されても車検不合格とはならないが、それでも安全性確保のため、点検や整備を行っておいた方が賢明だろう。

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