「羊の皮を被った狼」という表現があるが、今回紹介するクルマはその逆。いかにも速そう、あるいは強そうな見た目をしているのに、実際はルックス負けしている少々残念なモデルを見ていこう。
文/長谷川 敦、写真/ホンダ、Newspress UK、CarWp.com
■知名度もバツグン、でもその実態は…? なクルマ2選
●デロリアン(DMC-12)
最初に登場するのは大物中の大物、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズでタイムマシンのベースになったことから一躍有名になったデロリアン(開発コードDMC-12)だ。
その未来的なスタイルでも注目を集めたデロリアンは、アメリカのデロリアンモーターカンパニー(DMC)が1981年に発売したスポーツカーで、デザインを担当したのはイタリアの巨匠ジョルジェット・ジウジアーロ。
そして車体開発はイギリスの名門ロータスが請け負ったというのであれば、それだけでも名車認定されそうなほど。
しかし、搭載されたエンジンは本来スポーツカー用ではなく実用車向けだったためか出力はそれほど高くなく、見かけのわりには速くないクルマという評価もあった。
また、新興メーカーゆえか製造精度にも問題があり、オーナーの多くが足回りやブレーキなどのトラブルに悩まされたという。
さらに経営や政治的問題から工場の維持が不可能になり、デロリアンの製造は2年未満で終了している。
映画のヒットも後押しして、デロリアンは現在でも人気のあるクルマだが、メーカーの迷走に振り回された不幸なモデルでもある。
●童夢-零
1970年代の日本国内スーパーカーブームの主役はイタリアやドイツなどの欧州車だった。
そんななか、日本で誕生したメーカーの童夢が1978年のジュネーブモーターショーで発表したスーパーカーが零(ゼロ)だ。
生まれたばかりの小さなメーカーが完成させた零はショー会場で予想以上の注目を集め、正式な市販時期も確定してないにもかかわらず、すでに多数の予約の打診があった。
もちろん、この時公開された零はプロトタイプであり、市販化に向けて解決すべき課題は多かった。
ボディのデザインは典型的なクサビ型で、先進性が高く、美しいフォルムは海外メーカー製のスーパーカーにも引けをとらない完成度を誇っていた。
搭載されたエンジンは日産製のL28型直列6気筒、ボディサイズに対しては少々大柄だったが、日本のエンジンを選ぼうとするとあまり選択肢はなかった。
実際に動力性能はそこまで高くなく、スーパーカーと呼べるほどではなかった。
童夢自身でもこの零をスーパーカーという位置づけにしていなかったが、そのスタイルから圧倒的なスピードを期待していたスーパーカー少年は少々がっかりさせられた。
結局諸事情があって童夢-零が市販されることはなく、そういう意味でも残念なクルマとはいえる。
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■見た目だけならスーパーカーな2モデル
●三菱 GTO
三菱が1990年から市販を開始した高性能スポーツカーがGTO。
開閉式リトラクタブルヘッドライトを採用したボディデザインはフェラーリなどのイタリアンスーパーカーを彷彿とさせ、後部に装着されたウイングも雰囲気を高めていた。
だが、ベースになったのは4ドアハードトップであり、GTOは2ドアモデルにもかかわらずかなり大柄なボディを持っていた。
駆動方式はすべてのグレードで4WDであるのもGTOのウリのひとつになっていた。
しかし、セダンベースの4WDというGTOは必然的に重くなり、その重量はなんと1700kg。
このためGTOは大トルクを活かした加速と高速巡行性能を発揮したものの、スタイルから想像される軽快かつシャープなコーナリングを実現するモデルにはならなかった。
メインターゲットにしていた北米ではそれなりの人気も得られたが、やはり少々残念なクルマだったと言わざるを得ない。
●ポンティアック フィエロ
ポンティアックはアメリカのゼネラルモーターズがスポーティな車種のために展開していたブランド名で、フィエロはそのポンティアックが1984年に発売したモデル。
いわゆるアメ車では珍しいライトウェイトスポーツカーとして開発されたフィエロは、エンジンをミドシップ搭載する2シーターモデルであり、ボディフォルムはスーパーカー寄り。
とはいえ、登場時のモデルに搭載されたエンジンは最高出力93psの2.5リッター直4と、いくらライトウェイトスポーツといえどやや非力な感は否めない。
1986年には140psのV6エンジン搭載モデルも追加されたが、アメリカ人の気質には合わなかったのか、フィエロの売り上げは伸びず、1988年に生産&販売が終了している。
安価なミドシップスポーツカーだったフィエロが、後年になってランボルギーニやフェラーリのレプリカ車を作る際のベース車用で人気を集めたのは皮肉な結果か?
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■期待のハイブリッドも“先代”のイメージに勝てず
●ホンダ CR-Z
ホンダから2010年に発売されたスポーティなハイブリッドカーがCR-Z。
その名称は、1980~1990年代に高い人気を集めた同社のCR-Xを想起させるもので、実際にCR-Zのルックスには初代&2代目CR-Xの面影があった。
軽量な車体を生かして小気味良い走りを披露したCR-Xの印象がある層にとって、CR-Zの登場はハイブリッド時代のCR-X再臨を予感させた。
だが、燃費性能を重視しなければならないハイブリッドカーであるCR-Zの走りはそこまで尖ったものではなく、スポーツ性を重視するユーザーの期待に応えることはできなかった。
特に初期型のパワーユニットはシステム総出力が124psとあまり強力なものではなく、ハイブリッドシステムに使用するバッテリーの重量も足かせになってしまった。
そこでメーカーでは2012年のマイナーチェンジでより強力なパワーユニットを採用したが、残念ながら販売成績の向上にはつながらず、CR-Zは2代目モデルを残すことなく2016年にその歴史を終えている。
クルマの見た目は重要な要素であるのは間違いないが、やはりそれも中身が伴ってのもの。
もちろん、見た目がすべてという考えも否定はできないが、そうしたクルマの多くが短命に終わっているのも偶然とは思えない。
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