2014年11月に逝去した自動車評論家、徳大寺 有恒。ベストカーが今あるのも氏の活躍があってこそだが、ここでは2013年の本誌企画「俺と疾れ!!」をご紹介する。コラムでは珍しく食べ物の話題。乗っている190Eに乗り続けるべきか、話題の新型Aクラスに乗り換えるべきか。読者からの相談に徳さんの答えは?(本稿は『ベストカー』2013年8月10日号に掲載したものを再編集したものです/著作権上の観点から質問いただいた方の文面は非掲載とし、それに合わせて適宜修正しています)。

■子どもの頃からの好物

徳さんの雨のドライブで印象深かったことといえば、ゴルフIの安定感だという。1975年頃の国産車は雨の日の高速道路を100km/hで走ろうと思えば、かなりの勇気が必要だったという

 雨上がりの日曜日の朝が好きだ。雲が取れ、急速に気温が上がっていくと気分も高揚し、クルマで出かけたくなってくる。

 昼飯は外で食べようとワイフを誘って三軒茶屋のいつもの餃子屋ヘ行く。ここの餃子を気に入っているが、特別なことはない。いつものように餃子とキャベツのサラダを食べた。それで充分だった。

 元々餃子が好きで渋谷の恋文横丁に始まり、新宿、池袋などひいきの店があった。

 餃子は中国では水餃子がメインだが、日本では焼き餃子が多い。中国でも焼き餃子があり、戦後満州から引き揚げてきた人が広めたらしい。戦後すぐに渋谷の恋文横丁で流行っていたと聞くが、今では宇都宮、浜松、北九州など餃子を売りにする街が多い。

 餃子屋の厚手のフライパンでぱりぱりに焼き上げた餃子は香ばしく、食欲がそそられる。ご飯ものや麺ではなく、とにかく餃子だけが食べたくなるという時がある。

 高校まで水戸で過ごしたが、水戸には餃子がなく夏休みや春休みは餃子を食べに東京にやってきた。餃子を中心に焼きそば、モヤシ炒めなどが並び、どれも目新しかった。やがて恋文横丁にはいろいろな店ができてきた。当時としては珍しいロシア料理もあった。

 宇都宮は餃子が有名だが、私は特別いいとは思わない。同じことで浜松もすごいとは思わない。餃子は特別なことはない。それでいいのだ。

 餃子は中国料理のヴァリエーションのひとつだと思うが、本場のものとはだいぶ違う。本格中華レストランでは私は餃子を注文しない。餃子は大衆食堂のものが一番うまい。中国風の餃子でうまいと思うのは銀座に一軒ある中国料理店で、ここはいい。

 浜松でも餃子を食べるが、うなぎを食べた翌日とかで、餃子が目当てということではない。しかし、餃子屋が多いのは楽しい。

 さて話は変わるが、もうすぐ四国高知に行く。四国、高知はサカナがうまい。やはりカツオだろうか。初鰹には遅いが、うまい食い方があるだろう。また坂本龍馬の生まれたところだから、ゆかりの地もめぐってみたいと思っている。桂浜の像は有名だが地元の人しか知らない足跡があれば訪ねてみたい。もちろん酒も少しは飲みたい。

 高知といえば、路面電車が大通りを自動車と一緒に走っている。東京でも地下鉄が発達するまでは、路面電車が公共交通として活躍した。

 路面電車と一緒にクルマを走らせるには、右左折の際に電車を気にして運転することになる。レールの上はタイヤが滑るし、電停に向かう歩行者にも気を遣わなければならない。

 大きな電車があくまでも優先だ。ただし、大きい電車も後ろから来ると見えないものだ。突然大きなクラックションを鳴らされて初めて危険に気がつくという経験はヴェテランドライバーなら誰しもあるだろう。

 きっと初めて路面電車が走る街を運転すると面食らうだろう。この10年くらいでナビゲーションが発達して、目的地までガイドしてくれるが、安全運転はやはり人間がするものだ。私も気をつけたいと思っている。

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■ハイブリッドスポーツカー

アコードハイブリッドの完成度の高さは想像以上。スポーティでパワフルと評判だ。その発展型にあり、V6、3.5Lターボと3モーターを組み合せる次期NSXの走りはどんなものなのか? 大いに気になるところだ

(なぜ日本のメーカーはハイブリッドが得意なのにフェラーリやポルシェのようなハイパワーのハイブリッドスポーツカーが生まれてこないのでしょうか? という読者の方からの質問に答えて)

*    *    *

 おそらくトヨタも日産もハイブリッドスポーツカーを研究し近い将来発売するでしょう。おっしゃるように、CO2の規制は年々強化され、スポーツカーもハイブリッド化は避けられないでしょう。

 ただ、フェラーリやポルシェのようなスーパーカーとなると話は別です。ハイパワーハイブリッドスポーツカーは技術的には日本メーカーも作れるでしょうが、フェラーリやポルシェのようなブランド力がないと、販売面で成功を得ることは難しいと思います。

 その点で国産メーカーは逡巡するのだと思います。NSXはアメリカで実績があります。トヨタもレクサスブランドならあるでしょう。

 いずれにせよ、ポルシェやフェラーリと同じようにはいかないでしょう。

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■クルマで一番重視すること

(本コーナーを愛読してきたという読者の方からの、クルマを評価するうえで最も大切にされていることはなんでしょうか? トヨタ クラウンとVW ゴルフを高く評価されているのはなぜですか、という審問に)

*     *     *

 いつも読んでいただきありがとうございます。答えにするとすれば、絶対的な安定感でしょう。クルマへの信頼感といってもいいかもしれません。

 VWゴルフとトヨタのクラウンは、そうした点で他車よりも優れた存在だと思っています。

 私が評価するクルマは、足として考えていいクルマであるという点です。毎日使うものなら、やはり使いやすいものがいい。大きすぎず小さすぎず、加速もスムーズで燃費もいい。友人を乗せても不満がないことや荷物も積めること……etc。

 クルマは道具ですから、そういった使いやすさがまず大事です。例えばゴルフもクラウンも昔に比べれば大きくはなっていますが、持て余すことはありません。

 そしてもう一点、クルマにとって重要なのはファントウドライブということです。走って楽しくなくてはクルマの魅力はありません。

 年齢や性格によってどのクルマが楽しいかは違いますが、乗って楽しいクルマがいいクルマなのです。

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■三菱ファンの苦言

アウトランダーPHEV…メディアの評価も高く、受注も順調に伸ばしていただけにリコールによる生産のストップは残念。生産の再開は8月のお盆明けになる予定だ。現在も受注は行なっている

(20年にわたり三菱車を乗り継いでいる読者の方からの、アウトランダーPHEVのバッテリートラブルや、新型eKワゴンのリコールなど、問題が相次ぐ三菱自動車について、これではお客さんと直接接するディーラーがかわいそうだ、という意見に)

*     *     *

 今の三菱自動車に何があってリコール問題がおきたのかを想像すると、準備不足だったのではないかと思います。

 アウトランダーPHEVはバッテリーを製造工程で落下させたことが原因と聞いています。eKワゴンのほうはハイマウントストップランプの取り付け不備というもので、原因はどちらも単純なものです。

 だからこそ、準備不足が原因ではないかと思うのです。もしかしたら、新しい環境に直面していて、新しい何かを生み出すための皺寄せだったのかもしれません。

 三菱はこれからもっと慎重に注意深く自動車を作ってもらいたいのはもちろんですが、誰もが納得する新鮮なものを作り、失地回復してほしいものです。

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■190Eか、新型Aクラスか

ブルーノ・サッコと190E…ブルーノ・サッコはイタリア生まれのカーデザイナーでW126SクラスやW201型190が代表作品。メルセデスのカタチを決めたといっても過言ではない。ちなみにサッコプレートとはボディの側面の下部についたアンダーパネルのことで190も初期型はついていない

(私はブルーノ・サッコがデザインした1990年式190Eに乗っている読者の方からの、新型Aクラスが気になるが、190Eも手放したくない、どうすればよいでしょうかという相談に)

*     *     *

 イタリア人のブルーノ・サッコはメルセデスのチーフスタイリストとして力を発揮しました。しかし、さしものメルセデスでもイタリアのデザインは大切なのでしょう。ピニンファリーナを挙げるまでもなく、当時のイタリアはカーデザインをリードしていました。

 それでは日本はどうかといえば、何人かのデザイナーの顔が浮かびますが、サッコのようなデザイナーは見当たりません。

 例えば、ワンオフのクルマなどでは個性的なものが作れても、メーカーのアイデンティティうんぬんというようなデザインは難しいでしょう。日本のオリジンがハイクオリティな技術だけだとは思いたくありませんがね。

 さて、Aクラスか190かですが、もちろん「手放すな」です。190にとことんこだわってみてください。お金はかかるかもしれません。しかし、190は、メルセデスの歴史に名を刻むクルマで、随所にとても贅沢な作り込みがしてあります。そんなクルマを足に使えるというのは羨ましいと思います。

■徳大寺有恒の「俺と疾れ!」リバイバル特集

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