コンプライアンスに対する意識が高くなっている昨今ですが、クルマに関しては、守られていないルールがまだまだ多いように思います。クルマの運転で守らなければならないのは、信号や最高速度、一時停止などだけではありません。「知らなかった」や「みんなやっているし」では済まされない、よく見かける法令違反を振り返ります。

文:エムスリープロダクション
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写真:Adobe Stock、写真AC

ガソリンスタンドでエンジンかけたままで給油

 セルフサービスのガソリンスタンドで、クルマを停止させたあと、エンジンを止めることなくクルマから降り、給油を始める――。何気なくやってしまいがちな行為ですが、これは、消防法に基づく危険物の規制に関する政令(取扱いの基準)第27条6の1において「自動車等に給油するときは、自動車等の原動機を停止させること。」と定められていることに違反する行為です。

 ガソリンは、低温でも蒸発しやすく、引火点もマイナス40度と非常に着火しやすい物質です。給油口のキャップを開ければ、気化したガソリンが周辺に浮遊し、濃度が一定程度に達すれば着火してしまうおそれがあります。近年は、気化したガソリンが給油口などから漏れることを抑える対策も施されていますが、万が一着火してしまえば大事故に繋がってしまいます。

 セルフサービスで気軽に給油できるガソリンですが、危険物であるということは絶対に忘れてはならず、安全に給油するため、エンジンを止めたうえで、静電気除去パットに触れてから給油を開始する、という手順はしっかりと守らなければなりません。

ガソリンスタンドで給油中にエンジンを停止させるとことは、法律で定められている行為(PHOTO:写真AC_丸岡ジョー)

救急車両に譲らない

 救急車を含む、緊急車両に道を譲るのは「マナーの範囲」だと思っている人は多いようですが、緊急走行中の緊急車両に道を譲るのは、道路交通法で定められているドライバーの義務。道を譲らない(=走行を妨害)すれば、緊急車等妨害違反(緊急走行中の緊急車両が自車に近づいているのにも関わらず、そのまま走行を続ける違反行為)、もしくは本線車道緊急車妨害違反(緊急走行中の緊急車両が、一般道や高速道路などで、本線車道に車線変更するときや、本線車道に合流するときに進行を妨害する違反行為)となり、違反したとされれば、どちらも反則金は普通車で6000円、交通違反点数は1点が科されます。

 「緊急車両」に該当するものは、道路交通法第39条第1項において定められており、具体的には、救急車やパトカー、消防車のほか、JAFやハイウェイパトロール、電気やガスといったインフラ系の緊急作業車、自衛隊、日本赤十字社の血液運搬車、国土交通省の災害本部車や地方公共団体が所有する車両、など。いずれも緊急走行中、つまり、赤色の警光灯が点灯しているときには、道を譲らなければなりません。

緊急走行中の緊急車両に道を譲ることは、マナーではなく法律で定められている義務(PHOTO:Adobe Stock_ jaraku)

適切に車間距離をとらない

 街中を走行していると、前のクルマをあおっているかのように、車間距離を詰めて走行しているクルマをみかけることがあります。それらが本当にあおっているのか、そんなつもりはないのかは定かではありませんが、ただ、ドライバーのなかには、もともと車間距離をあまりとらないで走行することが癖になってしまっている人もいるようです。なかには「割り込まれたくない」という考えから、できるだけ前走車との間隔を詰める、というドライバーも。

 しかしながら、適切な車間距離をとらないことは、「前走車が急に停止したときにおいても追突するのを避けることができるため必要な距離を保たなければならない」と定める道路交通法第26条に違反する行為。車間距離不保持はまた、2020年6月に施行された改正道路交通法によって創設された妨害運転(あおり運転)の罰則の対象となる10類型にも含まれているため、場合によっては厳しい取り締まりの対象となる行為でもあります。

 「適切な車間距離」に関しては、時速と同じ数字(m)が必要といわれています(路面が乾燥していてタイヤがすり減ったり劣化していない場合)。時速40キロなら40メートル、時速100キロであれば100メートルですが、それを測るのは難しいという場合、「時間で測る」という方法があります。JAFが紹介している方法ですが、やり方は、基準とする地点を決め、前走するクルマがその基準地点を通過してから、自車がその地点に到達するまでの時間を数えることで、車間距離を測ります。

 時速100キロの場合は、3秒でその距離が83.3メートルとなり、4秒で111メートルとなるため、3秒から4秒以上は車間距離を確保しておきたいところ。ちなみに時間を数えるときは、「ゼロイチ、ゼロニ、ゼロサン」という具合に、「ゼロ」をつけるといいそう。運転しながら時間を数えるとどうしても早くなってしまうため、「ゼロ」をつけることで、より正確に数えることができるそうです。

適切な車間距離をとらないことは、道交法違反。また妨害運転(あおり運転)の罰則の対象となる10類型にも含まれているため、場合によっては厳しい取り締まりの対象にもなる(PHOTO:Adobe Stock_Paylessimages)

交差点で曲がる際ウインカーを出さない

 また、ウインカーを出すことなく、交差点を右左折したり、転回、車線変更をすることも交通違反です。特に車線変更をするシーンで、まったく点灯させることなく、もしくは一瞬点灯させるだけで車線変更をするドライバーは非常に多いですが、これは「合図不履行違反」であり、反則金は6000円(普通車)、交通違反点数は1点が科されます。

 ウインカー(合図)については道路交通法第53条において、「進路を変えるときは合図をし、行為が終わるまで継続しなければならない」と規定されており、また合図の時期についても、道路交通法施行令第21条において、車線変更については「その行為をしようとするときの3秒前」、右左折・転回については「その行為をしようとする地点から30メートル手前の地点に達したとき」とされています。

 ウインカーは、3秒もしくは30メートル手前から、その行為が終わるまで継続させるのが正しいやり方。ウインカーを点灯させていても、(右左折にしても車線変更にしても)ハンドルを切ると同時に点灯させる、というドライバーは非常に多いですが、それも合図不履行違反になりえます。ウインカーは自車の進路変更を周囲に知らせることで、安全に行うためのもの。しっかりと3秒30メートル手前から点灯させてください。

ウインカーは、3秒もしくは30メートル手前から、その行為が終わるまで継続させるのが正しいやり方。ハンドルを切ると同時に点灯させる、というドライバーは非常に多いが、それも合図不履行違反になりえる(PHOTO:Adobe Stock_ xiaosan)

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 守られていない交通ルールとしてはほかにも、バス停に停車中のバスの進路妨害、などもあります。こちらもマナーの範囲だと思っている人は多いようですが、道路交通法第31条において定められている守るべき交通ルール。違反すると反則金6000円(普通車)、交通違反点数は1点が科されます。

 運転免許をとってしばらくすると、忘れてしまうことはあるかと思いますが、ドライバーである以上、知らなかったでは済まされません。忘れていることが多いな、と思ったら、復習するようにしたいものです。

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