ゲレンデことGクラスの歴史はシンプルなのにちょっとややこしい。フルモデルチェンジでも見た目の変化が分かりづらかったり、フルモデルチェンジなのにフェイスリフト扱いだったりするためだ。多くの人が憧れる人気モデルGクラス。電動化が始まったこのタイミングで基本的な歴史をおさらいしておきたい。
文:藤野太一 写真:メルセデス・ベンツ
■ゲレンデからGクラスへと名前を変更
Gクラスは軍用車両を出自とし、四角い無骨なスタイリングで本格的なオフロード性能を有している。特にデビュー当時からスタイリングがほとんど変わっていないことが人気の理由のひとつとして挙げられる。ユーザーはそのルーツを知ってか知らずか、Gクラスがもつ本物感のようなものに惹かれるのだろう。
初代Gクラス(W460)のデビューは1979年。もとは軍用車として企画されたものを民生車両として開発したもので、現在までオーストリアのシュタイア・プフ(現在のマグナ・シュタイア)で生産されている。
ちなみにNATOで制式採用されている軍用車がW461型、ギリシャ向けの軍用車がW462型となっている。
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■W463型へ進化し徐々に街乗りSUVとしても地位を固める
1990年に乗用モデルとして2代目となるW463が登場。当時は“ゲレンデヴァーゲン”(ドイツ語でオフローダーの意)という車名だったが、1994年にその頭文字をとってGクラスと呼ばれるようになった。今もGクラスをゲレンデと呼ぶ人がいるのはその名残である。
そして翌年にはGクラス初のAMGモデル「G36 AMG」が登場する。一方、2006年にメルセデスは最上級SUVとなるGLクラス(現GLS)を発売。実はこの頃、Gクラスの生産中止が噂されていた。
しかし、メルセデスにそれを翻意させたのは日本市場での人気の高さだったと言われている。本格オフローダーをストリートで使うというスタイルが世界的に広まっていくきっかけとなった。
2011年にはショートボディの生産を終了。W463は2018年まで生産された。現在、中古車マーケットで多く流通しているのがこのW463だ。
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■フルモデルチェンジに見えても実は大幅改良という位置づけ
2018年にフルモデルチェンジ並みの大幅な改良が施された。型式はW463を踏襲し、W463Aと呼ばれる。新設計のラダーフレームを採用しフロントサスペンションには独立懸架式ダブルウィッシュボーンを組み合わせる。
ステアリング機構はボール&ナットから電動機械式ラック&ピニオンへ、トランスミッションは9速ATになるなど、一気にモダンになった。
そして、2024年のモデルチェンジはW463Aのフェイスリフトという位置づけだ。型式はこのタイミングでW465となっている。
新型のトピックはエンジンの電動化、最新のインフォテインメントシステムを搭載するなどデジタル化が進んだこと。そしてついにGクラスのEVバージョンもデビューした。
「ハイ、メルセデス」で起動する対話型インフォテインメントシステム「MBUX」をGクラスに初搭載。
ナビの目的地入力をはじめ、電話、音楽選択、メッセージ入力・読み上げ、エアコンの温度調整、照明などなどを音声で操作できるメルセデスではお馴染みの機能だが、満を持してGクラスにも採用されたというわけだ。
MBUXは年々進化を果たしており、認識精度も高まり、使い勝手が向上している。また現実の映像の上に重ねて進むべき方向を矢印で表示する AR (Augmented Reality = 拡張現実)ナビゲーションを標準装備している。
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■電動化など盤石の体制で進化し続けるGクラス
日本で発売されたのは、「G450dローンチエディション」(メーカー希望小売価格・税込み2110万円)と「AMG G63ローンチエディション」(同3080万円)の2種類の内燃エンジンモデル。
ポイントはいずれも電動化システムである「ISG」 (Integrated Starter Generator)を搭載したこと。「ISG」はエンジンとトランスミッションの間に配置された、電気モーターで、オルタネーターとスターターの機能も兼ねる。
この電気モーターと48V電気システムにより、回生ブレーキによる発電を行いリチウムイオンバッテリーに充電。エンジンが低回転時には、その電力を利用して動力補助を行うもの。電動走行はしない一般的にはマイルドハイブリッドと呼ばれるものだ。このシステムもメルセデスではすでに多くのモデルに採用されており、効率性、快適性の向上に大きく寄与する。
そしてもう1モデル、Gクラスの電気自動車「G580 with EQテクノロジー エディション1」(同2635万円)を発売。4輪独立式モーターを搭載した革新的なモデルだ。
このG580をオンロードだけでなくオフロードでも試乗してきたので、近日中に公開する続編で細かいインプレッションをお届けする。
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