日産は2024年4~9月までの中間決算は営業利益、最終的な利益ともに90%を超える大幅な減益となり、経営の立て直しに向けて、全世界で生産能力を20%削減し、9000人の人員削減を行う方針を明らかにした。まさに待ったなしの状況だが、苦境だからこそなくしてはいけないシンボル的なクルマがある。名門、スカイラインセダンである。はたして苦境のなかスカイラインセダンは存続するのか? クロスオーバーだけが生き残るのか、迫ってみたい。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、日産
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■アメリカ市場での苦戦、中国市場でも現地メーカーとの価格競争に勝てない
日産自動車の内田誠社長は「中国での価格競争が激しさを増している新エネルギー車市場での伸び悩み、さらにメイン市場でもあるアメリカ市場についてもハイブリッド車、プラグインハイブリッド車の需要の高まりに苦境を強いられている」と業績悪化の要因について述べている。
日産は純ガソリン車をなくし、ガソリンを燃やしてエンジンを動かし、バッテリーを充電することで、電気自動車のように外部電源を必要としなくても走行が可能なe-POWER(別名シリーズハイブリッド)を中心に、サクラ、リーフ、アリアのBEVをラインナップしているが、BEVでは台数はあまり稼げない。そもそも日本市場では他社に比べるとラインナップが少なく、ヒット車もノートとセレナしかない状況だ。
古くからの日産ファンからは、セドリック、ブルーバード、サニー、フーガ、シーマ、マーチなど名門、伝統をなくし、売れるクルマは海外にあるのに日本では売らず、e-POWER、BEVに固執しすぎてHVに戻る趨勢に対応できず、しかもラインナップが少なすぎるという声も聞こえてくる……。
さて、本題のスカイラインに移ろう。クルマ好きなら「スカイラインセダン消滅説」が記憶に新しい。2021年6月12日、日本経済新聞が、日産が「スカイライン」など国内全4車種の新型車の開発を中止すると報じたのを覚えているだろうか。
奇しくも当時、クラウンもセダンを廃止、SUVになるという報道の衝撃も冷めやらぬなかでのこの報道はインパクト十分だった。だが一方で当の日産は「スカイラインを諦めない」と発言するなど、火消しに躍起だった。
2023年初頭には日産はスカイラインという車名は残すものの、クロスオーバーのみになるという噂になった。その噂がかき消されたのが2023年秋のこと。
日産は北米でインフィニティQシリーズ(日本ではスカイラインに相当)のコンセプトカー、ビジョンQeとビジョンQxeを世界初公開したのだ。
ビジョンQxeは車高が高いSUVのシルエットであるがビジョンQeはなだらかなCピラーをもつシックスライトキャビン風のスタイル。このビジョンQeこそ次世代のインフィニティQシリーズセダン、すなわちスカイラインセダンの正体である。
従来のスカイラインセダンはノッチバックスタイルだったが、世界のセダンの潮流になっているシックスライトキャビンで、リアウインドウが上方に開くハッチバックスタイル方式を採用する。
ボディサイズは全長4900×全幅1900×全高1400mm、ホイールベース2900mm程度が予想値。現行モデルと比較するとホイールベース、全長、全幅ともに拡大。
インフィニティQeのエクステリアデザインは、まだコンセプトモデルの域を出ていないが、世界のセダンを見回しても、古臭さは感じないし新鮮、なかなかスタイリッシュといえる。フロントドアからリアドアにかけてのプレスラインは伝統のサーフィンラインを彷彿とさせる。テールランプはもちろん伝統の丸四灯だ。
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■パワートレーンはシステム出力450ps程度のBEV
最大の注目のパワートレーンは、Qeの車名から想像できるようにフル電動のEVとなる予定。現在、日産が保有するBEVのパワートレーンで最も強力なのがアリアB9。
アリアB9は容量91KWhのリチウムイオン電池を搭載し、218ps/30.6kgmのモーターを前後に2つ搭載する4WD。アリアはスカイラインよりも下のCセグメントモデルのため、スカイラインではそれぞれ230~250ps程度と、さらにパワーアップし、システム出力450ps程度になる模様。駆動方式はもちろん4WDのe-4ORCEとなる。
発売予想時期は2026年頃、予想価格は600万~800万円。BEVセダンとして生き残りをはかる、新型スカイラインセダンに期待したい。ただ、BEVオンリーではなく、可変圧縮比エンジンの直4、2L、VCターボもしくはVCターボ+e-POWERを組み合わせた内燃機関エンジン搭載車も出してほしいものである。
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