いくつかの違反を続けて重ねてしまうと、免許の停止や取り消しとなってしまうこともある交通違反点数制度。なかには一度やっただけで免許取り消しとなってしまう、“一発アウト!”な違反も!?

文/井澤利昭、写真/写真AC

■累積違反点数がゼロであっても一発取り消しはありうる!?

駐車違反や一般道での30km/h以下のスピード違反など、違反点数が6点未満となる比較的軽微な違反、いわゆる「青切符」の場合、科される行政罰は反則金のみとなるため、それだけで免停や免許取り消しとなることはないが、それが累積して15点以上になると、免許取り消しの処分となる

 交通違反での取り締まりや、クルマでの事故を起こしたドライバーへのペナルティとして科される違反点数。

 この点数は違反を繰り返すごとに累積していき、一定の点数に達してしまうと、クルマの運転に必要な免許証の効力を一時的に停止されてしまういわゆる「免停」や、免許自体を取り消されてしまう「免取」などの行政処分を受けることとなる。

 一度の違反で加算される点数は、シートベルトの装着義務違反や無灯火といった比較的軽微な違反で科される「1点」から、酒酔いや麻薬などを使用した状態で運転した場合の最大「35点」まで、違反の重さに合わせて、点数も大きくなっていく。

 ちなみに、免許不携帯や泥はね運転などといった一部の違反では、反則金のみで違反点数が加算されない場合も。

 こうした交通違反による「基礎点数」に加え、それが原因によって事故を起こしてしまった場合は、負傷者のケガの程度や事故の責任の度合いによって、2~20点の「付加点数」が加えられる。

 違反点数は、基本的に過去3年間分の合計で計算されるが、一度違反をした後、1年間無事故無違反であった場合や、過去2年以上無事故無違反だったドライバーが3点以内の違反をした場合、その後3カ月間無事故無違反であれば点数の累積がなくなるといったいくつかの特別措置があるため、よほど頻繁に違反行為を繰り返さなければ、免許の停止や取り消しにまでは至らない。

 ところが交通違反のなかには、今までの累積点数に関係なく、一発で免停や免許取り消しとなるケースがあるという。

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■一発で免許取り消しになる条件とその違反とは?

 では、前歴がなく累積点数が0点のドライバーであっても、一発で免停や免許取り消しなってしまう違反とはどんなものだろうか?

 まずその前に知っておきたいのが、免停や免許取り消しとなる累積点数の基準だ。

 付加点数のない通常の交通違反だけの場合は、違反点数が6点で30日、9点で60日、12点で90日、それぞれ免許が停止となり、15点になるといよいよ免許取り消しの行政処分が下される。

 交通違反というと真っ先に思い浮かぶであろうスピード違反(速度超過違反)の場合、最も重い50km/h以上オーバーの違反であっても12点のため、90日の免停にこそなるものの、それだけでは免許取り消しにはならないというワケだ。

 一発で点数が15点に達する違反には「酒酔い運転(35点)」「麻薬等運転(35点)」「共同危険行為等禁止違反(25点)」「無免許運転(25点)」「妨害運転(25または35点)」などがあり、「酒気帯び運転」も呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25mg以上となれば25点となるため、その対象となる。

 ここで気をつけなければならないのが、違反点数が13点であるアルコール濃度0.15mg以上0.25mg以下の「酒気帯び運転」であっても、他の違反と合わさることで15点以上となり、免許取り消しとなってしまうことがある点だ。

 例えば、それだけなら3点の「25km/h以上30km/h(高速道路では40km/h)未満の速度超過」や「携帯電話使用等(保持)」であっても、「酒気帯び」と判断されれば違反点数が一気に15点まで引き上げられるため、一発で免許取り消しとなってしまう。

 なお、この15点という基準は、前述のとおりあくまで前歴がないドライバーに限った話。

 過去3年以内に免停や取り消しなどの処分を受けたことのある前歴者の場合、その回数が1回であれば10点、2回であれば5点、3回以上で4点と、基準となる点数が引き下げられ、さらに厳しいものとなってしまう。

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■免許停止と免許取り消し処分の違い

免許の取り消し処分を受けた人が、「欠格期間」」満了後、再び免許を取得するには「取消処分者講習」を受講する必要がある。講習は、管轄の運転免許センターで予約をした後、指定された日時に運転免許センターや指定講習機関(教習所)で受けることになる

 免許の取り消し処分とは、文字どおりクルマを運転する資格である運転免許証をはく奪されてしまう、交通違反や事故に対して下される最も重い行政処分だ。

 一時的に免許の効力が停止され、その期間が過ぎれば再度クルマを運転する資格を得られる免停処分とは大きく異なり、免許を取り消された人がクルマを運転するためには、いま一度、免許を取得し直す必要がある。

 とはいえ、違反をしたその場で免許証を没収されるということはなく、(あくまで法律上ではあるが)その処分が確定して執行されるまではクルマを運転することが可能。

 正式な取り消しの処分は、後日、公安委員会によって行われる「意見の聴取」手続きにおいて、違反時の状況および事実の確認や、それに関する質問、違反したドライバー自身の言い分などの聴取が行われた後に決定される。

 この手続きによって、違反の内容に対して免許取り消しが妥当と判断されれば「運転免許取消処分書」が発行され、その日から違反者はクルマの運転ができなくなる。

 ちなみに「意見の聴取」手続きの結果、違反したドライバー側の主張が認められ、免許取り消しが適切でないと判断された場合は、180日以下の免許停止などに処分が軽減されるケースもあるという。

 また、免許の取り消し処分後は「欠格期間」が設けられるため、一定期間、免許の再取得ができなくなるのも知っておきたいポイント。

 この「欠格期間」は、比較的軽微な「一般違反行為」であれば1年~5年、酒酔い運転やひき逃げといった重大な違反である「特定違反行為」の場合は4年~10年と、前歴や違反の内容によってその期間が大きく異なってくる。

 もちろん「欠格期間」が満了しない限り違反者は免許を取ることができず、もし免許の再取得前にクルマを運転すれば「無免許運転」としてさらに厳しく処罰されることになる。

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■「欠格期間」満了後、免許を再度取得するには?

 さて、無事「欠格期間」が終われば、すぐさま免許を再取得できるかといえば、世の中そう甘くはない。

 取り消し処分を受けた人が再度免許を取得するには、まず「取消処分者講習」を受ける必要があるからだ。

 この「取消処分者講習」は適性検査や座学、運転技能診断など、2日間・合計13時間に及ぶもので、過去に免許取り消しなどの処分を受けた人が、違反行為を再度繰り返さないための指導的な意味合いを持つもの。

 「一般講習」と、飲酒運転等の違反をした人を対象とした「飲酒講習」に分かれており、受講後交付される「取消処分者講習受講修了証」を受け取ることで、再び運転免許を取得できる資格が得られることとなる。

 この「取消処分者講習」は「欠格期間」中であっても受講することができるものの、発行される「取消処分者講習受講修了証」の有効期限は1年間であるため、それを過ぎての免許の取得には再度の受講が必要となる。

 その後の免許取得の手順は、一般と同様、指定自動車教習所に通うか、運転免許試験場での一発試験を受けるかのふた通り。

 更新時の有効期限切れによる“うっかり失効”などでは適用される学科試験や技能試験の免除といった救済措置はないため、通常通りの手続きや試験などを受けることとなる。

 免許の取り消しとなれば、クルマの運転ができなくなるのはもちろん、その後の再取得のための時間や費用もバカにならないだけに、まずはそうならないためにも、日頃から交通ルールをしっかりと守ることが何より重要。

 特に、酒酔いや酒気帯び運転は一発免許取り消しに直結することはもちろんのこと、他人の命を奪うこともある非常に危険な行為であるだけに、絶対にやめるべきだ。

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