販売台数が落ち込んでもまたもちなおし、首位にまでのぼりつめてしまう不死鳥のようなクルマ、トヨタ ルーミー。編集部内では驚異の存在として語られ、評論家陣の評価も二分する特異点カー、トヨタ ルーミーを徹底分析する。

※本稿は2024年10月のものです
文:渡辺陽一郎、片岡英明、ベストカー編集部/写真:西尾タクト、トヨタ
初出:『ベストカー』2024年11月10日号

■それはあたかも不死鳥のごとく

車内の広さと収納スペースの多さは好印象、対して乗り味は「う〜ん……」という、評価に困るクルマ、トヨタ ルーミー。評論家陣と編集部員が分析する

 編集部内でも「なんなのだ、このクルマは!?」とざわつかせるクルマがある。名前はトヨタルーミーという。

 「えっ? なんで今、ルーミー?」と思う読者も大変多いと思うので、ワケを説明すると、まず販売台数が頭抜けて多いこと。一旦落ち込んでも、また不死鳥のごとくランキング首位に返り咲くほどの人気がある。

 一方で、評論家陣ではルーミーの評価は二分しており、「なぜ、(悪い意味で)あのルーミーが1万台も売れ続けるのか」と議論の的だった。

 そんな今だからこそ、改めて分析しようじゃないか。“化け物”トヨタルーミーの魅力とやらを!

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■デビル・渡辺陽一郎の辛口審判「販売好調も不満だらけ」

評論家のなかでもルーミーの評価は人による。渡辺陽一郎氏と片岡英明氏の評価を聞いてみよう

 販売の好調な車種は、多くのユーザーが使っているから優れた商品と判断できるが、ルーミーには欠点も散見される。

 内装では後席の座り心地が不満だ。座面の柔軟性が乏しく、骨盤の支え方もよくない。座面の角度も水平に近く、腰のサポート性が乏しい。

 直列3気筒1Lエンジンは、実用回転域の駆動力が低い。4000回転を超えて加速が活発になるため、発進して時速40km前後までは、速度上昇が鈍い。

 そこでアクセルペダルを深く踏むと、CVTの無段変速が一気に行われ、エンジン回転が急上昇する。ちなみにこのエンジンは、車両重量が900kg前後のパッソ&ブーンに搭載することを想定して開発されたが、ルーミーの車重は1100kg前後だ。エンジンの負荷が大きく、動力性能も不足して、ノイズも拡大する。

 パワー不足を解消するためにターボも用意したが、頻繁に使う2500回転前後で粗いノイズが聞こえる。開発者は「開発段階では、ノイズの低減に力を入れたが、時間切れになって発売に踏み切った」と述べた。

 ステアリングホイールを回し始めた時の反応も鈍く、小さな操舵角では車両の進行方向が変わりにくい。

 例えば路上駐車している車両を避けるため、進路を少し変える時も気を使う。走行安定性も不満だ。危険回避を想定した車線変更を行うと、ステアリングを回し始めた段階でボディが大きく傾く。車線変更を終了した時は、逆方向に大きく揺り返して、後輪の接地性と車両全体の安定性が低下しやすい。

 プラットフォームの設計が古く、ルーミーのボディが想定以上に重く、高重心になったことも原因だ。

 乗り心地も時速40km以下の低速域を中心に粗い。14インチタイヤ装着車は、指定空気圧が260kPaと高いこともあり、上下に揺すられる。以上のように欠点が多いため、購入時にはライバル車のソリオと乗り比べて判断したい。

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■エンジェル・片岡英明の良心審判「考え抜いた使い勝手!」

運転するとどこか頼りない走りをするが、言うほど悪くも感じない

 ルーミーが登場したのは今から8年前の2016年11月。以来、2年ごとにテコ入れしながら現在に至っている。驚かされるのは7年目となる2023年でも月に平均8000台を超える販売を記録し、今も好調に売れ続けていることだ。

 人気の秘密はいくつか考えられる。最大の魅力は、全長が3700mmと短いのに驚くほどキャビンが広いことだ。全高を1735mmと高く取り、室内高1355mmを確保した。だから子どもなら立ったまま乗り込めるし、座っても頭上は余裕たっぷりである。

 フロントシートへの乗り込みはステップに足を乗せやすいなど、小柄な人でも乗り降りしやすい。また、ダッシュボードを低くセットしているから開放感あふれ、運転席からの見晴らしがいいのも美点だ。見切りがよく、運転しやすい。小回り性能に優れるのもセールスポイントのひとつ。

 後席はそれなりの広さだが、フロアはフラットで、膝もとにも充分な余裕がある。スライドドアにオート機構もあるから、開け閉めもラクだ。秀逸なのがドアに設置したアシストグリップで、お年寄りも子どもも使えるようにグリップの太さを変えている。カップホルダーなどの収納スペースが多いのもうれしい配慮。

 フルフラットモードにすれば車中泊も可能なくらい広々とした空間が出現するのも美点だ。ラゲッジルームの拡大は、コツと力を必要とするが、畳んでしまえば荷物を効率よく積める。ボード裏面の防汚シートも自転車などを積む時には重宝するだろう。

 安全装備も進化させ、安心感が増した。運転支援のスマートアシストの機能を充実させているし、カスタム系グレードには全車速追従機能付きオートクルーズコントロールも装備する。

 メカニズム面では1.5Lエンジン並みの力強い走りを見せる3気筒ターボが魅力だろう。燃費はそれなりだが、多人数乗車でも元気に走ってくれる。価格差は12万円ほどだし、内装もよくなっているから、候補に入れても損はないと思う。

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■編集長イイジマも改めて試乗「ブレーキが怖いけど……」

運転席に座るイイジマと、後席には高身長のイイボシが着座。座るなり、ゆとりある空間に感動していた

 試乗車はNAで69ps。「大人5人のフル乗車じゃ走らないだろうなー」と思ってたら、不満のない加速を見せてくれました。もちろんキツめの上り坂だと苦しそうにエンジンが唸りを上げますが、ま、問題ないでしょう。

 フル乗車で下りながら曲がるようなコーナーだと「ムリはしないほうがいいかな」という雰囲気がクルマから伝わってきます。が、運転自体ムリな走りは禁物なんで、問題ないでしょう。

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■副編集長ハヤシも改めて試乗「あれ、フル乗車で意外と走る?」

走り出してからステアリングを切ると不感帯の広さに驚いたハヤシ。ただしパワー感は街乗りならOKとした

 実はルーミー初試乗だったりするワタクシ。今回はNAということで、どんな非力さなのかとドキドキしながらハンドルを握ったわけですが、いや、思ったより出だしはいい。フル乗車で急傾斜の登坂では、床までペダルを踏む必要があるものの、街中だけなら必要十分かと。

 ただ、ハンドルを切る時の中央不感帯が大きく、ツーテンポくらい車体が遅れて動くので、急な操作は要注意です。

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■アシスタント・モチヅキが後席に試乗「『支持されること』も重要な性能では!?」

後席フル乗車で試乗したモチヅキ(奥側)。さすがに男三人が後席に座れば狭苦しくもなるが、致し方なし

 初めて乗りましたが、聞きしに勝る乗り心地でした。でも今さらハードウェアの仕上がりでルーミーを酷評するのはほぼ意味がないです。市場のニーズをタイミングよくつかむことは、走りのいいクルマを作るのと同じくらい重要だからです。それこそがルーミーの功績でしょう。

 技術や機能だけでクルマの優劣は決まらない。クルマ作りの面白さを改めて考えさせられた一台でした。

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■分析結果「確かに、よし悪しあれど、コレは売れるわ!」

「私がモテるワケ、わかった?」とでも言いたげなルーミーの後ろ姿

 販売台数トップの座をほぼ守り続けてきた(いろんな意味で)モンスターマシン、トヨタ ルーミー。デビル渡辺氏とエンジェル片岡氏と編集部員が試乗した結果、走りの面で不満は残るものの、足として使いやすい、運転しやすいクルマだという意見は、大筋一致した。

 この使いやすさこそが、ルーミー最大の武器。あとは走りさえ変われば……。新型、大いに期待だね!

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