2024年9月、トヨタとBMWは、カーボンニュートラルの実現と水素社会の構築に向けて、水素分野でのパートナシップを強化する基本合意書を締結したと発表しました。具体的には、乗用車の燃料電池自動車のラインナップ拡大を見据えて、「第3世代の燃料電池システムの共同開発」や「インフラ拡充の取り組み」を行うとのことです。

 マルチパスウェイでカーボンニュートラルに立ち向かうトヨタと、同じく全方位戦略を敷いてきたBMW。両社が水素技術でコラボするとなると、期待したいのが、あのスポーツモデルの次期型への搭載。ひょっとすると、FCEVではなく、水素エンジン車となることも期待できるかもしれません。

文:吉川賢一/写真:TOYOTA、BMW

早くから水素への取り組みを始めていた両社

 トヨタとBMWの環境技術における中長期的な協力関係は、2011年ごろから始まっており、これまで、燃料電池の基礎研究をはじめとした環境技術やスポーツカーなどの開発を、10年以上にわたって続けてきました。

 今回発表となったのは、第3世代燃料電池システムを、両社のモデルに搭載すること。その第一弾モデルとして、2028年に、BMWが量産型FCEVの生産を開始するそうです。おそらく、BMWは次期型7シリーズや5シリーズに搭載し、トヨタは次期クラウンシリーズの一部に搭載していくのではないでしょうか。2社が協力してFCEVを増やすことは、開発・製造コストの低減が期待でき、大きなメリットです。

 FCEVのこれまでを振り返ると、トヨタが2014年12月に、世界初の量産水素燃料電池車の初代「MIRAI(ミライ)」を発売し、その2代目が2021年12月に登場、2023年11月には新型クラウン(セダン)FCEVも登場しました。トヨタはさらに、モータースポーツに水素エンジンを投入するなど、水素エンジンの技術にも磨きをかける取り組みを行っており、東京オートサロン2023で登場したマニュアル仕様の水素エンジン(実験用)のAE86は、水素燃料電池に怪訝な顔をしていた往年のクルマファンに「その道もあったのか!!」と、大いなる期待を抱かせてくれました。

 BMWも水素自動車への取り組みは早く、2006年にV型12気筒の水素エンジンを積んだE65型7シリーズ「HYDROGEN 7」を発表、世界数ヵ国でリース販売をしていました。このエンジンはガソリンも使えるモードを備えており、ガソリンで500km、水素で200kmの走行が可能でした。同じシリンダー内に、ガソリンと水素を噴霧する方式は、当時大いに話題となりました。

トヨタとBMWの中長期的な協力関係は10年以上にわたって続けられており、燃料電池をはじめとした環境技術やスポーツカーなどの開発を続けてきた
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ただ、現時点ではFCEVのほうがメリットは大きいとのこと

 そこから10数年が経過した2023年7月、BMWは水素燃料電池車の実証実験車「iX5 Hydorogen」を発表します。トヨタから調達した燃料電池セルを使用して、ミュンヘンのBMW水素コンピテンス・センターで生産した燃料電池システムを搭載したiX5 Hydorogenのスペックは、最高出力295kw(401ps)、0-100 km/h加速は6秒未満、最高速度180km/h以上。2本の水素タンクを搭載し、一充填走行距離(WLTPモード)は504kmと発表されています。

 BMWファンとしては、かつての水素エンジンのほうが魅力的ではありますが、BMWは、FCEVのパワートレインは、昨今急増したバッテリーEV用の部品との親和性が高くコスト低減ができることや、水素を燃焼させるエンジンよりも燃料電池のほうが効率よく、航続距離が長くなるなど、現時点ではFCEVのほうがメリットは大きいと説明しています。

2023年7月にBMWが公開した実証実験車、BMW iX5 Hydrogen。燃料電池システムはBMW水素コンピテンス・センターで生産するが、燃料電池セルはトヨタから調達

水素エンジンの可能性を探っているトヨタとコラボすれば、実現はありえる!!

 そうはいっても、やはりクルマ好きとしてはエンジン音がほしいところ。そこで期待したいのがトヨタの技術です。トヨタは、水素エンジンの可能性を実車研究しており、現時点はBMW側が水素エンジンに着手したという情報はきこえてきませんが、BMWがその気になれば、「プレミアム水素エンジン」が誕生する可能性だって大いにあり得るのではないでしょうか。

 BMW の名称「Bayerische Motoren Werke(バイエリッシュ・モトーレン・ヴェルケ)」=ドイツ語で「バイエルン州のエンジン工場」が示す通り、BMWにはエンジン屋のプライドがあるはず。水素エンジンの存在をよりプレミアムなものとして、水素エンジン車をハイブリッド車やFCEV、BEVよりも上位に位置付ける、というものよいと思います。

液体水素を燃料として搭載した水素エンジンカローラ。2023年5月のスーパー耐久シリーズ富士24時間レースで初参戦。水素エンジンの実用化に向けて、さらに鍛えるべく耐久レースへの参戦を続けている

次期Z4/スープラは直6水素エンジンか!??

 いまわかっているのは、第3世代燃料電池システムを両社のモデルに搭載し、その第一弾を、2028年にBMWが生産開始する、ということだけですが、トヨタとBMWのコラボなのですから、筆者は、その翌年あたりに、直列6気筒の水素エンジンを搭載した新プレミアムカーが登場することを期待しています。要するに次期Z4/スープラです。はたして筆者の期待通りとなるのか、トヨタとBMWからの続報が楽しみです。

2019年5月に日本市場に導入されたGRスープラ。卓越したハンドリングと安定したコーナリング性能を持ち合わせた、後輪駆動のピュアスポーツカー。BMW Z4と兄弟車だ

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