メーカー自らがディーゼル車を改造したルノー・トラックスの「レトロフィットEVトラック」に、当局からようやく公道走行の許可が出た。改造車は新車より15%ほど安く、EV導入の壁となっているコスト面から普及が進む可能性がある。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Renault Trucks

煩雑な認証プロセスも課題? メーカー自身による改造BEV

ルノー・トラックス「D」のレトロフィットBEVトラック

 循環型社会と脱炭素で先進的な取り組みを進めているフランスのルノー・トラックスは、トラックメーカーとしてフランスで初めてレトロフィット(既存車の改造)による電動トラックの公道認証を取得した。

 市販のディーゼル車をメーカー自らがバッテリーEV(BEV)に「改造」したもので、ベース車両はルノー・トラックスの12トン単車トラック「D」だ。改造車はルノーのリースパートナーであるクロービス・グラン・パリを通じて、パリ空港で免税店を運営するエクスタイム社に数年間リースされる。

 12トン内燃エンジン車からBEVへの改造自体はノブンテック社との協力やフランス環境・エネルギー管理庁の資金援助を得て2023年末までに完了していたが、この度、同種の事例としてフランスで初めて公道走行の許可が下りた。

 メーカーはこうしたプロセスの経済性、環境性、事業としての実現可能性を評価することにしている。

 レトロフィットによりディーゼル車をBEVに改造した車両で、現行の規則・規制に準拠するためには多くの認証プロセスを経る必要があった。マシン自体が完成したあと、ルノートラックスのチームは「ISO17025」認定機関で一連の厳格な試験を実施した。

 例えば国連規則である「R100」は公道走行が可能なEVに搭載するリチウムイオン電池の安全性能に関するもので、採択国では試験を実施し適合することが義務付けられている。もちろんブレーキシステムなどの徹底的なチェックも必要だ。

 技術承認に続いて、実施した試験に関するレポートを含む包括的な行政書類を提出し、当局から許可が出たのが2024年11月21日だった。こうした複雑な手続きを終えて、ルノー・トラックスはフランスで初めて公道走行可能なレトロフィット電動トラックの認証を取得した。

 改造に約1年、手続きに約1年で、コンバージョンのプロセス全体では合計2年がかかっている。

改造BEVトラックは普及するか?

改造自体はかなり前に終わっているが、公道走行のための認証プロセスに約1年を費やした

 エクスタイム社にリースされたこの改造トラックは、同社の倉庫と空港免税店のシャトル運行に使用される。改造トラックの航続距離は250kmで、こうした用途にはうってつけ。空港の脱炭素にも貢献する。

 今回のレトロフィットによるBEVトラックへの改造は、ルノー・トラックスにとっては実験室のような役割を担っている。規模を拡大し商用化する前に、その効率や生産性を評価するという役割だ。

 ルノーの中古トラック及び都市物流担当副社長のローラン・コルピエ氏は次のように話している。

「こうした車両を実際の運用条件下で使用することで、『電動改造』というソリューションの経済性と実用性を検証することができます。今回のパイロットプロジェクトは、自動車の利用による環境への影響を最小限に抑え、天然資源を保護するという弊社の取り組みの好例です。このトラックは、ルノー・トラックスが推進している循環型経済のアプローチを完璧に体現しています」。

 BEVトラックの導入において、最大の障壁となっているのがその車両価格の高さとされる。生産財、つまりお金を稼ぐための道具であるトラックは、それによって生み出される利益がコストを上回らなければ普及が見込めない。

 レトロフィットBEVは新車のBEVを導入するより最大で15%ほどコストが低くなるため、環境面と経済面の両方でメリットがあるという。

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