EV(電気自動車)の普及が想定より進んでいない現在、既存の内燃エンジンと電動モーターを組み合わせたハイブリッド(HV)やその派生になるPHEVが注目されている。では、実際にはどちらを選べばいいのか?
文/長谷川 敦、写真/スズキ、トヨタ、日産、写真AC、CarsWp.com
■HVとPHEVは何が違う?
長い間クルマの動力はガソリンをはじめとした燃料を燃やす内燃エンジンが主流だったが、この内燃エンジンには貴重な化石燃料の大量消費や排気ガスなどの問題があった。
こうした問題を緩和するために誕生したのが、内燃エンジンと電気による動力を組み合わせたハイブリッドだ。
世界初の量産型ハイブリッドカーのトヨタ プリウスは1997年に市販が開始されると、特に燃費性能の高さを武器に徐々にシェアを広げ、現在のハイブリッドカー隆盛の礎になった。
初期のハイブリッドカー(HV)の主要動力は内燃エンジンであり、電動モーターの動力は発進時と全開走行の際に用いられた。
電動モーターに電力を供給するバッテリーの充電は、内燃エンジンの出力の一部と減速時のエネルギー回生によって行われる。
充電を内燃エンジンとエネルギー回生で行うHVに対し、外部電源からの充電も行えるようにしたのがPHEVだ。
PHEVとは「Plug-in Hybrid Electric Vehicle」の略であり、Plug-inは充電時の外部電源との接続を意味している。
なお、PHEVのことをPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)と呼ぶこともあるが、基本的には同じシステムのクルマを指し、メーカーによって呼称が異なっている。
PHEVの国産量産第一号もトヨタのプリウスで、2009年にまずはリース形式で登場し、その後は通常販売に以降となり、現在ではトヨタ以外のメーカーからも多数のPHEV車が販売されている。
HVに比べてPHEVはバッテリーを大型化することができ、電動モーターでの走行距離が延長された。
これによって近場への買い物などはほぼ電動のみでの走行が可能となるため、燃料代の節約に貢献する。
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■HVのメリットはどこにある?
大きなくくりでいうハイブリッドカーでは最も長い歴史を持つHVのメリットは、燃料を入れればすぐに走れてバッテリーも充電されること。
もちろん、PHEVでもバッテリー残量がなくなった場合にエンジン動力の一部や回生エネルギーを使った充電が行われるが、本来の能力を発揮させるには外部電源による充電が必要になる。
PHEVに比べればHVのバッテリーは軽く、これは車体全体の重量を抑えることにもつながり、車体各部への負担も少なくなる。
同じ車種の新車であれば、通常はHVのほうがPHEVより購入価格が低いというのもメリット。
HVのデメリットは、主な動力を内燃エンジンに頼り、電動モーターをあくまで補助用にしているためPHEVに比べれば燃料消費量が多くなることだ。
とはいえ、内燃エンジンのみのクルマと比較すれば圧倒的に優れた燃費性能を実現している。
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■PHEVが有利な点は何か?
バッテリー容量の大きいPHEV最大のメリットはEV状態での走行距離の長さだ。
走行の動力源をバッテリーのみでまかなえるのであれば、その間の燃料消費量はゼロになり、有害な排気ガスを出すこともない。
そして電動走行の割合が増えれば最終的な燃料代節約にもなるのは自明といえる。
ただし、PHEVを充電する際には電気代がかかり、同車種のHVとPHEVでそれぞれ内燃エンジンを使用した際の燃費は、バッテリーが大きいぶん車重の重いPHEVのほうが悪くなる。
同車種の最終的なパワー(馬力)は多くの場合HVよりPHEVが高くなるが、これはバッテリーが大きいために取り出せる出力も大きくなるから。
少々単純な話だが、パワー=走行性能と考えればPHEVに分がある。
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■結局のところ、どちらを選ぶのが正解?
最後は、これから新車を購入するとしたらHVとPHEVのどちらをチョイスすればいいのかを考えていきたい。
●予算を抑えたい、あるいは自宅外駐車場ならHVがお薦め
すでに紹介しているが、同一車種であれば、車両価格は一般的にHVよりPHEVのほうが高く設定されている。
そのため、予算がギリギリであるのならHVを選ぶのが無難といえる。
総合的な燃料代でPHEVが有利なのは事実だが、節約できた燃料代が車両価格の差を埋めるのにはしばらく時間がかかるため、特に内燃エンジンを多用する中~長距離の走行が多くなりそうならHVのメリットが生きる。
そして忘れてはいけないのが駐車場だ。
PHEVは休車中に充電を行う必要があるが、駐車場が自宅とは別だった場合、充電プラグを接続したままにしてクルマから長時間離れるのは難しい。
また、そもそも屋外の駐車場に電源設備がないことも多く、こうしたケースではHVを選ぶのが賢明だ。
●街乗りが多くて自宅に駐車できるならPHEV
電動モーターのみで走れる距離が長いPHEVは日常使用で真価を発揮する。
近場への通勤や買い物であればほとんど内燃エンジンを動かすことなく走れるので“燃料代”は充電用の電気料金のみと経済的だ。
自動車税においてもPHEVはHVより有利な点がある。
令和5年4月から令和8年3月まで適用される自動車税種別割のグリーン化特例はPHEVにのみ適用され、HVは適用外となる。
このグリーン化特例では、普通自動車のPHEVはHVより2万円以上税金が安くなる。
PHEVは充電を行わなくてはならないが、駐車場が自宅にあるのであれば、電源に接続するのも容易。
ただし、自宅駐車場に充電設備を設けなくてはならず、この設置費用はかかってしまう。
ここまで見てきたように、HVとPHEVにはそれぞれに一長一短がある。
だからこそ、新車を購入する場合は予算や環境を考慮に入れたうえで、自身に適したものを選んでほしい。
とはいえ、クルマ、特に乗用車は趣味性の強いものもあるので、最終的には自分の好みで選択するというのもアリだ。
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