いまや絶滅危惧種となってしまって久しいMT車。でもクルマの楽しさを本当に味わうならやっぱりMT車に限る!自動車評論家 国沢光宏が「MTの理由」とオススメMT車7台をご紹介!(本稿は「ベストカー」2013年4月10日号に掲載した記事の再録版となります)
TEXT:国沢光宏
■MT車が楽しい理由とおすすめのMT車
86のAT車に乗ると「案外楽しいね!」とか「ATでも充分走るじゃん!」と思うことだろう。しかし! 直後にマニュアルを運転したら「う〜ん!」。
さらにAT車を走らせてみたら「なんてこった!」になるだろう。圧倒的にマニュアルの方が楽しいからだ。
そもそも日本の道だと、AT車は6速あるウチの2速と3速しか使えない。4速になるとスピードレンジ高すぎるし、そもそも充分な駆動力を掛けられないです。
マニュアルなら1速と2速はパワースライドを楽しめるような「オーバーパワー感」を味わえ、3速と4速で前後ちょうどのコーナリングバランスとなる。
サーキットだと4輪ドリフトの速度域。マニュアルならアクセルオフでの後輪コントロールができる。それだけじゃない。ギアチェンジそのものの面白さや、エンジンフィールを骨の髄まで堪能しちゃいたい。
ロードスターも86とまったく同じことがいえる。
マニュアルだと「右足で曲がる」という感覚を楽しめるうえ、テクニックさえあればアクセルのオンオフを微妙に探りながら後輪にトラクションを掛けられます。
ハンドルじゃなくアクセルで車体をコントロールするという、別次元の乗り方なんぞ試してみたらいかがか?
パワーのないロードスターは86以上にマニュアル向きモデルだと私は思う。
そしてWRX STI。
このクルマにATを作ったこと自体、よくワカランです。絶対的な動力性能あればいいのか? ワインディングロードで2速と3速しか使えなくていいのか?
パワーコントロールだってアクセル開ける側だけ。スロットル戻しながら前輪加重してテール流しつつコーナーに飛び込み、クリッピング手前あたりからアクセルでテールのスライド量をコントロールするような走りはマニュアルしかできない。
しかも! AT車を選ぶとエンジンが高回転で伸び悩む実用車用の2.5Lになってしまう。
絶対的なトルクも競技車両のベースになっているEJ20エンジンより細い。クルマそのものからして違うのだ。
ランエボXだとATはツインクラッチで、エンジン同じ。それなりの面白さを持つ。されどWRX STIについちゃアカン。中古車買うなら高くてもマニュアルを選びたい。
輸入車勢のテッパンMTといえばポルシェ911&ボクスターでしょう。この2モデル、日本での販売状況を見るとAT優勢。つまり「スポーツカーの走りを楽しむ」というより「ポルシェに乗りたい」人が買っている。
86と同じく乗り比べたらまったく迷わない。マニュアルの911やボクスターは生粋のスポーツカーだ。アクセル操作に対し敏感に反応し、エンジン音も刻々と変わっていく。超楽しいっす!
せっかくのポルシェもATに乗るとスポーツクーペのごとし。気持ちいいソリッド感がすべて失われてしまう。
もちろんポルシェというカタチをしたクルマに乗りたい人ならAT上等! ただ「もったいないなぁ」と私は思います。
ちなみにポルシェのATは電光石火のシフトチェンジを行なう7速ツインクラッチ。ワインディングロードとかの速さだけを追求するならATの方がいいかもしれない。でも楽しさを失うのはナンセンス。
意外だったのがベンツSLK。ベンツなんかATで乗るクルマでしょ、とナメていたらどっこい! マニュアルだと10倍楽しいクルマになる。
シフトフィールやクラッチミート感のよさにもタマげた! 今までボクスターvsSLKの原稿を頼まれたら圧倒的にポルシェの勝ちとしてきたが、マニュアル同士の対決になったら迷う!
エンジンフィールさえもう少し官能的ならSLKにしちゃうかも。
テッパンというほどじゃないないまでも、私なら絶対マニュアル選ぶのはBMW320i。やっぱしBMWってエンジンを味わうべきだと考える。
8速ATも伝達効率や燃費、滑らかさですばらしいが、面白さでマニュアルに届かない。マニュアルに乗っていると、改めて「4ドアのスポーツカー」といわれてきたBMWのDNAを感じますね。
クルマ好きならぜひともマニュアルで!
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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