2024年4月から日本で販売が開始されたトヨタ ランドクルーザー250。先代であるプラドから大型化し、サイズ的にはランクル300とそれほど差がなくなったことで敬遠していたテリーさん。しかしあることに気が付いてから見方が180度変わったという。テリーさんのランクル250論について来れるか!?
※本稿は2024年10月のものです
文:テリー伊藤/写真:西尾タクト
初出:『ベストカー』2024年11月26日号
■ボディサイズは大きくてもいい! テリーさん悟りの境地
ランクルプラド改め250が登場した時、ボディが兄貴分のランクル300とあまり変わらないほど大きいのに失望した。
雰囲気やデザイン、特に丸目のフロントマスクが気に入っていたのだが、全幅が1980mmもあると知った時点で購入可能性はほぼ0%になった。
自宅の近くは細い道が多く、対向車とすれ違うだけでも大変という道路環境。私の好きな鎌倉や軽井沢も同じようなもので、そうした現実を考えると、こんなに大きなクルマを所有することは考えられないと思っていたのだ。
思っていた――と過去形なのは、今は違うからだ。ドジャース大谷翔平選手の活躍を見ていて、考えが180度変わったのである。その前の私はあまりにも小市民だった!
つまりこういうことである。ランクル250は大谷選手と同様、世界で戦うクルマであって根本的にスケールが違う。日本の常識を当てはめようとするのが間違いだったのだ。
大陸をひたすら走り続け、時には岩場や砂漠も走破する。ランクル250はそういうクルマなのに、ちょっと走れば道の駅があって、おみやげを買って足湯でひと休み、という日本のスケールで見てしまっていたのだ。今の大谷選手に日本のプロ野球に帰ってきてくださいと言っているようなもので、無理がありすぎる。
ランクル250はメジャーリーガーなのだ。世界の猛者に当たり負けしないサイズが必要なのである。砂塵のなかを走り抜き、生きて帰ることが目的のクルマなのに、自宅近くの細い道での使い勝手などを想像している場合ではない。ボディサイズなど、どれだけ大きくてもいいのだ!
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■ランクル250に日本のスケールを当てはめるな!
そう考えると、ランクル250は完璧なSUVであることがわかる。高性能なのはもちろん、デザインもそれほど凝ってはいないが飽きなさそうだし、高級感もある。今回乗ったのは2.8Lのディーゼルターボで、このエンジンもよかった。
あえて言えば、今回の試乗車だったファーストエディションのディーゼルは785万円で、ちょっと高いなという印象はある。しかし、それもベーシックグレードのGXなら520万円とかなり下がってきて、この値段なら「安い」と言っていいのではないだろうか。
悪いところなし。ランドクルーザーはもう「いつかはランクル」の域に達している。野心のある若者が、「いつかはタワーマンションに住んでランクルに乗ってやる」と誓うくらいの存在になっているのだ。
それでいて、レンジローバーのように「アガリのクルマ」になっていないのがまたいい。憧れの存在だが、大御所ではない絶妙の立ち位置。ランクル250は高級SUVであること以上に“道具”としての魅力が際立っているからだろう。
もちろん、走りも最高だった。このボディにディーゼルエンジンの音がよく似合うし、エンジン自体の出来も素晴らしい。また、運転席からの見切りがいいから意外と大きさを感じないのも発見だった。
繰り返すが、ランクル250はメジャーリーガー、それも日本車最強クラスのメジャーリーガーなのだ。太刀打ちできるクルマはなかなかない。買える人は迷わず販売店へ行くべきだ。
と言いたいところだが、 実は2024年10月中旬現在、注文を受け付けておらず、また再開のメドも立っていないという。サブスクのKINTOなら納期がガソリン車で2〜3カ月、ディーゼル車で6〜9カ月程度だからそちらを選ぶ手もありそうだ。とにかく大人気。「いつかはランクル」の流れはもう止まりそうにない。
このカテゴリーは確実に需要があるということだが、だからといって、他社がそこに入ってきても厳しいと思われる。日産にはサファリがあったし、三菱にはパジェロがあったが、一度離れると椅子取りゲームは戦えない。ランドクルーザーは「継続」していることにも価値があるのだ。
●トヨタ ランドクルーザー250 ZX ファーストエディション(785万円・8AT)
全長4925×全幅1980×全高1935mm、ホイールベース2850mmで、3列シートと2列シート(ディーゼルGXのみ)がある。エンジンは直4、2.8Lのディーゼルターボ(8AT)と2.7LのガソリンNA(6AT)で、ディーゼルは204ps/51.0kgm。
試乗車のファーストエディションはすでに完売しており、通常グレードは角目が標準、丸目はVXにオプション設定となる。
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