2012年10月25日にフルモデルチェンジを果たし販売開始となった三菱 2代目アウトランダー。様々な新技術が投入されたものの、注目はやはり翌年(2013年)1月に投入された世界初の4WDプラグインハイブリッドだろう。評論家陣による合評をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2013年3月10日号に掲載した記事の再録版となります)
TEXT/石川真禧照、片岡英明、松田秀士、国沢光宏、渡辺陽一郎
PHOTO/茂呂幸正
■石川真禧照の見たアウトランダーPHEV
アウトランダーのプラグインハイブリッド、PHEVの魅力は、自分でバッテリーに充電することができることにある。
バッテリーの力でモーターを動かし、EV走行するが、その時に電力が減っても、エンジンが始動し、充電をする。
それどころか、停車中にバッテリーに充電をしたいと思ったら、「チャージモード」スイッチを押せばいい。そうするとエンジンがかかり、バッテリーへの充電を開始する。80%充電ならエンジンからの充電でOKなのだ。
つまり、屋外の駐車場やマンションの共同駐車場などを借りている人、自分専用のコンセントがない人でも、アウトランダーPHEVなら所有することができるのだ。
もちろん外部充電機も利用することもできる。急速充電機での充電ならば、100%充電ができる。ドライブ中のサービスエリアやショッピングセンターのEVステーションでも充電ができる。
こうすると、充電用にエンジンを始動させなくてすむので、ガソリンが節約できるわけだ。これも魅力のひとつといえる。
■片岡英明の見たアウトランダーPHEV
アウトランダーPHEVのすばらしいところは、電気自動車をベースにしたプラグインハイブリッドであること。通常はモーターだけで走行を行なうからクリーンだし、静粛性も高い。
驚かされたのは、モーター走行の割合が予想以上に多く、走行フィールが上質だったこと。滑らかに回り、不快な金属ノイズも振動もほとんど感じ取れない。しかもモーター走行を続けようという、健気な姿勢も見せてくれる。
バッテリー残量が少なくなってくるとエンジンを始動させて発電を行なう。この場面でも切り替わったのがまったくわからないくらい自然な感覚だからビックリだ。
電力消費を抑えるバッテリーの「セーブモード」も役に立つ。
が、それ以上に感心したのがエンジンを積極的に使って発電を行ない、駆動用バッテリーに充電していく「チャージモード」だ。充電設備がないところでもバッテリー切れの心配がないのがいい。
また、回生ブレーキのレベルを6段に切り換えられるのもEVを知り尽くした三菱らしいアイデアだ、と感心した。
■松田秀士の見たアウトランダーPHEV
プリウスPHVに比べても大容量のリチウムイオン電池、こいつがリアラゲッジルーム下ではなくキャビンの中央真下に搭載されている。
重量物は中央に低く搭載する。これレーシングカーの設計と同じ論理。200kgを超える電池がこの位置に搭載されているから運動性能がいい。SUVとは思えない気持ちのいいハンドリングなんですよ。これは一度体験してみて欲しい。
そして、急速充電に対応している。今のところどういうわけか日産ディーラーの設備ではNGらしいけど、出先で買い物とか食事の合間に充電できる。また、マンション住まいの人でも近くに急速充電設備があれば購入する意味があるわけです。
さらにもうひとつ。バッテリーセーブモードというボタンがあります。これを押すと、その時のバッテリーの充電量を維持してハイブリット走行をします。
これは今電池を使いたくないけど、目的地ではEVで静かに走りたいとか、1500Wの家庭用電源を利用してアウトドアでエンジンをかけずにクッキングをしたいとか、つまりこの先での目的に応じて電池を温存できるシステム。
電池の使い方を選べるところにアウトランダーPHEVの魅力を感じます。
■アウトランダーPHEVとプリウスPHV(TEXT/国沢光宏)
私はプリウスPHV嫌いだと思われているようだけれど、そんなことありません。アウトランダーPHEVだって、仮に今より100万円高かったら厳しい評価になったと思う。そもそもプリウスPHVは、どうして無謀に高い価格を付けてきたのだろうか?
プリウスPHVを見ればわかるとおり、普通のプリウスと違うのはリアに搭載された4.4kWhの電池だけとっていい。いや、標準のプリウスも1.3kWhの電池を積むので3.1kWhぶんか。
で、ノーマルハイブリッドのプリウスよりも88万円高い(補助金使えば43万円)のである。
今や1kWhあたり4万円以下で取引されているリチウムイオン電池を、なぜ10倍近い価格で買わなければならないのか、まったく理解できません。加えてプリウスPHVの現実的なEV走行距離は20kmに満たない。この程度の距離だと、ガソリンより安価な電気を使って走るというメリットも薄い。100歩譲って凄く楽しいクルマに仕上がっていればいいけど、基本的にプリウスと同じ。
そんなことから「プリウスPHVを選ぶ理由ってナニ?」になってしまう。
普通のプリウスで充分かと。もっとわかりやすくいえば「商品として成立していない」。もし普通のプリウスより30万円高(補助金使えば15万円差)程度だったら、厳しい評価どころか、私が乗り換えている。
普及に強い強い願いを込め、思い切った価格を付けた初代プリウスチーフエンジニアである内山田さんの10分の1でいいから「売る!」という意気込みを見せてほしかった。
いっぽう、アウトランダーPHEVはクルマとしても売りたいという意気込みも文句なし! カタログデータで比較すると、プリウスPHVのEV走行距離が26.4kmに対し、アウトランダーPHEVは60.2kmと、2倍近いため電気自動車としても成立できている。
比較対象となるガソリン車のアウトランダー4WDとの価格差は、エネルギーコストでペイできてしまう。
なんたってハイブリッドなうえ、12kWhもの電池積み、補助金使えば44万7000円差。考えるまでもなく圧倒的にアウトランダーPHEVが魅力的です。
■アウトランダーPHEVは買い得なのか?(TEXT/渡辺陽一郎)
PHEVの価格は、ノーマルの2.4Lエンジンを積んだ4WD仕様に対して87.7万円(Gナビパッケージは87.8万円)高い。ただしPHEVには、ノーマルエンジン仕様に8.4万円でオプション設定されるS-AWCが標準装着され、実質差額は79.3万円に縮まる。
加えて3月8日までの登録を前提にすれば、経済産業省の補助金/43万円も交付される(2013年度の予算、補助金の金額については未定)。交付額を差し引けば、価格上昇は36.3万円だ。
これは安い。クラウンの場合、ノーマルエンジンがV6、ハイブリッドが直4で充電機能も付かないが、装備差を補正してハイブリッドは50万円高い。プリウスPHVは、ベース車がハイブリッドだから充電機能が加わるだけだが、補助金を差し引いた価格上昇がSグレード同士の比較で43万円に達する。
アウトランダーPHEVは、エンジンは2Lで、発電機としても使えるというキャラ。モーターは前後輪に備わり、4WDとして機能する。外部充電も可能で、価格上昇が実質36.3万円ならきわめて割安。
この安さは「どれだけ走れば36.3万円の差額が埋まるか」という計算からも裏付けられる。
実用燃費がJC08モード数値の85%、ガソリン代が1Lあたり145円、電気代が昼間電力で1kWhあたり18.9円とすれば、1km当たりの走行単価はノーマルエンジン車が11.9円。PHEVの充電によるモーター走行は3.8円、ガソリンエンジンの発電によるハイブリッド走行は9.2円だ。
仮にガソリンを使わず充電された電力だけで走れば、3.6万kmで差額が埋まる。逆にハイブリッド走行だけなら11万km。50%ずつなら5.5万kmくらい。これなら差額も埋めやすい。
差額を埋めるには、充電された電力に基づく航続可能距離も重要。1回の充電で走れる距離が短いと差額を埋めにくい。
この点でもアウトランダーPHEVは優秀で、リチウムイオン電池の総電力量は12kWhだ。プリウスPHVの4.4kWhの3倍近い。リーフの24 kWhと比べても半分を確保するので、充電された電力で走れる距離もJC08モードで60.2kmと長い。
機能と損得勘定の両面で最も注目すべきエコカーとなった。
■アウトランダーPHEVはこんなクルマ
アウトランダーPHEVのボディサイズは、全長4655×全幅1800×全高1680mmでガソリン搭載モデルと同じながら、12kWhという大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載するため、車重は250kg以上も重い1770~1820kg。
プリウスPHVと決定的に違うのは電池搭載量で、プリウスPHVが普通のプリウスのバッテリー搭載量を増やしているのに対し、アウトランダーは三菱が世界をリードするEVをベースにプラグイン化していて、成り立ち自体がそもそも違う。
EV、シリーズ、パラレルという3つの走行モードを備えていて、自動/手動で切り替えることができ、走りながらバッテリーを充電することができる。バッテリー切れも怖くない。
駆動方式は前後に2つのモーターを搭載する2モーター4WDで、ランエボなどで定評のあるS-AWCにより走破性とスタビリティの高い走りを両立させたSUVの新星だ。補助金は上限43万円。
■PHEVの専用装備
●フロントグリル
●リアコンビネーションランプがオールクリア
●クリスタルファイバー調の内装パネル
●給電口(正面から見て左側)
●PHEVメーター
●18インチ専用アルミ
(内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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