「日本で売れている(軽を除く)クルマ」ときいて、思い浮かべるのは、トヨタの「カローラ」や「ヤリス」、「シエンタ」「アルファード」などですが、トヨタの「ルーミー」も爆売れしているクルマ。現行モデルは2016年のデビューと、新しいモデルであるとはいえず、派手な広告もなく、どちらかというと地味な存在ながら、2024年度上半期(4月~9月)の登録車販売台数ランキングにおいても、カローラ、ヤリス、シエンタ、ノートに次ぐ5位(42,891台)にランクインするなど、人気を維持しています。ルーミーはなぜこれほど人気なのでしょうか。

文:吉川賢一/写真:TOYOTA、SUZUKI

軽とコンパクトカーのいいとこどりをした「こういうのでいいんだよ」クルマ

 両側スライドドアを備えた、全長3.7mほどのハイトワゴンタイプのコンパクトカーであるトヨタ「ルーミー」。ダイハツ「トール」のOEM車であり、スバルからも「ジャスティ」として販売されています。

 軽自動車にも採用されるプラットフォームから、全幅と全長をストレッチして車内を広げることで、軽よりも居住性と収納性を向上させ、ドアの厚みも増やして衝突安全性も強化されたルーミーは、軽自動車のよさを維持しながら弱点を補うことで「ちょうどよい性能」にまとめられているのが特徴。このおかげで、最小回転半径4.6mという圧倒的な小回り性能をもちながら、驚くほど広い車内空間を実現しています。

コンパクトサイズだが背が高いルーミー。後席スライドドアは乗り降りや荷物を積載する際に便利。回転半径も軽自動車並みの4.6mなので取り回しが抜群によい
驚くほど広くてウォークスルーも可能なインテリア。収納も多く、後席に小さな子供を乗せる機会が多い子育て世代には、ベストなコンパクトカー。小さなお子さんならば車内で立って着替えることも可能
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コスパのよさに加えて、比較的短納期であることも

 もちろん、現代のクルマに求められる装備も充実しており、予防安全機能スマートアシストは全車標準装備で、全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロールも搭載。この内容で、販売の中心となっているGグレード(2WD)は、なんと税込175万円と、令和のクルマとは思えない価格です。

 燃費は18.4km/L(Gグレード 2WD)と、トヨタのほかのクルマと比較すると見劣りはするものの、十分な性能をもち、エンジン排気量が1リッター以下なので、毎年4月1日の所有者に課せられる自動車税(種別割)が、(BEVを除いては)登録車としてはもっとも安い2万5000円。1.5リッターのヤリスは3万500円ですし、ルーミーと直接ライバルになるスズキ「ソリオ」も1.2リッターなので3万500円と、ルーミーは、コンパクトカーのなかでも維持費が安く、こうしたことも、ルーミーが選ばれる理由となっていると思われます。

 もうひとつ、ルーミーが選ばれる理由として、比較的短納期であるということもあると思われます。ルーミーは、コロナ禍真っ只中だった2020~2021年も登録台数は10万台を超えるなど、安定供給ができていました。大阪にあるダイハツ工業池田工場生産だったことも関係しているでしょう。筆者の周りでも、ルーミーへ乗り換えた人がいますが、広さと見た目が気に入ったことと、納期が1~2ヵ月で早かったことが決め手だったそうです。

2020年11月にフルモデルチェンジをしたスズキソリオ。ベストカー調査だと、2025年1月早々に、フェイスリフトを伴うマイナーチェンジが予定されている

「トヨタが販売している」というのも選ばれる理由か!??

 ただもちろん、ルーミーもいいところばかりではありません。NAエンジンはパワー不足を感じますし(アクセルペダルを踏み込むと煩い)、横風で大きく横に流されそうになることもあり、高速直進性も劣ります。ヤリスやカローラ、プリウスといったグローバルカーと比べると話題性も低く、地味な存在でもあります。

 ただ、クルマに何を求めるのかは、人によって違います。前出の筆者の知り合いも、筆者が「見た目や納期だけでなく、乗り心地やロードノイズなどの質感も知っておいたほうがいいよ(長く乗るならばいずれ気になる所だから)」というと、「トヨタ車だから気にしていない」とのこと(ダイハツのOEMであることは気にしてなかった)。

 筆者などは、走りや乗り心地、燃費、運転支援機能といった走行性能や、細かなデザインの良し悪しについてうんちくを述べたくなるものですが、そうではない人にとっては、「信頼できるメーカーが販売しているクルマが、欲しいときにすぐ手に入る」ことのほうが重要なのでしょう。

 ルーミーに関しては、本家のダイハツ「トール」が、2024年10月末をもって現行モデルの生産を終了し、11月以降は在庫販売のみとする旨がアナウンスされていますが、衝突安全などの法規対応を行った改良モデルの受注が2024年末ごろには開始されるとのこと。ただ、ルーミーに関しては、トヨタ販売店に問い合わせたところ、すでに商品改良後モデルの受注を開始しており、今後も途切れることなく生産を続けるそう。現時点(11月中旬)の納期は2ヶ月ほどだそうです。

 ちょうどいいサイズ感で使い勝手もよく、コスパにも優れて短納期、しかも信頼できる「トヨタ」が販売しているルーミー。ただ、次期型でもこれが維持できるのかは気になるところで、特に電動化によって価格が上昇してしまわないかは懸念事項。はたしてルーミーは次期型でも「ルーミー」でありつづけることができるのか!?? 今後に注目です。

大きな開口のバックドアをもつルーミー。リヤシートを前方にダイブイン格納すれば、自転車やカーペットなどの大きな荷物も積載が可能だ

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