トーヨータイヤは、小型EVトラック専用リブタイヤ「NANOENERGY(ナノエナジー)M151 EV」と小型トラック用リブタイヤ「DELVEX(デルベックス)M135」を本年6月1日(土)より、国内市場で順次発売すると発表した。新製品の特徴は!? その詳細をお届けしていこう。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/トーヨータイヤ・フルロード編集部
さまざまな物流課題を足元から支える新製品
ご存知の通り物流業界は、Eコマースの拡大成長を受け小口配送等をはじめとした物流需要が増加するいっぽうで、物流の働き方改革関連法の施行により、輸送力確保のための人材確保が喫緊の課題となっている。
また、環境面では、温暖化などの影響により、突然の気候変化や大雨・大雪といったものが頻発。そのいっぽうで環境負荷低減を目指したCO2排出量削減目標が定められ、小型トラック等を主体としたゼロエミション車両の普及も始まっている。
このような背景のもと、トラック輸送を支える商用タイヤのニーズも変化してきており、低燃費性能はもちろん、天候や積載状況に左右されることなく安全に停まれる性能に加え、小口配送のストップアンドゴーやモーター駆動のEVトラック等の用途に耐え得る耐摩耗性能を高次元で両立することが求められてきている。
トーヨータイヤでは、トラック・バス業界を取り巻くこうした課題・環境を踏まえ、このほど耐摩耗性能と低燃費性能を両立し、ウェット性能も満たした小型トラック用リブタイヤ「DELVEX M135」と、低電費性能に加えてトラクション性能と耐摩耗性能を両立させたEV小型トラック「専用」のリブタイヤ「NANOENERGY M151 EV」を開発した。
DELVEX M135の採用技術と特徴
まずM135は、ナノレベルで分析・解析・加工・素材設計を行なうタイヤ材料技術基盤「ナノバランステクノロジー」を活用した「耐摩耗LT専用コンパウンド」をトレッドキャップゴムに採用し、耐摩耗・耐偏摩耗性能とウェット性能を両立させ、トレッドベースゴムには低燃費コンパウンドを採用することで低燃費性能を向上させた。
耐摩耗LT専用コンパウンドは、従来のポリマーに比べて枝分かれの少ない耐摩耗ポリマーと、従来より小粒径のカーボンを採用した新配合で、新ポリマーは変形しても切れにくく、カーボンは微小サイズに変更することでポリマーとの接点が増え強固になり耐摩耗性能が向上するという特徴がある。
また新たなトレッドパターンの特徴としては、センター部に大型センターブロックを配置し、転動時の過度な動きを抑制し低燃費性能と耐摩耗性能を向上。さらにショルター部分には大型マドと接地端サイプを配置して旋回時などに発生する横力の影響を緩和し耐摩耗性をアップさせている。
これによりM135では従来製品「M134」比で、転がり抵抗を16%低減、推定摩耗ライフは32%向上した。
またセンター部分をワイドにすることで接地面積を増やし、積車から空車の状態まで、幅広い領域でグリップ力を発揮できるようになったのも特徴だ。M134との比較では、一番不安定になりやすい空車時で3%、積載時では6%接地面積の指数がアップした。
このほか、M135は縁石の接触などからタイヤサイドを保護するサイドプロテクター、ベルト耐久性、耐摩耗・耐偏摩耗性能に寄与する高剛性スチールベルト、ベルト・ビード耐久性、耐偏摩耗性能に寄与する低ひずみプロファイルなどが採用されている。
なお、M135の展開サイズは、2024年6月に8サイズ、さらに8月には8サイズが追加される予定だ(サイズの詳細は画像ギャラリーで紹介)。
NANOENERGY M151 EVの採用技術と特徴
いっぽうNANOENERGY M151 EVは、トラック・バス用タイヤとしては初のEV「専用」タイヤで、BEVの欠点である短い航続距離、重いバッテリー搭載による荷重増、モーター駆動による走り出しに発生する最大トルクなどから、低電費性能や耐摩耗・偏摩耗性能、さらに低ノイズ・静粛性能、低メンテナンスの向上を目指して開発したタイヤとなっている。
最大の特徴はEV専用非対称パターンを採用し、トレッド面の左右で異なる縦溝のリブタイヤとブロック状のオールウェザータイヤのパターンを組み込み、両者のメリットを融合させることでEVトラックの特性に対応させているところだ。
リブタイヤは剛性が高く低電費性能や耐摩耗性能・耐偏摩耗性能、低静粛性能に優れ、オールウェザータイヤではブロックのエッジ効果によりトラクション性能やグリップ力に優れる特徴がある。
トラックのフロントタイヤは旋回の影響により外側から偏摩耗しやすくなるが、M151 EVを正しく装着すると、フロントタイヤの外側にリブ形状が来るようになり耐偏摩耗性能が高められるようになる。いっぽうリアのダブルタイヤには、モーター駆動の高トルクに負けないトラクション性能・グリップ力が必要であることから、ブロックパターンが外側に配置される(下図参照)。
さらに、一番外側のリブ形状を幅広にし剛性を確保することで偏摩耗を抑制したほか、ブロック形状部では先述のM135と同様、センター部分を幅広にすることで接地面積を確保、空車時でもトラクションを発揮できるようなパターンが採用されている。
またタイヤ材料の配合には、ナノバランステクノロジーを活用した「耐摩耗NCP(ナノコンポジットポリマー)配合」が行なわれている。
NCPとはナノバランステクノロジーの1つ「ナノ加工」を活用した技術で、従来の加工法では固形のゴムと粉体の充填剤を混ぜ合わせるものだが、新たな加工法では液体の原料ゴムと液体の充填剤を混ぜ合わせて、脱水処理を行なっている。
この工程を加えることで原料ゴムと充填剤が均一に混ざり高分散化されたフィラー状態の配合を作ることができ、フィラーが接触する際のエネルギーロス発生を抑制(耐摩耗性能や低電費性能に寄与)する。
このNCP技術に加えて、変形時の破壊を抑制する耐摩耗ポリマーとその結合を高める高活性耐摩耗カーボンを配合したものが、新配合の耐摩耗NCP配合で、これにより低電費性能と耐摩耗性能を高次元で両立させた。
これらの新技術を取り入れることで、M151 EVは低メンテナンス性能重視型リブタイヤ「M125ZB」比で摩耗ライフが21%向上、転がり抵抗でも有利な純リブタイヤに対して2%低減させることができた。
なお、6月に発売を予定するタイヤサイズは1サイズのみで、具体的には三菱ふそうのEV小型トラック「eキャンター」の一部モデルに適合した215/70R17.5 123/121Jとなる見込みだ。
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