自動車用ガラスで特に厳しい基準が設けられているフロントウィンドウ。国毎に異なる規格で規定されているので、専門メーカーが各国の規格を満たしたガラスを設計、製造して認証を取得しているのです。ガラスの隅には認証適合マークが白色文字で刻印されているので、愛車の窓ガラスを確認してみてください。

※本稿は2024年8月のものです
文:水野和敏/写真:ベストカー編集部、水野和敏
初出:『ベストカー』2024年9月10日号

■フロントウィンドウは合わせガラス使用が義務化

合わせガラスは2.5mm厚程度のガラス同士を透明樹脂製の中間膜を挟んで接合。大きな飛来物が衝突してもガラスを貫通しない強度を持たせた

 フロントウィンドウはドライバーの安全を守る重要な盾でもあります。以前は部分強化ガラスが使用されていましたが、1987年9月以降に生産される車両には合わせガラスの使用が義務化されました。現在市販されてる自動車はすべてフロントウィンドウは合わせガラスになっています。

 合わせガラスとはその名の通り、2.5mm厚程度の2枚の強化ガラスの間に透明樹脂の中間膜を挟んで合わせたガラスのことです。中間膜は高い強度を有したPVB(ポリビニルブチラール)と呼ばれる樹脂です。

 この中間膜を挟むことで、前走車が飛ばすチッピング(小石)などでガラスが破損した際の飛散を防止したり、衝突事故時のガラス粉砕による乗員の飛び出し防止を担っています。中間膜がクッションとなって、歩行者をはねた事故の衝撃を軽減させる効果も期待できます。

 以前使用されていた部分強化ガラスはいわゆる安全ガラスに分類されますが、強い衝撃を受けると粉々に砕け散る特性があります。一般的なガラスのように鋭く尖った破片で怪我をする可能性は低いのですが、網目状に砕けるのでドライバーの視界は奪われますし、砕けた破片が車内にも飛び散るため、やはり危険です。

 前述のように、自動車のフロントウィンドウはドライバーの身体を守る盾でもあるため、とても厳しい耐衝撃性能が規定されています。その一例を挙げてみましょう。

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■フロントウィンドウの3つの試験とは?

ガラスに厚みがあるため、特にフロントウィンドウでは傾斜が大きいと、ガラス自体の屈折による像の歪みも発生する場合がある(※写真はあくまでもイメージです)

●粉砕試験……先端部半径0.2mmのハンマーで叩き、粉砕した範囲と破片のサイズを規定

●耐衝撃試験……直径38mm、重さ227gの錘を規定点に落下させ、粉砕した範囲と粉砕の状態を規定

●耐貫通試験……直径83mm、重さ2260gの錘を規定点に落下させ、貫通の有無と損傷状況を規定

 実際はもっともっと細かく規定されていますが、フロントウィンドウで最も重視されているのが、損傷時でも外部からの飛来物を貫通させずに受け止め、車室内の人を守る性能です。

 また、フロントおよび運転席側面ウィンドウについては、可視光線透過率(色温度2856Kの光源)70%以上が必須です。いわゆるプライバシーガラス、スモークガラスのような、外から室内が見えないような着色は法規違反です(後席側窓、リアウィンドウは規制対象外)。

 さらに、日照の軽減のためにフロントウィンドウ上辺にブルーなどの着色帯が配されるケースもありますが、この位置や幅などにも厳密な規定があります。

 そして、これが重要なのですが、フロントに限らずリアガラスもそうですが、ガラスには少なからず歪みがあります。

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■ガラスの歪みはドライバーを疲労させる

自動車用ガラスは、専門メーカーが開発し、認証も取得しているのだ

 フロントの合わせガラスは5~6mm厚、サイドやリアガラスでも4~5mmの厚さがあります。

 ガラス面は真っ平らではありません。特にフロントガラスはAピラーの接合部に向けて曲面を描いています。リアガラスもデザインのスポーティ化により、最近は形状も曲面化しています。

 そして、この曲面部分やその周辺のガラスには、ほとんどの場合、相当な歪みがあります。つまり、実際は歪んだ画像を見ながら運転しているケースがあるのです。

 もちろん、各ガラスには歪みを規定する法規はあります。しかし、この法規は完全に歪みを正すレベルではなく、ガラスのデザインによっては曲部に相当な歪みがあっても法規の規制外というケースもあります。

 私もさまざまな車種の評価をしていますが、フロントウィンドウのコーナー部分(路肩や歩行者を確認する部分)から見ると車種によっては度の合わない眼鏡を掛けているような像の歪みを感じるケースもあります。

 特にフロントに比較して、リアは規定が緩いので、両サイドを回り込ませて曲面を強くした、スポーティなバックドアガラスのデザイン処理をしたクルマに乗ってルームミラー越しに後方を見ると、あたかも歪んだスクリーンに映している動画のように、目が回る感覚のモデルも最近は増えてきました。

 同じ車種でも製造のバラツキや誤差によって、歪みが気にならない車両もあれば、気になる車両もあります。

 A3サイズの紙に大きな二重丸を書いて、知人に窓の周りや、いろんな場所で掲示をしてもらい、運転席から見てください。場所により、二重丸が結構歪んで見えることがわかると思います。

 また、合わせガラスは5mm程度の厚みがあるため、平滑に作られていたとしてもガラスの屈折による影響があります。特に、モノフォルムでフロントウィンドウ下端を前進させて傾斜を強めた形状は、屈折の影響を大きく受けます。水面をより浅い角度から見ると屈折が大きく、水中が歪んで見える理屈と同じです。

 トラックやバスのようにフロントウィンドウが直立していると、屈折の影響はほぼありません。この様な視界の歪みは「運転感覚や眼精疲労に強く影響」します。

 最近の合わせガラスには多くの機能が付与されていますが、その話は次回改めてお伝えしたいと思います。

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