11月10日(日)、一般社団法人日本二輪車普及安全協会(以降、日本二普協)と警視庁交通部が主催する、ビギナー向けの安全運転講習会「Basic Riding Lesson(ベーシックライディングレッスン 略称:BRL)」が警視庁 交通安全教育センター(東京都世田谷区)で開催された。
文/田中 淳磨
今回のレッスン(東京会場)には体験取材会として多くの二輪メディアも招待され、ウェビックプラスからはYouTubeチャンネル「suuちゃんねる【バイクと旅】」で活躍中のユーチューバー、suuさんが参加してきたので、その模様をレポートしたい。
バイクの運転や公道走行に不安のある方が対象のレッスン
と、その前に、BRLについて説明しておこう。BRLは昨年まで「グッドライダーミーティング」として行われていた安全運転講習会を、より初心者向けにリニューアル、名称変更したものだ。受講対象者としては、公道走行に不安を抱えている方、自動二輪免許を取得して間もない方、一度はバイクを降りて長いブランクののち再び乗り始めた方(リターンライダー)などとなっている。
こうした運転操作に不安のある方たちを“ビギナー”として受け入れ、基本技術の習得を通して、公道走行への自信獲得、不安払しょくの機会としてもらうのが狙いだ。
まだリニューアル1年目ということで、レッスンのカリキュラムを含め、今後も細部に改良が加えられる可能性もあるが、バイクの運転に不安のある方の受け皿として期待されている。
レッスンを体験してくれたのは人気ユーチューバーのsuuさん!
今回BRLに参加してくれたのはYouTubeチャンネル「suuちゃんねる【バイクと旅】 」で活躍中の人気ユーチューバー、suuさん。昨年4月に普通二輪免許を取って、すぐさま6月には大型二輪免許も取得! バイク、旅、お酒に関するさまざまな動画を配信している。愛車はホンダのCB1300 SUPER BOLD’ORとモンキー125で、今回はCB1300 SUPER BOLD’ORで来場、レッスンを体験してくれた。
1. 受付・開講式・乗車準備
1-①. 受付
BRLの一日は受付から。8時20分から始まって、レッスン中に着用するゼッケンや実技講習カード、二輪車安全運転推奨シール(条件を満たすとステップアップする)」などを受け取る。
ゼッケンの色は講習中のグループ分けを意味していて、黄色が「初めて参加、運転に自信がない方」、緑色が「初心者」となっている。色の選択は自己申告だが、レッスンが始まった後でも緑色から黄色に変更することもできる。
なお、参加募集はWEB上で行われており事前予約制。日本二普協の公式サイトから各地域の開催情報ページに進むことができる。開催スケジュール、講習時間、申し込み方法、参加料金といった詳細は地域によって異なっているので注意。参加資格(二輪車防犯登録への加入、胸部プロテクターの装着など)も明記されているので確認しておこう。
また、受付では車両点検チェックシートも配布されるので、講習開始前に自分でチェックしておく。特に「ブタと燃料(ブレーキ、タイヤ、灯火器類、燃料)」の項目は重要だ。走行中のガス欠は転倒につながってしまうので、必ず確認を。
1-②. 開講式
開講式では、職員や指導員の紹介のあと、主催・関係者からの挨拶があり、参加者への諸注意や各種案内が行われた。休憩時間は多めに設定されているが、トイレと自動販売機の場所はしっかり確認しておきたい。
1-③. 乗車準備
乗車準備は、バイクに乗る前の大切なことを確認する時間だ。まずはヘルメットやウェア、プロテクターなど服装のチェックから。警視庁の女性白バイ隊「クイーンスターズ」の隊員が身振り手振りで教えてくれた。特に、ヘルメットのあごひもをしっかり締めることの重要性が伝えられた。
続いては乗車姿勢の説明となったが、隊員の指導で参加者が実際に行ったのは、ニーグリップ時のつま先と膝の関係性を体感すること。つま先が外側に開いているとうまくグリップできないが、つま先をしっかり進行方向に向けていると膝がしっかり自然にグリップさせられる。
最後は、全員で柔軟体操を行った。重たいバイクを扱う際には、ちょっとした負荷で捻挫などのケガをすることもある。各部の関節や筋の状態を確認しながら念入りにほぐしていく。
2. 課題「ブレーキ」
最初の課題はブレーキから。まずは乗車の前に、指導員らによるお手本を見学した。3台のバイクが並走し、指定のパイロン位置からそれぞれブレーキをかけて制動距離の違いを確認する。
後輪ブレーキだけを使ったバイク、前輪ブレーキだけを使ったバイク、前後輪ブレーキを同時に使ったバイク(全制動)の制動距離や特性の違いを見て、前後ブレーキを同時に使うことの重要性を理解した。
グループごとに外周路での慣熟走行をしたあとは、ブレーキの体験・練習となった。外周にブレーキ用のコースが複数作られており、速度は40km/h・ギヤは3速以上という状態から指定パイロンの位置でブレーキをかける。後輪のみ使用、前輪のみ使用、前後輪ともに使用(全制動)のコースがあり、その違いを体験した。
前輪のみ使用の場合は、バイクの前部が沈み込んで姿勢変化が大きくなる(ノーズダイブという状態)。後輪のみ使用の場合は、車体を安定させる効果があるものの、リヤタイヤがロックしやすく制動距離も延びてしまう。
前ブレーキと後ろブレーキを両方使えば、姿勢を安定させながら、タイヤもロックしにくい状態で制動距離を短くすることができる。
3. 課題「コーナリング」
ブレーキの後は、休憩をはさんでからのコーナリング課題。外周路の内側にある、クランクやS字などが細かく配置されたインフィールドセクションを走りつなぎ、最後に直線パイロンスラロームとオフセットパイロンスラロームを加えた周回コースを繰り返し走る。
車体を傾けることに慣れること、車体を傾けることでハンドルが切れていくことを体験するのが目的だ。基本的には、指導員先導のもとグループごとに連なって走り、走行中の追い越しや追い抜き、前走者へのあおり等は禁止となっている。
速く走ることが目的ではないので、直線区間で加速するといったことはせず、速度は一定に近い状態。コーナーごとに、目線、頭、肩、腰の旋回による重心のずれによりバイクが傾いていくこと、それによりハンドルが切れていくことを体感するために、先導者をトレースしてライン取りも学んでいく。
指導員による個別の先導や指導・アドバイスも受けられる。グループの流れについていけなくても安心だ。
4. 課題「バランス」
休憩後は、隣の会場に移動してバランスの体験・練習となった。周回コースの中に、直線パイロンスラローム、狭路、スパイラルターン、一本橋といった課題が設定された。どの課題もバランスを取りながらバイクをゆっくり走らせることの難しさを体感するものなので、バイクを立てた状態で通過することが基本となる。
なお、パイロンスラロームでは3通りのやり方を体験した。車体を傾けながら通過するやり方、車体を傾けつつスロットルも積極的に使って通過するやり方、車体を傾けずにハンドル操作だけで通過するやり方だ。コツは、パイロンとパイロンの間の真ん中より手前に前輪を通すこと。
狭路では、幅の狭いスペースをバランスを取りながらできる限りゆっくり走る。目線も含めた乗車姿勢が重要で、ニーグリップをしっかりすることで上半身の力を抜くことが大切。後ろのブレーキを少し引きずるようにかけて速度を調整するのもコツだ。
スパイラルターンは、バイクに遠心力がかからない低速の状態で、左右の旋回を体験する課題。バイクをなるべく立てた状態で、ハンドル操作だけで曲がることの難しさを知る。後ろのブレーキを引きずりながら車体を安定させ、目線を進行方向に送り続けることがコツだが、とても難しい。
一本橋は教習所などと同じやり方だ。幅30cm、長さ15mの橋の上でバランスを取りながら、なるべく遅く通過することを目指す。うまい人は目線を出口のあたりに置くそうだ。
5. 安全運転ガイダンス・閉講式
レッスン終了後は、タイヤメーカー「ブリヂストン 」による安全運転ガイダンスが行われた。空気圧、溝の深さ、変摩耗などのほか、意外と壊れやすいエアバルブなどタイヤ点検時の注意点などをレクチャーした。
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