2021年3月にボルボが出した「2030年までに全車EV化」という驚きの宣言。その直後にメルセデスベンツも追従し、世界は全EV化に向けて転がり出した。しかしベンツは宣言を撤回、ボルボもトーンダウンした。そして残るは……我々にも身近なあのメーカー!?
※本稿は2024年9月のものです
文:国沢光宏/写真:メルセデスベンツ ほか
初出:『ベストカー』2024年10月26日号
■理想から現実に立ち返ったヨーロッパ勢
2021年3月のこと。突如ボルボは「2030年までにすべてのボルボ車をEVにする」と宣言した。内容と言えば“エンジンを積まないクルマしか売らない”という完全な電気自動車だけにするというもの。
続いてメルセデスベンツも2021年7月に「2020年代の終わりまでに販売するすべての車種を電気自動車にする」とブチ上げた。
先進国で決めたカーボンニュートラルの目標は2050年。新興国を含む世界全体で考えたら、エンジン車の需要が残ることなど容易に想像できる。なのに20年も早く全廃するというのだから驚く。
ただ当時の「二酸化炭素を出さないようにする!」という熱気は驚くほど。ホンダまで「2040年までに全世界でEV/FCV販売比率を100%」と宣言した。
しかし2023年あたりから電気自動車の普及率に陰りが出始める。中国を除き、世界規模で厳しい状況。電気自動車に主軸を移したVWなど、生産ラインを休止しなければならないほど。
最初に「エンジン車を止めるのを止めます」と白旗上げたのがメルセデスベンツ。BMWを含めたドイツ御三家は完全に流れを読み間違えた。
そしてついにボルボも新しいコミットメントを出した。曰く「2030年まで90%をEVとPHEVに。残る10%はハイブリッド」。極めて妥当な販売比率だと思う。そもそもカーボンニュートラルの終点は2050年。まだ25年少々ある。
加えてゴールポストの位置が変わることだってありえるだろう。急いで絶版宣言を出すこともない。
今やすべて電気自動車にするという公約を残すのはホンダのみ。メルセデスベンツやボルボが方針変更したのだから、もはや意地を張ることはない。ボルボのように今のパワープラントを継続すればよかろう。
2050年に向け、世の中の動きを見ながら電気自動車とPHEVの比率を増やしていけばよい。自分だけ突っ走ったって意味なし。
電気自動車戦略は周囲の状況を見ながら、流れに乗ればいいと思う。もちろんすべての乗用車が電気自動車になるという方向性は変わらないと思う。ゴールの日付が不確定なだけだ。柔軟に電気自動車とPHEV、ハイブリッドのモデルミックスを変化できる生産&開発体制を持っておくことが重要。
そういった意味からすれば、ホンダは移行期に重要な存在になっていくだろうPHEVをやっていない。エンジン車からイッキに電気自動車へ切り換えようとしている。ボルボよりホンダのほうが心配すべき状況だと私は考えます。
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