ボディカラーで人気なのは、白や黒。けれど、個性的な色を選びたい人も多いはず。だが、ミニバンカテゴリーを見てみると、赤を中心にした暖色ラインナップが少なすぎる。そこで赤がミニバンに採用されるケース少ない理由を解き明かしていこうではないか!

文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部

■現行モデルでは赤を展開しているミニバンは5車種のみ

現行車両ではノアのみがオプションカラー設定されていない

 本稿執筆時点(2024年11月現在)で、赤をボディカラーラインナップに入れている現行国産ミニバンは、わずか5台だけだった。

・シエンタ(スカーレットメタリック※有償色)
・ノア(レッドマイカメタリック※エアログレード専用色)
・エルグランド(ディープクリムゾン※特別塗装色)
・セレナ(カーディナルレッド※特別塗装色)
・フリード(プレミアムクリスタルガーネット・メタリック※有償色)

 トヨタと日産が2車種ずつ、それも赤の色味を少し変えて展開しているのはエライ! 赤をこよなく筆者は、両メーカーに敬服します。

 とはいえ、ノア以外は全て別料金が発生するオプションカラーになっているのは少し残念。ノアもエアログレードだけに赤が用意されていて、標準ボディでは赤が選べない。ちなみに、次期改良でレッドマイカメタリックが消えるという噂もある。赤のノアを買うなら今だ!

 アルファードでは、先代にダークレッドマイカメタリックが採用されていたが、現行型では不採用となった。また、遊び要素の強そうなデリカD5にも赤は無い。面白さやこだわりの多いクルマなだけに、他とは違った配色があっても良さそうではあるのだが。

「真っ赤なスポーツカー」「真っ赤なポルシェ(プレイバックpart2より)」と、赤いクルマは決して珍しい存在ではないのだが、ミニバンに関して言えば、赤は希少なボディカラーになってしまった。これは一体なぜだろうか。

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■一番の要因は査定額の低さ

ディーラーマンからしても、リセールが悪い赤はオススメがしにくい状況

 これまで赤を採用したことがあるミニバンでも、途中で赤の設定が立ち消えることが多く、赤を採用した途端にドロップアウトし絶版車となるミニバンもあった。 

 各メーカーが、赤いミニバンを作りたがらない、または有償色や専用色にして多く出回らないようにしている背景には、販売現場への影響を少なくしたいという思いがあるかもしれない。

 ディーラーの営業マンへ「赤いクルマを勧めることはあるか」と聞いたことがある。結果、ほとんどの営業マンは「NO」と返す。特にミニバンの場合、赤はよほどのことが無い限りオススメしないというのだ。

 現在の新車ミニバン市場では残価設定ローンが主流となり、3~5年サイクルで積極的に乗り換えが進むようになった。

 アルファード・ヴェルファイアやノア・ヴォクシーといった、高残価率を誇るミニバンは多い。これらを残価設定ローンで買ってもらい、5年後の満期時に高い査定金額を提示して、次のクルマへと乗り換えてもらうのだ。

 営業マンからすると、一定周期で新車を買ってもらえる願ってもないチャンス。この乗り換え戦法のカギを握るのが、高残価と高額査定である。

 ボディカラーは査定額に大きく影響を及ぼす。万人受けのするパールホワイト系やブラック系は高い査定が付きやすいが、青や赤、パステルカラーなどは不人気色として、白黒よりも査定金額が下がる傾向があるのだ。

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■世間から受け入れられない限り厳しい時間を続く

過去にはエスティマのように赤がテーマーカラーになっているケースも

 したがって乗り換え営業に力を入れる昨今のディーラーでは、顧客からの強い要望が無い限り、新車のボディカラーで赤を勧めることはない。後々、下取り車として仕入れ、中古車として販売する可能性があるクルマは、出来るだけ売りやすい色の方が良いからだ。

 現行アルヴェルを見れば一目瞭然。アルファードは「白・黒・ブロンズ」の3色、ヴェルファイアは「白・黒」しか用意されていない。現代ならではの売り方が、ボディカラーラインナップにまで影響しているのだ。

 不人気色のレッテルを、赤色自身が払しょくしなければ、ミニバンへの赤採用は今後も少数派として推移するだろうエスティマやMPVなど、赤が似合うミニバンは数多くある。現行ノアの赤も、個人的にはカッコいいと思う。ただ、街中で見かけるのは圧倒的に白か黒なのである。

 売り方が変わるのが先か、イメージが変わるのが先か。どちらにしても、赤いミニバン市民権を得るのは、まだ先の話になるだろう。

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