東京都品川区にある武蔵小山駅。中原街道と国道1号線の中間に位置する、東急電鉄の駅だ。歩くから長~いアーケードの商店街が賑わっている街にアクセスする、この駅を出入りするバスの現状はどんな感じだろう?

文・写真(特記以外):中山修一
(武蔵小山駅前ロータリーの写真付き記事はバスマガジンWEBもしくはベストカーWEBをご覧ください)

■東京散歩にうってつけな場所

タワーマンションが建つ武蔵小山駅前。長さが自慢のアーケード「パルム」は健在だ

 武蔵小山駅は、品川区に位置するけれどもあくまで名前は目黒駅と、横浜市港北区にある日吉駅の間およそ11.9kmを結ぶ、東急目黒線の途中駅だ。

 同地は駅を出てすぐの場所に出入口を構える、都内で最も長い全長約800mの商店街アーケードで有名。

 商店街をそぞろ歩きしつつ、駅から徒歩10分ほどの「林試の森公園」散策や、黒い温泉が出る銭湯に立ち寄るといった、ちょっとした東京散歩が楽しめる小気味良い街だ。

 地名は「小山(こやま)」であり、武蔵小山は元々は駅を表す固有名詞だった。名称が武蔵小山になったのは、駅ができた当時、栃木県に小山(おやま)駅が既に存在していたのがきっかけとなっている。

 1923年の開業当初は「小山駅」だったらしいが、読みは異なれど同じ漢字で書く駅が2箇所あるのも都合が悪いということで、区別を付けるため旧国名の武蔵を頭に付けて「武蔵小山」駅に改名された。

 この流れは一連の武蔵○○駅シリーズとほぼ同じ要領だ。ちなみに改名が行われたのは1924年4月。2024年4月に、武蔵小山駅が誕生してちょうど100年を迎えた。

■記録ホルダーな武蔵小山駅

 目黒駅から2駅目の武蔵小山には目黒線の急行が停まる。各駅停車との連絡も行う主要駅の一つで、1日あたりの利用者数は2022年度のデータで計48,334人と、目黒駅の223,329人の次に多い、目黒線では第2位の記録ホルダーでもある。

 そこまで利用者が多いのなら、かなり大きな駅を連想したくなる。駅前広場に巨大なロータリーがあって、ターミナル機能を持ったバス停群や、客待ちのタクシーが何十台も……のようなイメージだ。

 実際はどうなのか。利用者数第1位の目黒駅や、目黒線だけで見れば第3位に入る武蔵小杉駅には、相応に大きいバス乗り場が駅前に用意されている。

 1・3位がそうなら2位も恐ろしくデカい広場が鎮座しているに違いない。しかしそう思っていると、意外すぎるほどコンパクトな武蔵小山駅前の様子に拍子抜けするかもしれない。

2024年4現在の武蔵小山駅前ロータリー

 数万人単位で人の流れを毎日捌く割に、佇まいは結構可愛らしく、41階建てのタワーマンションが駅前に建った今も、下町的フリーダム感までちょっと放っていたりする……そんな雰囲気が武蔵小山のイイ所でもある。

■昔はバスなし駅だった?

 2024年4月現在、武蔵小山駅前にはロータリーが作られ、西口の階段出入口最寄りにタクシー乗り場がある。

 その隣に屋根付きのバス停が1箇所、公衆トイレを挟んで、屋根なしベンチ付きの停留所がもう1箇所ある。バス停名は「武蔵小山駅」だ。

 スペースの制約か、はたまた需要のバランスか…電車とは対照的に、バス乗り場は計2箇所と小さめ。とはいえスペース的には昔に比べ、ずっと広くなっている。

 現在は地下に線路が敷かれている目黒線武蔵小山駅付近も、2006年までは地上を走っており、線路があった分だけ駅前広場も手狭だった。

 地上時代の武蔵小山駅を鳥瞰撮影した航空写真を見てみると、確かにこのスペースにバスは入って来られないだろうな、と思えるくらい“キュッ”と締まった様子が見て取れる。

1989年と2009年当時の武蔵小山駅周辺。赤枠部分が駅前広場のスペースにあたる。拡張工事によって劇的に広くなっている(国土地理院の航空写真をもとに筆者作成)

 2009年まで、武蔵小山は言わば“バスなし駅”であり、200mほど離れた、東急バスの「武蔵小山」停留所が最も近いバス乗り場だったらしい。

 目黒線地下化後の再開発の一環で、現在のロータリーができたのは2009年頃。駅前までバスが乗り入れて来るようになったのはロータリー完成後とのこと。それから約15年、同駅前におけるバスの歴史は再開発と共に始まった、とも取れる。

■どんなバスが出ているか

 現在のところ、武蔵小山にはどんなバスがやって来るだろうか。軽く確認して該当したのが、東急バスが運行する「反11」、「反12」、「井50」、「井51」の4つの系統。

ロータリー内にはバス停留所が2つ置かれている

 武蔵小山駅を出発点にすると、まず2番乗り場を発着する反11・12系統に乗れば五反田駅まで乗り換えなしで行ける。逆方向の各バスの行き先は、反11系統が世田谷区民会館、反12系統が東京医療センターとなっている。

 また、最終バスのみ弦巻営業所へ向かう。世田谷区民会館/東京医療センター方面のバスが途中で立ち寄る主要駅の一つに、東急東横線の学芸大学駅がある。

■最近賑やかになってきたバス事情

 1番乗り場から出ているのは、井50・51系統。この系統がどこまで行くのか。意外や意外、東急線的なイメージがほとんどない、JR線の高輪ゲートウェイ駅まで直通している。途中で東急大井町線の大井町駅を通るのがポイント。土日は全便が大井町止まりだ。

1番乗り場に東急バスの大型路線車が停車中

 いずれの系統も、武蔵小山から電車で直行できない東急線の駅を経由して、同じグループ会社同士の利便性を高める役割を担っているとみた。

 一般路線バスのほか、朝の5時台と7時台に1本ずつ、羽田空港行きの空港連絡バスが出ている。武蔵小山駅から、最初に停まる空港第2ターミナルまでの所要時間は約40分だ。

 1番乗り場から出る、東急バス井50・51系統と羽田空港行きの連絡バス。実はどちらも2023年に運行を始めた新しい路線でもある。

 バス新設というアツい動きが最近あったばかりの、武蔵小山駅をとりまくバス事情が今後どのように変わっていくのか気になるこの頃だ。

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