仕事柄、さまざまなクルマに乗る機会がありますが、スイッチや操作方法がクルマによって違うことで、戸惑うことがあります。もちろん走る・曲がる・止まるという操作には問題ないのですが、スタートスイッチやハザードスイッチの位置をキョロキョロと探すのは、少し恥ずかしいものがあります。

 一番焦るのが給油をするとき。給油口が左右どちら側にあるのかは、メーターパネル内の給油機マークの三角を確認すればわかりますが、昨今のクルマは給油口の開け方もバラバラなので、「給油口開けてくださーい」とスタンドの店員さんにいわれてしまい、顔を赤くすることもしばしば。

 なぜこれらはクルマによって違うのでしょうか。統一できないものなのでしょうか。

文:吉川賢一
アイキャッチ画像:Adobe Stock_yamasan
写真:Adobe Stock、写真AC

給油口の位置の違いは、メーカーの設計思想の違いによるもの

 右側か左側か、どちらかに統一したほうが便利だと思われる給油口の位置。ただ、一部例外もありながらも、メーカーによって左右どちらかはだいたい決まっています。たとえばトヨタやホンダなど多くの国産メーカーは左側にあることが多いですが、日産やスバルでは右側にあることが多く、メルセデスやBMW、フォルクスワーゲンなどの欧州車も右側が多いようです。

 給油口の位置に関する法規としては、「道路運送車両の保安基準第2章及び第3章の規定の適用関係の整理のため必要な事項を定める告示(2021.6.9)」の第12条(燃料装置)のなかで、「排気管の開口方向になく、かつ、排気管の開口部から300ミリメートル以上離れていること。」 とされており、給油口と排気管の位置は離す必要があります。給油中にガソリンをこぼしてしまい、熱くなった排気管に垂れて引火するなどの事故を防ぐためです。そのため、排気管が出ている向きとは反対側に給油口を設けるのが一般的です。

 日産の車体設計エンジニアによると、日産の場合は、運転席側に給油口が装備されたほうが給油の際に便利という観点から、日本向けが主のクルマには右側へ給油口を設けているとのこと。ただし北米向けのアルティマ、マキシマ、ムラーノや、それらと同じプラットフォームを使っているエルグランドは、左側に給油口を設けています。

 また、左側が多いトヨタやホンダはグローバルで統一しているようです。左側通行の日本において、歩行者のいる左側に排気管を装備するのは望ましくないとの考えから、排気管は右側に、給油口は左側に設けるようになったそう。ただし、排気管が左右にあるクルマもあり、設計の都合や慣例により決めているというのが現状のようです。

給油口の位置の違いは、メーカーの設計思想の違いによるもの(PHOTO:Adobe Stock_xiaosan)

開け方の違いは、海外とのガソリンスタンドの違いが

 給油口といえば、給油口のフタ(フューエルリッド)の開け方も統一されていません。昔はクルマのキーをキャップに差し込み回して開けるタイプが多くありましたが、カギ穴をイタズラされたりなどの問題があったことから、国産車では、車内にあるレバーやスイッチで解除するタイプが主流に。ただ、海外のクルマでは、給油口のフタを手で押して開けるタイプが主流です。ドアロックと連動しており、ドアを開けて表に出ると、フタのロックが解除される仕組みとなっています。

 この違いは、日本と海外のガソリンスタンドの違いが関係しています。いまでこそセルフサービスの店も多い日本のガソリンスタンドですが、かつては従業員が給油を行うフルサービス方式しか認められていなかったことで、ドアロックがかかっている状況でも、給油口のフタのロックを車内から解除することができる方式が便利でした。ただ海外では、昔からセルフサービスが主流であり、ドアロックと連動しておくことで、給油操作のためにクルマから降りると給油口のフタのロックが解除されますので、「解除する」といった操作が不要となるため、このドア連動型が主流だったのです。

 しかしながら、現在は日本でもセルフサービスのガソリンスタンドが多くなっていることを考えると、今後はドアロック連動型が主流になってくるのかもしれませんね。ロック解除のレバーやスイッチを探す手間も省くことができます。

給油口に関しては開け方も何パターンかあり、運転席にあるレバーやスイッチで開けるタイプのほか、給油口のフタを押して開けるタイプや、クルマのキーをキャップに差して開けるタイプも(PHOTO:写真AC_Koenig)
給油口のふたの開け方の違いは、日本と海外でのガソリンスタンドの違いによるもの(PHOTO:Adobe Stock_Quality Stock Arts)

ハザードスイッチは、以前ほど位置がバラバラではなくなってきた

 ほかにも、冒頭で挙げたハザードスイッチやスタートスイッチなどの位置は統一されたほうが便利だと思われますが、これらは重要なスイッチではあるものの、運転中の使用頻度がそれほど高いわけではなく、いわゆる「一丁目一番地」にレイアウトするのは、少しもったいない部類のスイッチ。目立ちすぎると、せっかくカッコよくデザインしたインテリアを台無しにされる存在でもありますし、かといって使いにくい位置にレイアウトするわけにはいかないもの。インテリアデザインを阻害しないよう、それでも、とっさに操作ができる場所へ配置しているため、毎度、同じレイアウトにできるとは限らないのです。

 ただ、「位置がバラバラでわかりづらい」という指摘はメーカーも承知しているようで、昨今はインフォテイメントモニターの下に、エアコン吹出口と共にハザードスイッチをレイアウトするパターンが多く、以前ほど、ハザードスイッチがバラバラではなくなってきているように思います。ハザードスイッチは緊急時に使うものなので、さっと操作できるよう、この傾向が浸透していくことを期待したいです。

ハザードスイッチは、重要なスイッチではあるものの、運転中の使用頻度がそれほど高いわけではないため、とっさに操作ができる場所かつインテリアデザインを阻害しない位置へレイアウトされる(PHOTO:Adobe Stock_tarou230)

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