2024年11月6日、愛知県長久手市のトヨタ博物館で、ベストカーのファンクラブ「ベストカーMate」向けの見学ツアーイベントが開催された。世界のクルマの進化と文化をたどる博物館でどのような見学ツアーとなったのか、当日の模様についてお届けしよう。

文、写真:ベストカーWeb編集部

■トヨタ博物館の布垣館長自らガイドツアーコンダクターに!

まずは見学前に布垣直昭館長によるレクチャーを控室で開催

 当日、参加したBC Mate会員は17名。この日のガイドツアー役を買って出てくれたのは何とトヨタ博物館の布垣直昭館長(兼富士モータースポーツミュージアム館長)だ。これはBC Mateのツアーならではの特別な計らいだったのだ。

 今回、見学ツアーの舞台となったトヨタ博物館は、トヨタ創立50周年事業の一環として1989年4月に開館した博物館。トヨタが運営しているのだが、ガソリン車がこの世に誕生してから約100年の歴史をテーマとしており、世界中のメーカーから誕生した19世紀~20世紀のクルマが体系的に展示されている。

まずはトヨタ初の量産型乗用車の「トヨダAA型乗用車」の紹介からスタート

 最初にクルマ館1階の「シンボルゾーン」からガイドツアーが始り、1989年4月の開館にあわせて当時の図面を基に忠実に再現されたトヨタ初の生産型乗用車「トヨダ AA型乗用車」(1936年 レプリカ)と、建設当時の挙母工場のレリーフ等の展示を紹介。

 続いて2階では、「自動車の黎明期から日本車の誕生」をテーマとした展示へ。ドイツで誕生した世界初の実用的なガソリン自動車といわれる「ベンツ パテント モトールヴァーゲン」(1886年 レプリカ)をはじめ、1950年代までの世界の自動車技術、文化の歴史を8つのゾーンに分けて展示・紹介について布垣館長から熱いレクチャーが行われた。

布垣館長からの詳細なレクチャーを熱心に聞き入っているBC Mate参加者の皆さん

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■自動車の黎明期について

2階の自動車の黎明期のゾーン展示を詳細に布垣館長がガイド。その弁にもますます熱がこもっていく!

 人や動物の力に頼らず自ら走行する「自動車」は、18世紀にフランスで造られた「蒸気自動車」にはじまり、続いて電気自動車が登場。ガソリン車は最後発ながら、急速な性能向上などにより、やがて自動車の主役となったことが、現代のモビリティ変革期の状況に似ていることを参加者に説明する布垣館長。

 19世紀末~20世紀初頭(明治中期)、蒸気、電気、ガソリン自動車がほぼ同時期に外国から日本に持ち込まれ、それを手本として数年後には早くも日本人の手で自動車が造られることに。しかし、日本にはまだ産業的な基盤が整っておらず、本格的な生産にまでは至っていなかったことを参加者たちは改めて展示から実感していたようだ。

日本人が初めて見たガソリン自動車「パナール・エ・ルバッソール」を紹介

 20世紀に入る頃には自動車の基礎技術の多くが確立され、性能が飛躍的に向上するとともに外観も馬車的な形状から離れ低くスマートなものとなったのだが、それを裏付ける展示の見せ方に参加者も興味津々の様子。

 そして、大衆のための自動車造りを目指したアメリカのヘンリー・フォードは、1908年にT型フォードを完成。簡素な構造ながら充分な性能を備え、安価なことから、アメリカのみならず世界の多くの国に影響を与え、人々にクルマのある生活をもたらしたのだが、実際の展示車を前に布垣館長はその意義を強調していた。

T型フォードを前に詳細な説明を布垣館長が実施

 続いてのゾーンは、1920年代のモデル解説へ。航空機開発で磨かれたエンジン技術や軽合金技術が自動車にもたらされ、飛躍的な発達期を迎えたのだが、このゾーンでは欧米各国の自動車メーカーが競って開発した豪華車や高性能車の仕上がりについてレクチャーが行われた。

 続いてのゾーンでは、1920~1940年代の日本の自動車量産時代が幕を上げた展示へ。日本車も1920年代半ばからフォード、シボレー(GM)と競合しない小型車の量産が始まり、ダットサン(日産自動車)が一定の成功を収めるなか、日本政府による国産自動車メーカー育成の動きの中で、日産、豊田自動織機(トヨタ)が本格的な自動車生産に挑んだことの意義を示す展示についても細かく説明された。

1920~1940年代の日本車量産に向けた時代への展示ゾーン

 と、ここまでですでにガイドツアー開始から1時間超。自動車の歴史への深い造詣を持つ布垣館長ならではの熱心な説明に参加者たちも時間を忘れ、皆一様に聞き入っていたのが印象的だった。

■後半のガイドツアーは駆け足で!

1950年代のアメリカ車のトレンドだったテールフィンについても触れていた

 続く3階の展示ゾーンでは、1950年代から現代に至るまでの世界の自動車の進化と課題への取り組みなどを5つのゾーンに分けて展示・紹介しているのだが、とにかく布垣館長のガイドツアーは参加者たちを飽きさせない熱量で展開。

 写真にもあるようにキャデラック シリーズ60スペシャルに始まって世界中に影響を与えたテールフィンスタイルは、1959年のキャデラック エルドラド ビアリッツでピークを迎えたことも付け加えていた。

経済成長とともにモータリゼーションの発展がいよいよ日本でも爆発!

 生活水準の向上により、多くの人々がテレビ・冷蔵庫・洗濯機など“三種の神器”を手に入れるようになり、加速的に経済成長が進み、庶民が自家用車を持つことが現実となる時代がいよいよ到来した展示ゾーンへ。

トヨタ2000GT(左)とトヨタスポーツ800(右)

 こちらのゾーンでは高性能でスタイリッシュなクルマや、高級なクルマが続々誕生した年代へ。日本でも、米国勢の後を追うようにスポーティなクルマを発表するとともに、独自の技術開発も進んでいったことを象徴するトヨタ2000GTやヨタハチの展示が。

展示車は1970~1980年代のゾーンへ

 そして、通常では絶対に見ることのできないバックヤードの見学も今回のBC Mateツアーでは今回にかぎり見ることができた。思いもかけないレアなモデルがズラリと並んだバックヤードの展示に参加者たちも興奮していた。

通常では見ることのできないバックヤードの見学も特別に許可された

 実際の映画『007は二度死ぬ』(1967年公開)のシーンで使われた劇中車であるオープン仕様のトヨタ2000GTやレーシングカーのトヨタ7なども見ることができ、これには参加者も大喜び!

 ここまでで、すでにガイド予定時間の90分を超える盛りだくさんの内容。最後は参加者たちから布垣館長への質疑応答コーナーが控室で行われた。最後にトヨタ博物館入口前で布垣館長と一緒に参加者全員で記念撮影をして終了。

 今回、平日の開催であったが、親子4人家族で参加した人に話を聞いたところ、「今回の企画は家族で参加できたので、いい思い出になりました。またぜひ参加したいです!」と喜んでいたのが印象的だった。

 次回以降のイベントについてもベストカーMateのウェブサイト上で告知していくので、まだの方はぜひ無料登録を!

※ベストカーMateのウェブサイトはこちら

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