バスマガジン本誌ではおなじみのバスメーカー、オノエンジニアリング。バスに関わる情報提供と豊富な話題にはいつも驚かされる。新車試乗を始め、業界動向や各種多岐に渡る事業展開には目が離せない会社だ。このほど珍品中の珍品、英国製ビンテージバスを輸入したという!!
(記事の内容は、2023年11月現在のものです)
執筆/近田茂 写真/バスマガジン編集部 取材協力/ONO ENGINEERING
※2023年11月発売《バスマガジンvol.122》『バス作りの新勢力から』より
■超ビンテージバスなのにおしゃれさで溢れている!!
今回、新たに輸入された新着車両はキャブオーバータイプ、フロントエンジン・リヤドライブの中型車。その名も“ベッドフォードVAS214”。ベッドフォード・ボクソール・モーターズ社製品で、今から半世紀以上も前の1967年型だ。
ビンテージ物にはあまり縁のない記者にとって、知識&情報不足のせいなのか、車両を目前にすると何だかとても新鮮な印象。かえってモダンな雰囲気すら覚えた。
角を丸めたボディには青と白のツートーンカラーに細い赤のペンシルストライプとクロームの直線モールがあしらわれていた。
丸目の2灯式ヘッドライトに同じく丸目のサブライトと大きなラジエターグリルの存在は、いかにも優しげな表情を醸し出す。
左右にセパレートされたフロントウインドーは平面ガラスが使用され、ダイレクト駆動方式の電動ワイパーが、ガラス面に直接マウントされている。
当時装着車が増え始めた、後付け感たっぷりな黒いスチールバンパーもフロントマスクの表情演出にひと役買っている感じだ。
車体全長は7315mm。軸距は4146mm。リヤオーバーハングの長いフォルムが特徴的で、前軸荷重が2722kg、後軸荷重は5897kg。
資料によると、いわゆるトラックシャシーにバスボディを架装したタイプで、梯子型シャシーは同社大型バスと同じ厚みと幅を持つ鋼材を使用。前後共にリーフリジットアクスル方式で懸架され、リアにはダブルタイヤが装着された。
中折れ扉から室内に入ると、いかにも60年代の雰囲気。床材や座席などはすでにリニューアルされていたが、張りのあるクッションにハイカラなシート表皮。背中合わせのベンチシートや横向きシート、半円形の木製テーブル。ウインドピラー部には一輪挿しの花瓶まで配置され、上品でお洒落な佇まいだ。
■エレガントなムードが英国車らしいが……半世紀オチという現実には抗えない!?
その一方でまるで飾りっ気のない運転席はいかにも古めかしい。インストルメントパネル右下に配置された、各種スイッチが連なるパネルにも実に懐かしい部品が並んでいた。
運転席左側の車体中央部には大きな膨らみが鎮座し、そのカバーを外すと中には直列6気筒の3519ccガソリンエンジンが顔を出す。最高出力は100hp/3600回転、最大トルクは25.4kgm/1200回転を発生。トップが直結となる4速マニュアルミッションがマッチされている。
早速試乗。シートポジションを前方にスライドすると、後方より伸ばされた左脇のシフトレバーは、身体よりもやや後方で操作する感覚。操作ストロークや遊びもそれなりに大きい。ATが常識的になった現在のバスと比べると違和感アリアリの運手席だ。
3ペダルの踏力は重く、細身の4本スポークステアリングハンドルの操舵はさらに強烈な重ステ。パワーアシストの無い大型車両の扱いがどんなだったかを思い知らされることになる。
ウインカーの戻しが手動式であることの注意を受けてスタート。スムーズにかつ低速域からしっかりとしたトルクを発揮するストレートシックスは、なかなか素性の良い柔軟で粘り強い回転フィーリングを発揮してくれる。
ただし絶対的なパワーは乏しいので市街地走行でも常に全開加速が強いられる。冷却系やブレーキ系、リヤのホーシングはレシオを少し高める方向で一新されているそうなので、とりあえず安心して目一杯のポテンシャルを発揮して走らせた。
ギアのワイドレシオは想像以上で、ダブルクラッチを踏むなどしてしっかりと間合いを取ってシフトするも、セカンドへのシフトでは時にギア鳴りを発生。メカを労りつつ上手に走らせることの難しさを痛感。操舵の重さやエアコンレスもあって大汗をかいていた。
気付いてみればウインカーの戻し忘れを頻発。現在のクルマの運転が如何に楽なものに進化しているかを思い知らされた。ちなみにこのバスは、キッチンカーへ改造が施されるそう。どれほどお洒落な移動店舗に変身するのか、改めて取材してみたいものである。
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