2013年1~7月の軽乗用車販売台数のシェアは、ダイハツが31.1%、スズキが28.7%と、ダイハツがリード。とはいえ隙があれば軽トップの座を奪い返したいスズキに対して、これを死守しようとするダイハツも必死。両社抜きつ抜かれつの激戦をピックアップ!(本稿は「ベストカー」2013年9月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:編集部
■燃費の戦い
ここ数年、メーカー間で熾烈な争いが繰り広げられている軽自動車の燃費バトル。当然、ダイハツとスズキも火花を散らしてきているが、この燃費競争の口火を切ったのは2010年12月ムーヴのフルモデルチェンジ。
この現行型ムーヴでガソリン車トップとなる10.15モード27.0km/Lの燃費をマーク。これに続いて、ダイハツは2011年9月に「e:Sテクノロジー」を採用したミライースを発売し、JC08モードで一気に30.0km/Lまで燃費をアップさせた。
ところが、このわずか2カ月後にスズキが30.2km/Lを達成したアルトエコを発売。コンマ数km/L差の燃費競争を制してのガソリン車トップだ。
さらに、アルトエコは今年3月の一部改良でエネチャージなどの「スズキグリーンテクノロジー」を採用し33.0km/Lまで燃費を向上。そこに、今回ミライースは33.4km/Lまで燃費を向上させて、ガソリン車ナンバー1の座を奪還している。
ハイトワゴンの戦いは、2011年11月に改良したムーヴのJC08モード燃費27.0km/Lに対して、スズキは昨年9月に「スズキグリーンテクノロジー」を採用した新型ワゴンRで28.8km/Lをマーク。これを受け、ムーヴは2012年12月のマイチェンで29.0km/Lまで燃費を向上。が、今年7月にはワゴンRが改良され30.0km/Lの大台にまで乗せてきた。
さらに燃費競争は室内空間重視のスーパーハイト系まで広がっている。このクラス元祖のタントは昨年のマイチェンでe:Sテクノロジーを一部投入して24.2km/L、今年の改良で25.0km/Lまで燃費性能を向上。これに対してスズキは今年2月発表のスペーシアで29.0km/Lを実現している。
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■価格の戦い
手頃な価格が魅力の軽自動車だが低価格化でも両社はしのぎを削っている。スズキのアルトは現行型がバンで67万7250円~という価格を設定。
これに対してダイハツのミラバンの価格は72万円~となる。アルトバンのほうが安いわけだが、現在ミラシリーズの主力はミライースとなっていて、そのミライースは今回のマイチェンで5万円値下げを実施。ミライースの価格は74万5000円~となっていて、ライバルのアルトエコより15万5000円も安い価格から選べるようになっている。
一番売れ筋のムーヴとワゴンRも低価格化で販売台数アップを狙っている。
ムーヴは昨年のマイチェンで大幅改良しながら最大5万円の値下げを実施し、107万円~の価格を設定。いっぽうのワゴンRは今年7月のマイチェンでエントリーモデルが約1万円値下げされ、109万9350円~となっている。
■技術の戦い
技術面の戦いも熱い! ダイハツが2011年登場のミライースで「e:Sテクノロジー」を採用して低燃費化を大幅に進めると、スズキは昨年「グリーンテクノロジー」を投入した新型ワゴンRで燃費性能が一気に向上。
その次は自動ブレーキの対決だ。昨年12月のマイチェンでムーヴが「スマートアシスト」を5万円という低価格で設定したところ、スズキは今年7月のワゴンR改良時に「レーダーブレーキサポート」をさらに安い4万2000円で設定。
両者とも軽自動車メーカーとして「他社には絶対に負けられない」という意地の戦いを見せている。
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■カテゴリー別軽燃費対決、どっちのメーカーが上か?
今、激戦の燃費バトルでトップに立つ軽自動車はダイハツ車か? スズキ車? それとも他のメーカーの車種か? ジャンル別のトップ5を挙げて、燃費で勝っているのはどちらのメーカなのかを見ていこう!
●軽セダン系
ダイハツとスズキが突出した低燃費モデルで競い合っているのが、この背が高くないタイプのセダンクラス。というわけで、ここはダイハツとスズキの一騎打ちとなるわけだが、今回マイチェンしたミライースがアルトエコに0.4kmk/Lの差を付け、軽ナンバー1に返り咲いた。
そうなると、今後はスズキも黙ってはいないだろうが、全ジャンルで燃費トップを狙うといわれているホンダの動きも注目したいところ。なお、ミライースが叩き出した33.4kmk/Lが、各社開発陣の燃費目標となるのは間違いない。
●軽ハイトワゴン
人気の軽自動車でも最も売れているのがハイトワゴンクラスだ。少し前まではムーヴとワゴンRの争いだったが、今年6月に発売した日産デイズ/三菱eKワゴンがムーヴを超える29.2km/Lを達成し、クラストップに。しかし、そのわずか1カ月後に“エネチャージ”のワゴンRが改良によって30.0kmk/Lをマークしてトップの座に立った。もともと激戦のクラスではあっただけに、燃費性能も抜きつ抜かれつ状態だが、現在はスズキが一歩リード。
●軽スーパーハイト
全高1700mm以上の軽ワゴンクラス。ボディが大きいぶん、重量や空力で燃費性能には不利なクラスだが、ハイトワゴンに並ぶ売れ筋だけに、低燃費化にも力が入っている。現在のトップはスペーシア。ライバルのタントに4.0km/L、N-BOXには4.8km/Lの大差をつけている。ここでもスズキがダイハツを抑えて圧勝だ。
●軽1BOXタイプ
表の数値を見てのとおり、ほかのカテゴリーと比べて燃費がよくないのがこの1BOXタイプ。車種も現在は少なく4車種だけという状態だ。しかも、ダイハツとスズキの両社もここでは燃費に力を入れてないのか、ホンダのバモスとホビオにトップを許してしまっている状況。エブリイ、アトレーともに14.4km/Lで両社引き分けだ。
●軽ターボ車
最後はノンターボ車の燃費数値の陰に隠れて、あまり目立たないターボエンジン車のカテゴリー。結果を見てのとおり燃費は意外と接戦だ。ただ、1位は今年のマイチェンでさらに若干燃費を伸ばした27.0km/LのワゴンRスティングレー、2位は26.0km/Lのスペーシアとスペーシアカスタムと、スズキが上位3車までを独占。ダイハツのムーヴカスタムは25.2km/Lとスズキ勢より若干落ちる。
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■ムーヴとワゴンR、買うならどっち!?
ダイハツとスズキの一番の売れ筋がムーヴとワゴンR。ワゴンRが7月のマイチェンで30.0kmk/Lの燃費を実現したのだが、今買うならこの2車、どっちがお薦めなのか?
* * *
燃費は同等で、ノーマルエンジンの動力性能はワゴンRが少し勝る。ムーヴは実用回転域の駆動力が若干弱い。逆に走行安定性はムーヴ。前後の足まわりにボディの傾きを制御するスタビライザーを装着し、旋回時、直進時ともに安定性が高い。乗り心地は両車ともに少し硬めだ。若干ムーヴが快適だが、点数に差が生じるほどではない。
内装の質感はムーヴが勝り、後席の座り心地はワゴンR。さらにワゴンRは後席のスライドが左右独立式で、収納設備も豊富だ。ムーヴは先のマイチェンで、助手席前側のアッパーボックスを省いている。
割安感はワゴンRのFXリミテッド。エアロパーツも装着して価格は抑えた。
これらを総合的に判断すると、買い得度はワゴンRが勝る。
ただしムーヴの安心感が伴う運転感覚はかなり魅力的。特にクルマ好きのユーザー、あるいはバイパスの通行など高速走行の多い使われ方では、動力性能の不満が伴うもののムーヴの価値が際立つ。用途に応じて選び分けたい。
(TEXT/渡辺陽一郎)
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■ダイハツとスズキの販売合戦、その熾烈な最前線のいまは?
スズキとダイハツの販売台数差が接近してきた。2013年1~7月の累計では、ダイハツが上まわるもののその差は2.7万台。2012年の7.6万台差に比べると大幅に縮まった。
要因はスズキがワゴンRを昨年9月一新してスペーシアも今年3月に投入したこと。ダイハツもタントのフルモデルチェンジを今年10月に前倒しする。
それでもスズキが8~12月にかけて、1カ月にダイハツを6000台上まわれば逆転が可能。クルマに詳しくないユーザーは「販売首位」の安心感で購入を決めることも多いため、ダイハツは今の首位の座を死守せねばならない。そのため、ディーラーオプションのサービス、値引きなどが拡大している。
ただし、ダイハツは工場の稼働率を優先してミライースの在庫が増え、販売会社が届け出を行なって「未使用中古車」に卸していた時期があった。そのため、中古車価格が値崩れを起こし、下取り査定額も低下した事態が起こっている。これらも販売台数に含まれるので、統計数字はアテにしにくい面がある。
いっぽうで、スズキも一時期は販売が下降していた。その要因はホンダの追い上げもある。とはいえ、スズキは再び販売首位を狙う動きが見られ、今後はダイハツとの販売合戦がさらに激しくなるはずだ。
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