N-BOXの販売は好調だが、N-WGNは低迷している。2024年1~8月の1か月平均販売台数は2816台と、N-BOXのわずか17%あまりにとどまっている。なぜN-WGNは売れていないのだろうか、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文:渡辺陽一郎/写真:ベストカーWeb編集部、ホンダ

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■ダントツ1位のN-BOXがあるから他車種が売れない?

軽販売おいて独走を続けるN-BOXカスタムとN-BOX

 2023年10月に発売された現行ホンダN-BOXは、先代型に比べて売れ行きが伸び悩む。2024年1~8月の販売台数は、前年の1~8月に比べて約10%減った。現行N-BOXの売れ行きは、モデル末期だった先代型よりも少ない。

 とはいえ、ほかの車種に比べると依然として多い。2017年に先代モデルが発売されて以来、N-BOXは国内販売NO.1の常連だ。N-BOXの2024年1~8月の1か月平均販売台数は1万6453台に達した。

 2位は統計上、トヨタカローラの1万3796台だが、これはセダン、ワゴンのツーリング、SUVのカローラクロス、さらに継続生産型のカローラアクシオ&フィールダーなど、複数のボディタイプを合計した台数だ。そうなるとボディタイプ別の実質2位は、スズキスペーシアの1か月平均1万3576台になる。

N-WGNカスタム(手前)とN-WGN標準車

 このようにN-BOXの販売は好調だが、同じホンダの軽自動車となるN-WGNは低迷している。2024年1~8月の1か月平均販売台数は2816台だ。N-BOXのわずか17%に留まり、軽自動車では個性派とされる悪路向けSUVのスズキジムニーを下まわった。

 またホンダの軽乗用車にはN-ONEもあるが、これはさらに少なく、2024年1~8月の1か月平均販売台数は1497台だ。N-BOXの9%でしかない。ちなみにN-BOX/N-WGN/N-ONEは、同じエンジンやプラットフォームを使うNシリーズに属する。なぜN-BOXだけが販売好調なのに、ほかの車種は低迷するのか。

 この点をホンダの販売店に尋ねると以下のように返答された。

 「今はスライドドアのニーズが高いですね。そうなるとホンダでは必然的にN-BOXになります。N-BOXは価格が高いため、スライドドアが不要な場合はN-WGNを推奨しますが、そのようなお客様は少ないです。また子育てを終えてミニバンから軽自動車に乗り替えるお客様は、高い天井と車内の広々感を重視するので、やはりN-BOXが人気となります」。

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■スライドドアのニーズが高まり、新型ムーヴもついに採用

新型ムーヴもついにスライドドアを採用。発売は2025年2~3月と予想

 スライドドアのニーズについては、N-BOXの開発者も次のように述べている。

 「今の比較的若いお客様は、幼い頃からミニバンに親しんで育っています。したがってスライドドアがクルマの基本形と思っています。スライドドアを備えていない車種は、購入の候補にも入れてもらえません」。

 中高年齢層にとっては、クルマの基本形はセダンだったが、今はスライドドアを備えた背の高いボディだ。現在子育てをしている30歳のユーザーは、1994年に生まれており、1991年には初代日産バネットセレナ、1996年には初代ホンダステップワゴンが登場してヒット作になっている。幼い頃から自宅にこれらのミニバンがあった比較的若いユーザーなら、スライドドアがクルマの基本形になるのも納得できる。

2023年5月頃にディーラーで顧客に見せていた新型ムーヴのパンフレット

 そのためにダイハツでは、横開きドアのみだったムーヴに、後席側のドアをスライド式にしたムーヴキャンバスを加えた。これも人気車になり、認証不正問題でダイハツ車の出荷が停止される前は、ムーヴ全体の約70%をキャンバスが占めた。ワゴンRも同様にスライドドアを備えたワゴンRスマイルを加えて、これがワゴンR全体の半数程度を占めているようだ。

 さらにダイハツの販売店では、2023年5月に、次期ムーヴの予約受注を開始していた。認証不正問題で延期され、発売は2025年2~3月と予想されるが、この次期ムーヴもスライドドアを装着している。

 つまり全高が1600mmを超える軽自動車では、売れ筋車種の大半がスライドドアを備える。背が高いのに、横開きドアで販売の好調な軽自動車はスズキハスラーだけだ。

 最近の軽自動車販売ランキングを見ると、ハスラーは、スライドドアを装着するN-BOX/スペーシア/タントに続いて4位に入る。ハスラーは丸型ヘッドランプを備えたSUV風の外観と汚れを落としやすい内装などが特徴で、スライドドアを必要としないユーザーの需要が集中している。

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■もはやスライドドアがないと生き残れない? 

N-BOXを猛追するスペーシア。2024年5月にはN-BOX(1万4582台)を抜き1位(1万5160台)となった。スライドドアが人気の理由か

 以上のようにN-WGNの売れ行きがN-BOXの17%にとどまる一番の理由は、スライドドアを装着していないことだが、N-BOXの存在感の大きさもある。

 スズキの販売店は以下のように説明した。

 「ホンダの軽自動車と購入に迷っているお客様を見ると、ほぼすべてN-BOXです。N-WGNやN-ONEの車名は、ほとんど聞かれません。価格が140万円台のワゴンRと比べるなら、ライバル車となるのはN-WGNのはずですが、15万円くらい高いN-BOXと比べられます」。

 今では「ホンダの軽自動車を買うならN-BOX」というイメージが他社のユーザーを含めて深く根付いている。そのためにN-BOXが好調に売られてN-WGNが落ち込んだ。

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■リセールバリュー、残価率も低いN-WGN

N-WGNのコクピット

 このほか数年後に売却する時の価値も影響を与えている。ホンダの販売店では「N-BOXはN-WGNよりもリセールバリューが高い」という。そうなればN-WGNとN-BOXで迷っているユーザーがいた場合、N-BOXを推奨する場合もある。数年後に高く売却できれば、新型車への乗り替えを提案しやすいからだ。

 残価設定ローンの残価率(新車価格に占める残価の割合)も、N-BOXはN-WGNよりも高い。3年後の残価率は、N-BOXカスタムが55%で、N-WGNカスタムLは49%だ。

 残価設定ローンは、残価を除いた金額を分割返済するため、残価率が高ければ月々の返済額を減らせる。N-BOXの価格はN-WGNよりも高いが、残価設定ローンを使う場合は割高感が抑えられ、N-BOXの販売促進に役立つ。

 以上のようにN-BOXは、スライドドアを装着する人気のスーパーハイトワゴンであることに加えて、数年後の売却額も高く、残価設定ローンの返済額は抑えられる。

 さらに直近では、N-BOXの残価設定ローンには年率2.5%の低金利も実施している。商品力から販売面までN-BOXは優遇され、逆にN-WGNは雰囲気が地味で販売促進でも力が入らない。そのために売れ行きが低迷している。ホンダの商品企画担当者は「N-WGNの販売テコ入れが今後の課題」というが、ホンダがそうなるように仕向けている印象も受ける。

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■N-WGNの商品力はN-BOXに劣らない!

N-BOXと同じエンジンを搭載するが、重心が低く、車重も軽いため走っていて気持ちいい。旧型も走りのバランスに優れていたが新型はさらに進化

 ただしN-WGNの商品力は、N-BOXに劣らない。エンジンやプラットフォームはN-BOXと共通だから、運転感覚は軽自動車では上質な部類に入る。車両重量はN-WGNが70kgほど軽いため、動力性能にも余裕がある。燃費性能でも有利だ。

新型N-WGNはシートにこだわったというが、フロントシート、リアシートとも座面、シートバックとカラダがフィットして快適

 N-WGNはN-BOXに比べて全高が100mm前後低く、車内の広さでは不利だが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は両車とも2520mmで共通だ。後席の足元空間はN-WGNでも十分に広く、燃料タンクを前席の下に搭載するから荷室の床も低い。

ラゲッジは付属のボードにより上下2段に分けられていて、積み荷の大きさ、種類などにより多彩なアレンジが可能。これはかなり使える

 そのために荷室はボードを使って棚状にデザインされている。燃料タンクが前席の下にあるから、後席の下側に幅が約1mのワイドなトレイも装着され、傘や靴を収納できる。

 価格はN-WGNカスタムLが173万6900円だから、N-BOXカスタムの186万8900円に比べて13万2000円安い。ホンダで軽自動車を買うなら、まずはN-WGNをチェックして、広い車内やスライドドアが欲しいと思ったらN-BOXを検討すると合理的だ。

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