車室内には音響的な不利要因がいくつかあるが、「サウンドチューニング機能」を駆使するとそれらへの対処が可能となり、聴こえ方を改善できる。しかしその操作は簡単ではないので、設定はプロに任せた方が確実だ。でも、自分でやっても楽しめる。

当連載ではそれを推奨し、この操作方法を説明している。現在は、「マルチウェイスピーカー」を使うときに各スピーカーに対して再生範囲の割り振りを決める機能である、「クロスオーバー」の使い方を紹介している。

さて、今回からは「位相」の合わせ方について説明していこうと思うのだが、まずは「位相」とは何なのを解説したい。

「位相」とはつまりは「音波のタイミング」だ。静かな水面に石を投げ入れると波紋ができるが、音もそれと同じように空気中を上下動を繰り返しながら進んで行く。その上下動の動き方のタイミングが「位相」だと理解してほしい。

で、「位相」は、スピーカーが1つだけしかないときには問題にならない。しかし2つ以上に増えて、そしてそれぞれから同じ音が出されるときに問題となる。

それがどういことなのかを詳しく説明していこう。もしもスピーカーが「フルレンジタイプ」であるとき、左右のスピーカーそれぞれにおいては音波がどんなタイミングで放たれようとも問題は起きない。でも、左右のスピーカー間では問題となる。

ステレオ音源は左右のchで録音状態が異なっているものの、ほとんどの楽器の音が両方のスピーカーから聴こえてくる。

そのときに、右のスピーカーから放たれる音の上下動のタイミングと左のスピーカーから放たれる音の上下動のタイミングとがズレてしまうと、聴こえ方がおかしくなる。

そして左右のスピーカーがそれぞれ「2ウェイ」となると、「ツイーター」と「ミッドウーファー」のそれぞれから放たれる音の「音波のタイミング」が合うか合わないかが問題となる。

例えば「ツイーター」と「ミッドウーファー」の再生範囲の境目が仮に5kHzだったとすると、その付近の音は「ツイーター」と「ミッドウーファー」の両方から聴こえてくる。「ツイーター」からは5kHzよりも低い音程の音も音程が下がるにつれて音量は小さくなるものの、いくらかは聴こえてくる。「ミッドウーファー」からも5kHzより高い音が音程が高くなるにつれて音量が小さくはなるものの、聴こえてくる。

となると、「ツイーター」と「ミッドウーファー」の両方から聴こえてくる音の「音波のタイミング」が揃う必要性が生じる。それが揃わないとサウンドの一体感が弱まってしまうのだ。

さて次回は、その合わせ方を説明していく。乞うご期待。

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