ステランティスジャパンは5月10日、ジープ・ブランドのオフローダーモデル『ラングラー』(Jeep Wrangler)の新型を同日より全国のジープ正規ディーラーにて発売すると発表した。
東京都渋谷区にあるMIYASHITA PARKではプレス発表会が行なわれた。発表会ではステランティスジャパンの打越晋代表取締役社長が、アンベールされたラングラーの運転席から、Apple AirPods Maxを着け、iPadを片手に颯爽と登場。新型ラングラーについてのアピールポイントを語った。
◆日本で売れまくっているラングラーは唯一無二の存在
ラングラーは、ジープブランドの圧倒的アイコンであり、人気ナンバーワンの車種。そのデザインはひと目でラングラーとわかり、他に類を見ないほど高いオフロード性能か特徴。打越氏は「最近街で、このラングラーをよく見かけると思いませんか。あるいは、1日1回はラングラーと遭遇するなと感じていませんか」と問いかけた。
この問いの答えるかのように、昨年1年間の国内での販売台数は4000台を超え、累計にすると2万5000台に届いていると明かす。世界の販売台数で見ても、アメリカ、カナダ、中国に次いで日本が入る健闘ぶり。しかも世界最大の市場、自動車マーケットである中国とは、僅差で争うほど日本で売れまくっている。
なぜこれほど日本で受け入れられているのかを打越氏は次のようにとらえていた。「おそらくこの中の何人かの方は、キャンプブームに乗っかっただけではないかと言う方もいるかもしれない。もちろんラングラーは、商品性が高く、どんな悪路も平然と走り抜ける、そういったオフロード性能が高く評価されていることも事実だと思う。ただし、私はそれだけではないと思っている」。
「今、お客様の中には、自分で新しい価値を見つけ出す、そういったお客様が増えているから、このラングラーが受け入れられている。2020年ぐらいから、とくに若い世代の方々に、自分なりの価値、自分自身で新しい価値を見い出だすといったお客様が増えているなと感じている。実際にラングラーを購入された方に話を聞くと、ほとんどのお客様がこのラングラーのデザインが好きで買われたと言う。そしてふた言目には、この車は自分にとって唯一無二の存在なんだと熱く語る方が多い。ラングラーが、自分の価値を作り出す、楽しみを創り出す唯一無二の存在、自分の最大の自己表現なんだという風にお考えの方が多いのではないかと思っている」と述べた。
今回の発表会がMIYASHITA PARKで行なわれたことについても打越氏は触れた。ジープの発表会と聞くと、山間部やオフロードシーンで発表会を行なうのではと思われがちだが、MIYASHITA PARKは、流行の最先端であり、新たな情報発信のポイントになっていることから、ここを選んだとのこと。ラングラーはジープにとって成功している車種だが、たとえラングラーといえども、成功を継続させることは困難であり、成功を継続させるには、絶えず挑戦をすることが重要だと語った。
Stellantisジャパン 代表取締役社長 打越晋氏。ちなみにこのジーパンもラングラーとのこと。◆エントリーグレードを国内にも投入し販売台数トップを狙う
続いてステランティスジャパンのジーププロダクトマネージャー、渡邉由紀氏が登壇し、ラングラーの製品概要について語った。
まずは輸入車の台数予測といったデータを元にジープの立ち位置が示された。輸入車は2025年以降も約30万台を推移するというふうに予測されている。ラングラーは輸入車のミッドサイズSUVセグメントとなり、2020年、2021年は7000台近い台数を登録し日本市場でカテゴリー1位を獲得。2022年、2023年は、残念ながら2位、3位に転落してしまっていた。そこでこの新しいラングラーの導入をきっかけに、1位の座に返り咲きを目指している。
ラングラーのグローバルの販売台数は、輸出向け仕様だけに目を向けると、中国の次にいるのが日本となる。台数差についても、400台ほどの僅差で、2024年は1位を目指すという目標がある。そのための策として、ここ数年導入を見送っていたエントリーグレードの「アンリミデット・スポーツ」を導入する。渡邉氏は、エントリーの価格を引き下げることで、多くの層にアピールできると確信していると力強く語っていた。
Stellantisジャパン Jeepプロダクトマネージャー 渡邉由紀氏。 2024年はジープが1位を奪回予定だ。日本が中国に次ぐ販売台数ということは、市場規模を考えるとかなり重要な国となっている。モデルの特徴についての解説も行なわれ、まずエクステリアで一番特徴的なラングラーの顔とも言える、セブンスロットグリルの意匠変更について発表された。グリルの高さを若干縮小化し、またグリルにブラックのテクスチャーを加えることで、より凝縮したデザインとなっているとのこと。ホイールも全グレード一新し、ホイールのセンターキャップには、1941年に誕生したジープ・ウィリスのシルエットが描かれている。ルビコンについては、タイヤが大きいことからワイドフェンダーが採用された。
フォルムについては、1945年に誕生した『CJ-5』から、『ラングラーYJ』、『ラングラーJL』にいたるまで、スクエアなフォルムは継承している。ただしグリルデザインは何年にもわたって進化している。フロントガラスは、コーニングゴリラガラスを全グレード標準設定で、オフロード走行時のちょっとした飛び石などにも耐えられる強いガラスが採用されている。またピラーに沿って取り付けられていたマストタイプのアンテナは、オフロード走行時に小枝に引っかかってしまうといったお客様の声を反映し、フロントウィンドウに統合した。
ジープの意匠であるセブンスロットグリルが変更された。スクエアなデザインは歴代踏襲されている。◆新搭載の装備でさらなる走破性と安全性アップ
インテリアについては、黒を基調として水平のデザインを意識しているため、非常にすっきりした仕上がりになっている。センターには横長12.3インチのタッチスクリーンディスプレイが配置され、先代モデルよりも5倍高速化されたプロセッサーが搭載され、処理能力が向上している。ナビゲーションはワイヤレス Apple CarPlay、Android Autoが対応している。
ラングラーでは初めて採用となるのが、12通りのパワーアジャストが可能なフロントシートだ。またラングラーの特徴でもあるオープンルーフだが、ルーフの開閉が可能なまま、スポーツバーの中にサイドカーテンバッグを初搭載し、安全性を高めている。
最高のオフロード性能を誇るアンリミテッドルビコンに搭載されていたリアのアクセルは、セミフローティングタイプのものから、フルフローティングアクセルへと変更された。これは、セミフローティングタイプの場合、駆動トルクの伝達に加えて、車両の重量や積載物の重量全てを受け止めなければならないため、負荷が大きかった。これをフルフローティングアクセルにすることで、駆動するトルクのみを負担するため、最大のけん引能力を発揮できるようになった。
◆エントリーモデルから充実した装備と先代より大幅ダウンの価格設定
メーカー希望小売価格は、エントリーのアンリミテッド・スポーツが799万円(消費税込み、以下同様)、中間グレードの「アンリミテッド・サハラ」は839万円、上級使用の「アンリミテッド・ルビコン」は889万円。エントリーといえども、ナビゲーションシステム、ゴリラガラス、カーテンエアバックといった装備はすべて装着されている。
そしてアンリミテッドサハラは、先代モデルではこのモデルがエントリーとしてリリースされ、価格は870万円だった。つまりサハラについては、31万円ほど値段を下げ、さらに多くの新しい装備が追加され、これらを市場の価値に換算すると40万円ぐらいの価値があり、て実質先代モデルから70万円ぐらいお買い得感がある仕様となっている。またアンリミテッドルビコンも、小売価格を16万円ほど下げ、さらに市場換算すると55万円ほどの新しい装備を搭載しているため、こちらも実質70万円ぐらいお買い得感がある価格設定となっている。
また、ローンチを記念した、「アンリミテッド・サハラ・ローンチエディション」は、アンビルと名付けられたブルーグレーの非常に落ち着いた色味を採用。トレドノース(ラングラーの生産工場)の地形入りフェンダーデカールや、ジープの誕生年である1941のロゴ入りテールゲートデカールを装備している。メーカー希望小売価格は849万円で、300台の限定となる。「アンリミテッド・ルビコン・ハイベロシティ」は、ビビッドな黄色のボディカラーを纏い、10台の限定車となる。5月10日より1週間の期間を設け、webサイトにて抽選販売となる。価格は899万円。
アンリミテッドスポーツが追加され、3車種構成となった。◆若年層の車離れとは思えない若年層からの支持率の高さ
続いてステランティスジャパン、ジープ・ブランドマネージャーの新海宏樹氏が登壇。新海氏によると、ジープブランドのアイコンであるラングラーは、キャンプ、トレッキング、オフロードなどで使用する趣味性が高い車のため、年配の玄人っぽい人が長年乗り続けているといったイメージを持たれているとのこと。ところが、実際のオーナーと会えるイベントに参加すると、想像よりも若い世代の方が多く、普段からタウンユースで使われているケースが非常に多い。
「都内の販売店の方と話す機会があり、最新の販売動向などを伺うと、若年層のお客様がこのラングラーをお買い上げいただくケースが非常に多くなっていると報告を受けた」と語る。購入検討者調査においても、輸入SUV車においてはナンバーワンの購入検討候補に選出されており、若年層の車離れと昨今言われていながらも、実際は若年層が、このジープラングラーの持つ世界観、そしてジープブランドが提唱する車とのライフスタイルを支持しているようだ。
これからの戦略として新海氏は、「他社と比べても若い層へのアプローチを強化することが、ジープのさらなる成長に不可欠であると考えている」と述べた。宣伝展開については、FMラジオ局とのコラボレーションで、ラングラーの中から公開生放送を行なったり、主要都市の駅にも新メッセージを軸とした屋外広告を展開していく。関西エリアでもオフロード走行や、街中で体験してもらうイベントも開催する予定だ。最後に最新のコマーシャルも放映された。このコマーシャルには、アメリカのヒップホップ界のレジェンドとも言われている2PACが作曲した『California Love』を使っている。
Stellantisジャパン Jeepプロダクトマネージャー 新海宏樹氏。平均購入年齢が43歳と、他者より若い傾向にある。◆ジープウェーブを国内でも広げたい
最後にお笑い芸人「トータルテンボス」 藤田憲右氏と新海氏のトークセッションも行なわれた。藤田氏は実際にラングラーのオーナーでもあったが、現在は『グランドチェロキー・サミット』のオーナーだ。
そもそもラングラーとの出会いは6年ほど前に、奥様に藤田さんにピッタリな車を街で見かけたといった、ささいな会話がきっかけとのこと。「ジープのゴツゴツしたスタイリングがパパに合いそうだ」と言われ、世田谷のジープのショールームに見にいったところラングラーに出会い、購入に至った。
現在はさらにボディサイズの大きなグランドチェロキー・サミットに乗り換え、息子さんの野球の遠征時には送り迎えの車として大活躍しているとのこと。6名乗りのためお友達も乗せて、かつ野球道具もしっかり乗せられるラゲッジスペースは重宝しているといったコメントも聞かれた。
またラングラーに乗っていたときは、ショッピングセンターなどに駐車の際、ラングラーが駐めてあって横が空いていると、並べて駐めていたとか。これについて藤田氏は「他の車だと、うわ! 一緒だからなんかイヤだなーってなるけど、ラングラーの場合、並ぶと絵になるんですよね」と、ラングラー愛のあふれる話を聞かせてくれた。この話に新海氏は、本国では「ジープウェーブ」といった文化があり、ジープ車がすれ違うとき、ハンドルを握りながらピースをするというエモートがあるとのこと。連帯感、コミュニティーの広がりを感じられるため、国内でも広めてほしいと、藤田氏にもお願いしていた。
新型『ラングラー』で若い世代へアピール、ジープの新戦略鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。