「子どもの頃からの夢だったバスの運転士になりたい」「運転が好きという強みを仕事に活かしたい」。そんな思いを持つ方のために愛知県豊橋市ではこの秋、「路線バス・タクシー運転体験会&会社説明会」を開催する。転職に不安がある方のために、面接までのさまざまなサポートを用意しており、安心して挑戦できる環境を整えているとしている。

文:古川智規(バスマガジン編集部)
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■今年で6年目の支援事業

イベント開催のチラシ

 公共交通は、市民生活を支える重要な移動手段である一方、路線バス、タクシー運転士の担い手は全国的に不足しており、豊橋市でもその状況は変わらない。そこで、豊橋市では2019年度から公共交通を維持確保するため、路線バスやタクシーの運転士を目指す人の支援を始めている。

 支援の内容は、バスとタクシーの運転士に興味がある人と市内の交通事業者との橋渡しとなる、会社説明会の開催や面接までのサポートだ。この春の募集では、本事業で過去最多となる、バスに2名、タクシーに5名の計7名が採用されました。数としては少なく見えるが、ごく狭い地域内での事業としては決して無視できない人数だろう。

■説明会には市内のバス・タクシー会社4社が参加

最近は単なる説明会ではなくセミナー同時開催も多くなっている

 2024年11月27日(水)に、とよはし産業人材育成センターで行う「路線バス・タクシー運転体験会&会社説明会」では、豊鉄バス、豊鉄タクシー、 東海交通、ヨシダ交通の4社から話が聞ける。さらに、教習コースを使用して実際の路線バスやタクシーを運転できる体験会も企画している。

 春募集参加者からは「運転士として働くイメージが持てた」「体験してさらに興味がわいた」などと好評だったようだ。また当日は、キャリアコンサルタントによる就職支援セミナーや、市役所による事業説明会も行う予定だ。

■希望者にはキャリアデザイン研修・ビジネスマナー講習でサポート

長いミスマッチ状態が続くバス運転士不足問題

 面接に向けたサポートも充実しているという。転職活動に不安がある人や就職活動から遠ざかっている人も、安心してチャレンジできるように、希望者はキャリアデザイン研修等を受けることができる。運転士としての仕事を理解した上で、自身の経験や強みを再確認して面接に臨める。

 また、言葉づかいやお客さまとの接し方などを学べるビジネスマナー講習も用意している。サポートを受けずに、すぐに面接を希望する人にはスピードコースもある。いずれにせよ、参加者の意向に即した内容だ。

 路線バス・タクシー運転体験会&会社説明会の募集期間は11月22日(金)まで、開催日時は2024年11月27日(水)の13:00〜、15:00〜の2回。会場は、とよはし産業人材育成センター(愛知県豊橋市神野新田町字シノ割1番地3)、参加対象は、普通自動車免許(AT限定可)所有者、または1年以内に取得見込みの方。ただし、運転体験は免許所有者のみが対象。参加費は無料だ。

■根本的な解決に向けて

魅力だけで働ける時代は終焉なのか

 バス運転士不足の問題は根本の解決が待たれるが、とは言えそれを待って募集をしていたのでは本当に手遅れになってしまう。募集、待遇の改善、行政の支援、様々な立法措置等々の条件がそろって初めて誰もがチャレンジしたい仕事になるのは論をまたない。

 どの業界も人手不足なので、結局は待遇の良い会社で働こうとするのは人情だ。事業者の多くが民間企業である限りは利益を出さなければならないので、赤字を垂れ流してまで路線を維持する義理はない。

 しかし、公共交通機関という点において一種のボランティアを強いられている感は否めない。その感覚と実際との隙間を埋める努力をそれぞれの立場でしなければ解決できない問題なのかもしれない。

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