カタログやメーカーの公式WEBサイトなどにあるバイクのスペック(主要諸元)表のなかでも、特に、多くのライダーにとって気になるのが「最高出力」と「最大トルク」ではないでしょうか? いずれも、そのモデルが搭載するエンジンのパワーに関する数値ですが、そもそも何を意味し、どんな違いがあるのでしょうか?
文/平塚直樹最高出力や最大トルクってどんなもの?
バイクのスペック表を見ると、必ずといっていいほど表記してあるのが最高出力と最大トルクです。
近年、スペック表上で、
最高出力は「kw[PS]/rpm」
最大トルクは「N・m[kgf・m]/rpm」
といった単位で表記されています。
たとえば、ホンダのCBR650R E-クラッチであれば、
最高出力70kW[95PS]/12,000rpm
最大トルク63N・m[6.4kgf-m]/9,500rpm
といった表記になっています。
ここで疑問なのは、最高出力はkWとPS、最大トルクはN・mとkgf-mと、それぞれ2つの単位で表記されていることです。
これらのうち、最高出力のkW、最大トルクのN・mは、近年使われるようになった国際規格です。一方、日本では、ちょっと前まで最高出力はPS、最大トルクはkgf-mで表記することが一般的でした。
特に、筆者のように昭和の時代からバイクに乗っているベテランライダーなどには、昔からのPSやkgf-mの方が長年の慣れもあり、イメージしやすいですね。そのため、日本メーカーでは、そうした昔からのユーザーに対応するため、現在、両方の数値をスペック表上に表記しています。
ちなみに、これらは以下のように換算できます。
出力:1PS=0.7355kW
トルク:1kgf・m=9.80665N・m
また、各数値の最後にあるrpmはエンジン回転数のことで、それぞれの数値が何回転で発生するのかを表しています。
最高出力と最大トルクの密接な関係
これらのうち、最高出力は、ざっくりいえば「そのエンジンは、最高でどのくらいの力が出せるか」を現したもの。いわば「馬力」のことですね。また、最大トルクとは、エンジンのクランクシャフトが生み出す「回す力=トルク」の最大値を意味します。
では、なぜ、これら2つの数値をスペック表に表示するのでしょうか。それは、出力とトルクが密接な関係にあるからです。
出力とトルクの関係は、よく自転車にたとえられます。自転車の場合、「ペダルを踏み込む力」がトルクです。踏み込む力、つまりトルクが大きいほど自転車はより加速しますよね。それと同じで、バイクの場合も、トルクは加速性能と大きな関係があるのです。
一方、出力は、トルクにペダルの回転数をかけたものです。「出力=トルク×回転数」という数式で表すことができます。そして、出力が大きいほどスピードを出しやすくなるため、速度と大きな関係を持つ指標が出力ということになります。
最高出力と最大トルクが出る条件とは?
こうした関係性から、ざっくりといえば、
最高出力は「バイクがスピードを出すための力の最高値」
最大トルクは「バイクを加速させるための力の最大値」
といった感じの意味合いになるといえます。
ただし、いずれも、そうした力が常に出ている訳ではなく、前述した「rpm=発生回転数」のときに最も大きな数値が出ることになります。
しかも、たとえば、同じ排気量の同系エンジンを搭載していたとしても、バイクの特性などにより、あえて数値を変える場合もあります。
たとえば、ホンダのアフリカツイン系1082cc・水冷4ストローク直列2気筒の場合。同系のエンジンを積みながらも、アドベンチャーモデルの「CRF1100Lアフリカツイン」とクルーザー系の「レブル1100/T」では、出力やトルクは以下のように違います。
【CRF1100Lアフリカツイン】
最高出力75kW[102PS]/7,500rpm
最大トルク112N・m[11.4kgf-m]/5,500rpm
【レブル1100/T】
最高出力64kW[87PS]/7,000rpm
最大トルク98N・m[10.0kgf-m]/4,750rpm
最高出力、最大トルク共に、数値的にはCRF1100Lアフリカツインの方が大きくなっています。でも、レブル1100/Tの方が、発生回転数はいずれも低い設定。そのため、レブル1100/Tは、より低速域で出力やトルクを発生し、発進時などの加速がスムーズであることが予想できるます。対して、CRF1100Lアフリカツインは、高回転時のパワフルさをより味わえる設定となっている感じですね。
このように、これらの数値を見ることで、同系エンジンでも、バイクの種類や特性に合わせて、セッティングを変えていることが分かります。そして、こうした違いから、各モデルがどんな乗り味や個性を持つのかが予想できるのです。
ともあれ、最高出力や最大トルクは、そのバイクがどんな走りやエンジンフィールを体感できるのかを知るための指標といえる数値です。愛車を新しく購入する際などには、ぜひ参考にしてみて欲しいスペックのひとつだといえます。
*写真はイメージです
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https://news.webike.net/bikenews/421345/
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